総務省は10月19日、「郵便事業の安定的・持続的な運営を確保するための方策」について意見募集を始めると発表した。募集期間は10月20日から11月20日までで、提出された意見は情報通信審議会郵政政策部会の郵便事業政策委員会が今後の検討に使う。郵便の配達頻度や送達日数といったサービスの水準そのものが検討の対象に入っており、その見直しについて国が広く意見を求める段階に入った。

委員会は8月20日付の諮問第1246号「郵便事業の安定的・持続的な運営を確保するための方策及び郵便局が地域を支援する役割を果たすためのサービス提供の在り方」を受け、8月から開かれている。主査は竹内健蔵・東京女子大学現代教養学部教授。第1回は8月26日、第2回は9月25日、第3回は10月14日に開かれた。諮問書が答申を希望する時期は令和9年夏ごろを目途としている。

聞かれているのは2つ 「ニーズ」と「ネットワークの維持」

意見募集の内容は、報道資料の別紙1に2項目として示されている。

1つ目は「利用者ニーズを踏まえた郵便サービスの在り方」である。別紙1は「社会経済情勢が大きく変化し、郵便物数が大きく減少する現在において、ユニバーサルサービスとしての郵便サービスに対するニーズをどのように考えるか」と問い、あわせて「郵便サービスの水準や種類の在り方」と「郵便サービスの付加価値向上のためにどのような方策が考えられるか」を挙げている。

2つ目は「今後の郵便ネットワークの維持に向けた課題及びその対応」である。別紙1は「郵便事業の安定的・持続的な運営と、確保すべき郵便のユニバーサルサービス水準のバランスをどのように考えるか」と書き、さらに「条件不利地域における持続可能な引受・配達方法等の在り方」を問うている。

ここで言う「ユニバーサルサービス」は、郵便を全国どこでも同じ条件で使えるようにする義務のことで、郵便法と同法施行規則が具体的な水準を定めている。配達については、休日と1月2日を除く月曜日から金曜日までの5日間に1日1回以上配達すること(郵便法第70条第3項、施行規則第32条第3項)。送達日数は、差し出された日から原則4日以内で、離島は6日以内、1日1回以上の送達に使える交通手段がない離島は15日以内(施行規則第32条第5項)。このほか、全国あまねく宛て所まで配達することと、25グラム以下の定形郵便物の料金を省令で定める額(110円)以下にすることが定められている。

つまり今回の意見募集は、この法令で固定されている水準を動かすかどうかの判断材料を集めるものである。

背景は4年連続の赤字と6月の法改正

意見募集に至る前提として、郵便事業の収支がある。日本郵便が9月25日に委員会へ出した資料は、郵便事業の営業損益が2022年度に民営化以降初めて赤字となり、2024年10月に料金改定を行ったものの2025年度まで4年連続で赤字が続いたと説明している。さらに「郵便物の減少傾向や人件費等の上昇傾向は継続しており、2026年度以降は赤字幅が年々拡大していく見込み」と書いた。同社が2026年5月15日に策定した収支改善計画では、2028年度に2268億円超の収支改善を見込むとしつつ、同年度の当期純利益は1691億円の赤字になる見通しだとしている。

2024年10月1日の料金改定では、25グラム以下の第一種定形郵便物が84円から110円へ26円上がった。上げ幅は31.0%である。それでも収支が改善しないという前提のもとで、料金制度の側は6月に動いた。郵政民営化法等の一部を改正する法律(令和8年法律第50号)は6月12日に成立し、6月19日に公布された。郵便法の改正部分は、料金に求められる要件のうち「郵便事業における収支相償」の規定を緩和して郵便事業以外の事業の収支も勘案した料金設定を許容すること、定形郵便物の料金の上限額を総務省令で定める方式から日本郵便の申請に基づく総務大臣の認可制に見直すことが柱で、公布の日から6か月を超えない範囲内で政令が定める日に施行される。

同法の附則第2条2項は、政府に対し、公布後2年を目途として郵便事業の安定的・持続的な運営を確保するための方策を検討するよう求めている。今回の諮問と意見募集はこの検討にあたる。郵便物数と収支の数字は郵便の配達頻度・送達日数・ポスト本数、日本郵便が見直し要望を検討 郵便物は2001年度263億通から2025年度118億通へ55.1%減 営業損益は4年連続の赤字で詳しく扱っている。

諸外国は隔日配達や集合ポストへ デンマークは書状配達を廃止

委員会の第1回で配られた総務省の事務局説明資料は、諸外国が郵便のサービス水準をどう見直しているかを並べている。資料には「各種報道・公表情報をもとに作成」と注記があり、総務省がまとめた整理である。

国 見直しの内容
イギリス 2nd class(非速達・安価なサービス)を2026年末までに週6日配達から平日隔日配達へ移行
フィンランド 2023年10月以降、週5日配達を終了し週3日配達(隔日配達)へ移行
イタリア 2026年5月以降、優先郵便(速達サービス)をユニバーサルサービスの対象から除外し、原則として提供を終了
カナダ 2026年3月、政府がカナダ・ポストの戸別配達縮小と集合型郵便受箱への移行計画を承認
デンマーク 郵便のユニバーサルサービス義務を撤廃。ポストノルド・デンマークが2025年末で書状の配達を廃止
諸外国における郵便のサービス水準の見直し出典: 総務省「郵便事業の安定的・持続的な運営を確保するための方策について」(郵便事業政策委員会第1回 事務局説明資料)

