国土交通省は9月30日、道路運送車両の保安基準などを改正し、運転者の眠気や脇見を検知して警報する装置の装備を義務付けた。保安基準に「眠気警報装置」(第43条の11)と「脇見警報装置」(第43条の12)を新たに加えたもので、カメラなどで運転者の状態を見張り、眠気や前方不注視を検知すると警報音などで知らせる仕組みを指す。いわゆるドライバーモニタリングシステムである。公布と施行は9月30日で、義務付けの部分は10月20日に施行された。

適用されるのは、新型車が令和13年(2031年)9月、継続生産車が令和15年(2033年)9月からである。対象は自動車のうち、二輪自動車、側車付二輪自動車、三輪自動車、カタピラとそりを備えた軽自動車、被牽引自動車を除いたもの。乗用車や貨物車が広く対象に入る。

警報が鳴る条件は国連基準で数字まで決まっている

国交省が公表した別紙によると、警報の条件は装置ごとに分かれている。

眠気の警報(UN-R182)は、時速70キロから130キロの範囲で作動する。この範囲から減速した場合は、時速65キロを下回るまで作動を続ける。運転者の眠気が一定の水準に達したときに警報を出す。

脇見の警報(UN-R183)は、時速20キロ以上で作動する。運転者の視線を監視し、時速50キロ以上で手元を3.5秒間見続けたとき、または時速20キロ超から50キロ未満で手元を6秒間見続けたときに警報を出す。ここでいう「手元」は、運転者から見て前方左右55度以内で、下方30度より下の領域(窓の部分を除く)と定義されている。スマートフォンやカーナビの画面を見下ろす姿勢がこの範囲に入る。

秒数に差があるのは速度の違いによる。時速50キロで3.5秒走れば約49メートル、時速20キロで6秒なら約33メートル進む。速いほど短い時間で警報を出す設計になっている。

国連で3月に成立した基準を、10月の発効に合わせて国内へ

今回の改正は、国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP.29)で令和8年3月にドライバーモニタリングシステムの国際基準が成立したことを受けたものである。国交省は、この基準が同年10月に発効するのに合わせて国内基準に取り入れたと説明している。

保安基準は道路運送車両法に基づき、自動車の構造や装置が満たすべき技術的な要件を定めたものである。日本は国連の基準を国内基準に取り込む方式をとっており、装置の要件が国際基準で決まると、国内の基準改正もそれに沿って進む。このため、警報が鳴る速度や秒数といった細部まで、各国でそろった内容になる。

今回はこのほか、前照灯(ヘッドライト)の照射方向を調節する装置の備え付けに関する明確化なども同時に改正されている。

死亡事故の人的要因で最も大きいのは前方不注意

装置が狙う領域は、死亡事故の原因として最も大きい塊である。警察庁が令和7年(2025年)の死亡事故を人的要因別に集計した資料によると、自動車(乗用車・貨物車・特殊車)の運転者が第1当事者となった死亡事故は、75歳未満の運転者が1578件、75歳以上の高齢運転者が363件だった。

75歳未満の1578件の内訳は、安全不確認が469件(29.7%)で最も多く、次が漫然運転などの「内在的前方不注意」414件(26.2%)、脇見などの「外在的前方不注意」284件(18.0%)と続く。前方不注意の2つを足すと698件で、44.2%にあたる。75歳以上の363件では操作不適が120件(33.1%)で最も多いが、内在的前方不注意93件(25.6%)と外在的前方不注意29件(8.0%)を足した122件が次に大きい。

両方の年齢層を合わせると、死亡事故1941件のうち前方不注意は820件で、42.2%を占める。車の操作ミスや判断の誤りより、運転者が前を見ていないことによる死亡事故のほうが多い。眠気と脇見を検知して警報を出す装置は、この最大の塊に直接当てる対策になる。

ただし、警察庁の分類は「漫然運転等」「脇見等」というくくりで、居眠り運転そのものの件数は今回確認した資料には示されていない。

携帯電話を使っていると死亡事故率は3.4倍

脇見の背景として大きいのが携帯電話の使用である。同じ警察庁の資料では、携帯電話やスマートフォンの使用が要因となった死亡・重傷事故は令和7年に148件(死亡26件、重傷122件)あった。平成27年の85件(死亡23件、重傷62件)から増えている。

令和3年から7年までの5年を合計した比較では、携帯電話等を使っていた場合の死亡事故率は2.7%で、使っていなかった場合の0.8%の約3.4倍だった。死亡事故率とは、第1当事者が一般原付以上の交通事故件数のうち死亡事故が占める割合をいう。

政府は交通事故の死者、2030年までに年1900人以下へ 第12次交通安全基本計画 前の計画の「2000人以下」は2547人で届かずという目標を掲げている。前の計画は目標に届かなかった。高齢運転者側では75歳以上の運転技能検査に「方向変換」追加へ 警察庁が改正案 合格者の事故率は検査対象外の高齢者の2倍以上のように運転者を選別する対策が進むが、今回の義務化は車の側に検知と警報を持たせる対策である。

適用は新型車でも2031年9月からで、道路を走る車全体に行き渡るまでにはさらに時間がかかる。継続生産車の2033年9月を過ぎても、それ以前に売られた車には装備されないため、効果が数字に表れるのは2030年代の後半以降になる見通しだ。