厚生労働省は9月18日、病院の機能再編を国が集中的に支援する「重点支援区域」に、岡山県の高梁・新見構想区域を新たに選んだと発表した。再編などの検討対象になるのは、いずれも新見市にある医療法人真生会新見中央病院、医療法人社団淳和会長谷川紀念病院、医療法人緑隆会太田病院の3病院。選ばれた区域は、医療機関のデータ分析といった技術的な支援と、地域医療介護総合確保基金の優先配分などの財政的な支援を国から受けられる。重点支援区域の選定は令和2年(2020年)に始まり、今回を含めて14道府県27区域になった。

重点支援区域とは 国が何を支援するのか

重点支援区域は、複数の医療機関が絡む再編の事例を、国が助言と資金の両面で後押しする仕組みだ。厚労省の別添資料によると、支援は技術的支援と財政的支援の2本立てになっている。

技術的支援は、地域の医療提供体制や再編を検討する医療機関に関するデータ分析と、関係者との意見調整の場の開催など。財政的支援は、地域医療介護総合確保基金の優先配分と、病床機能の再編支援を「一層手厚く実施」することが挙げられている。岡山県が申請の協議に使った資料はこの中身をもう一歩具体的に書いており、令和7年度時点の制度では、病院の統合に対して支払う「統合支援給付金」について、算定額に1.5を掛けた額を支給するとしている。

地域医療介護総合確保基金は、都道府県ごとに置かれ、医療と介護の提供体制づくりに充てる基金だ。重点支援区域に選ばれることは、この基金の配分で優先される立場になることを意味する。

対象になるのは複数の医療機関の再編統合の事例で、岡山県の資料は「単一医療機関のダウンサイジングは対象外」と明記している。1つの病院が単独で病床を減らすだけでは選ばれない。

申請するのは都道府県だ。区域の「地域医療構想調整会議」で重点支援区域に申請することへの合意を得たうえで国に申請し、厚労省が選ぶ。ただし厚労省は資料に「重点支援区域の申請または選定自体が、医療機能再編等の方向性を決めるものではない」と明記し、選定後も再編の結論はあくまで調整会議の自主的な議論によるものだと注意を促している。国が病院の統廃合を決める仕組みではない、という位置づけである。

対象の3病院は231床、新見市の病床の7割にあたる

岡山県が公表している病床機能報告によると、令和7年(2025年)7月1日時点で3病院が持つ許可病床は次のとおりだ。

病院 許可病床 内訳
新見中央病院 115床 急性期59床・慢性期56床
長谷川紀念病院 60床 急性期33床・回復期27床
太田病院 56床 回復期29床・慢性期27床
3病院の合計 231床 急性期92床・回復期56床・慢性期83床

新見市には病院が4つあり、病床は合わせて319床。今回対象になった3病院は、そのうちの3つで、病床数では72.4%を占める。市内で残るのは医療法人思誠会渡辺病院の88床(急性期55床・慢性期33床)だけだ。

高梁・新見構想区域は高梁市と新見市からなる。高梁市側には大杉病院53床、成羽病院90床、高梁中央病院160床の3病院があり、区域全体では7病院・622床。対象の3病院はその37.1%にあたる。3病院とも「高度急性期」の病床は持っておらず、急性期・回復期・慢性期の病床を3つの病院で分け合っている形だ。

新見市の人口は2026年9月末現在で2万4710人、世帯数は1万2219世帯。前月から人口は39人、世帯は16減った。

6月の会合で「再編統合」の申請を協議

選定に先立つ動きは、岡山県が公表している調整会議の資料で追える。県は令和8年(2026年)6月23日、高梁・新見地域医療構想調整会議のサブワーキング(新見エリア)をウェブ会議で開いた。出席したのは渡辺病院、長谷川紀念病院、新見中央病院、太田病院の4病院の院長らと新見医師会長、調整会議の議長で、市内の4病院すべてが顔をそろえた。新見医師会と新見市健康福祉部の関係者も傍聴している。

議題は、複数の医療機関の医療機能再編事例に関する「重点支援区域」の申請だった。県の資料は趣旨を「新見中央病院、長谷川紀念病院及び太田病院の再編統合に関し、厚生労働省に重点支援区域の申請を行うことについて、地域医療構想調整会議で協議を行うもの」と書いている。3病院の「再編統合」が申請の題目として掲げられていたことになる。