このほか資料は、送達日数の水準について日数や達成率の目標値を引き下げた国としてイギリス、フランス、ドイツ、スイスを挙げ、郵便ポストの削減を進めている国としてイタリアとオランダを挙げている。料金については、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリアなどが直近の数年間で値上げしたとしている。デンマークでは2026年1月から、郵便事業の免許を取得した民間のDao社が書状の配達を担っている。

日本の制度は、週5日配達と原則4日以内の送達という点で、これらの国が先に手を付けた部分をまだ維持している。2021年10月には土曜日配達の休止と送達日数の繰り下げを実施しており、日本郵便の資料によれば、その見直しの効果額は2023年3月時点で約523億円だった。もっとも、2018年12月に総務省の郵便局活性化委員会へ提出した時点の見込みは約625億円で、土曜日配達のあるレターパックなどが増えたため、見込みを下回った。

優先順位を具体的に書くよう求めた 調査では頻度を挙げた人が最も少ない

今回の意見募集で特徴的なのは、意見の書き方まで指定している点である。別紙1は「郵便のユニバーサルサービス水準の在り方に関する意見においては、どのような要素(例:速さ、信頼性、価格、頻度)をユニバーサルサービスとして優先すべきか、具体的に記載してください」と書いている。また、意見を出す際は可能な限り理由・根拠や解決策を具体的に書くよう求めている。水準を一律に守るか緩めるかではなく、守る要素と譲る要素を分けて答えさせる設計になっている。

総務省は第1回の事務局説明資料で、この4要素について調査結果を示している。三菱総合研究所によるウェブアンケート調査(2026年2〜3月)で、「郵便利用で最も重視する要素」を1つ選ばせたものである。

郵便利用で最も重視する要素(%)

一般消費者法人

価格34.738.7信頼性42.237.9速さ19.218.5頻度3.94.9
一般消費者は「配達の信頼性」が42.2%で最も多く、「配達頻度の多さ」は3.9%にとどまった出典: 総務省「郵便事業の安定的・持続的な運営を確保するための方策について」(三菱総合研究所webアンケート調査・2026年2〜3月。一般消費者N=10,528、法人N=2,002)
数値で見る(単位: %)
項目一般消費者法人
価格34.738.7
信頼性42.237.9
速さ19.218.5
頻度3.94.9

一般消費者1万528人の回答では、「配達の信頼性」が42.2%、「価格の手頃さ」が34.7%、「配達の速さ」が19.2%、「配達頻度の多さ」が3.9%だった。法人(会社員モニタ)2002人では「価格の手頃さ」が38.7%、「配達の信頼性」が37.9%、「配達の速さ」が18.5%、「配達頻度の多さ」が4.9%である。一般消費者は都道府県・男女・年代で均等に割り付け、法人は従業員数の規模で均等に割り付けた調査で、割り付けには総務省統計局の令和6年経済センサスの定義を使っている。

確実に届くことと料金の安さを挙げた回答が、一般消費者では合わせて76.9%、法人では76.6%を占める。一方で配達の頻度を最も重視すると答えた人は、どちらも5%に届かない。日本郵便が別に実施したウェブアンケート調査(2025年11月26日〜12月3日)でも、重視する項目として「配達が多頻度であること」を挙げたのは個人で12%、法人で15%と最も低かった。配達頻度と送達日数が見直しの候補として先に挙がっているのは、こうした結果が背景にある。

ただし、これらは「最も重視する要素」を1つ選ばせた結果であり、頻度を落としてよいという回答ではない。週5日から減らした場合に誰がどの程度困るのかは、この調査では分からない。別紙1が条件不利地域の引受・配達方法をわざわざ別項目として立てているのは、全国平均の選択結果では判断できない部分が残るためと読める。

答申は令和9年夏ごろ 意見への個別回答はない

意見の提出方法は3つある。e-Gov(https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public )の意見提出フォーム、総務省情報流通行政局郵政行政部郵便課の郵便事業政策委員会事務局宛ての電子メール、同事務局宛ての郵送である。総務省は、意見の提出を装ったウイルスメールを防ぐため、できるだけe-Govを使うよう呼びかけている。提出期限は11月20日で、郵送の場合も同日必着である。

個人が出す場合は氏名と住所、連絡先を書く。法人・団体の場合は名称、代表者の氏名、主たる事務所の所在地と連絡先を書く。意見が1000字を超える場合は要旨を添える。提出された意見について、総務省は意見提出者名(法人・団体はその名称と代表者の氏名に限り、個人の氏名は含まない)と属性を公表する場合があるとしている。法人・団体が匿名を希望する場合は、その旨を書けばよい。意見に対する個別の回答はしない。

今回の諮問は郵便事業の運営方策と、郵便局が地域を支援する役割を果たすためのサービス提供の在り方の2本立てで、前者を郵便事業政策委員会が検討する。後者は郵便局が自治体事務を受託する動きとつながっており、受託の広がりは郵便局の自治体事務受託が500団体超、手数料9億600万円 別府市公会堂で初の指定管理者で扱った。

答申の希望時期は令和9年夏ごろである。配達頻度と送達日数の水準は、郵便法第70条第3項を受けて同法施行規則が定めている。11月20日までに集まる意見は、この水準をどう扱うかの判断材料として委員会に上がる。