ただ、3病院をどのような形でまとめるのか、病床をどれだけにするのかといった中身は、今回確認した県と国の資料には書かれていない。前述のとおり、選定は再編の方向性を決めるものではなく、具体的な姿はこれから調整会議で協議される。

27区域の顔ぶれ 岡山県内では玉野に続き2区域目

厚労省の別添資料によると、選定は令和2年に12区域でまとまって始まり、その後は年に1〜5区域ずつ加わってきた。

選定年 区域数 主な区域
令和2年 12 宮城県仙南、北海道南空知、兵庫県阪神、岡山県県南東部など
令和3年 5 山形県置賜、岐阜県東濃、新潟県上越・佐渡、広島県尾三
令和4年 1 山口県下関
令和5年 2 青森県青森、熊本県阿蘇
令和6年 3 宮城県仙台、山形県村山、広島県広島
令和7年 4 広島県尾三、岐阜県中濃、兵庫県神戸・阪神
令和8年 2 京都府中丹、岡山県高梁・新見

表の延べ数は29になるが、広島県の尾三区域と兵庫県の阪神区域はそれぞれ2回選ばれているため、区域の数では27になる。同じ区域でも、対象の病院の組み合わせが違えば別の事例として選ばれる。岡山県の資料によると、例えば尾三区域は初回が三原赤十字病院と三菱三原病院、2回目は因島医師会病院と因島総合病院だった。

岡山県内では、令和2年に県南東部区域の玉野市民病院と玉野三井病院の再編が選ばれており、高梁・新見は2区域目になる。令和8年の選定は、京都府の中丹区域に続いて今回が2件目だ。厚労省は重点支援区域の申請を随時募集しており、今後も選定を続ける予定だとしている。その後、10月22日には重点支援区域に北海道・西胆振 室蘭の3病院が対象、市立病院は令和9年度めどに統合が選ばれ、区域の数は28になった。

全国の病院や病床の数がどう動いてきたかは、厚労省の医療施設(動態)調査をまとめた記事で整理している。

2028年度までに「新たな地域医療構想」 人口の少ない地域の課題

重点支援区域の土台にある地域医療構想は、医療法に基づき都道府県が医療計画の一部として定めるものだ。厚労省は、中長期的な人口構造や医療ニーズの変化を見据えて医療機関の機能分化と連携を進め、効率的に医療を提供できる体制を確保するのが目的だと説明し、「病床の削減や統廃合ありきではなく」、各都道府県が地域の実情を踏まえて主体的に進めるものだとしている。

その構想は、団塊の世代がすべて75歳以上になる2025年を目安にしてきたが、いまは2040年を見据えた「新たな地域医療構想」へ切り替わる途中にある。厚労省医政局の「地域医療構想策定ガイドライン」によると、改正医療法で新たな構想は2028年度までに策定することとされた。2026年度から2027年度上半期ごろまでにデータに基づく分析と構想区域の点検・見直しを行い、2028年度までに、急性期の拠点となる医療機関の具体名も含めて、各医療機関が2040年に担う役割や必要病床数を調整会議で協議して決める流れだ。

医療機関の役割は、これまでの「高度急性期・急性期・回復期・慢性期」という病床の区分に加え、「高齢者救急・地域急性期機能」「急性期拠点機能」「在宅医療等連携機能」「専門等機能」という医療機関単位の機能で整理される。

ガイドラインは地域を人口規模で分けて課題を示している。大都市型では高齢者救急への対応、地方都市型では医療の担い手の確保が課題になる一方、人口の少ない地域では高齢者人口と生産年齢人口がともに急激に減るため、効率的で持続可能な提供体制を速やかに確保することが課題になるとした。二次医療圏の半数近くが人口20万人以下になっており、こうした地域で入院医療を区域内で完結させ続けるのは難しいとして、構想区域の広域化の検討も求めている。

高梁・新見での3病院の協議は、この新たな構想づくりと同じ時期に進むことになる。市内の病床の7割を持つ病院群がどのような役割を担うことになるのかが、今後の調整会議の焦点になる。