外務省は10月28日、大久保武ガザ再建支援担当大使が同日、ガザ行政国民委員会(NCAG)のアリー・シャアス委員長と、ガザ再建に向けた日・NCAGワーキンググループ(作業部会)の第1回会合をオンラインで開いたと発表した。NCAGは、ガザ地区で暫定的に行政を担うパレスチナ人の専門家集団。会合ではNCAG側が9月に発表した「ガザ復旧プログラム」を説明し、日本の役割に期待を示した。国際協力機構(JICA)の三井祐子理事も同席し、復旧プログラムの具体化に向けた協力の方途を提案した。

初会合に大使とNCAG委員長、JICA理事も同席

外務省の発表によると、作業部会は外務省とNCAGが、米国の「包括的計画」と国連安全保障理事会決議第2803号の履行に向けて、日本とNCAGの連携を協議するために立ち上げた。第1回会合は日本側の代表を大久保大使、NCAG側の代表をシャアス委員長が務めた。

シャアス委員長は、NCAGが米国政府やパレスチナ自治政府と連携しながら「包括的計画」の履行に取り組んでいることを説明した。とくに9月下旬に発表した「ガザ復旧プログラム」の内容を紹介し、これまでの日本の対パレスチナ支援に謝意を示したうえで、復旧プログラムを含むガザ再建で日本が担う役割への期待を表明した。

これに対し大久保大使は、ガザ再建には「包括的計画」の着実な履行が重要だと改めて強調した。日本として、復旧プログラムの具体化を含め、関係国・機関と連携しながら今後も積極的に役割を果たしていくと述べた。三井理事は、JICAがこれまで手がけてきた日本のガザ支援と復旧プログラムとの相乗効果を指摘し、具体化に向けた協力の方途を提案した。双方は、作業部会の枠組みも通じて緊密な連携を続けることで一致した。

外務省の発表には、提案された協力の具体的な事業名や、日本が拠出する金額は記載されていない。

NCAGとは 自治政府の改革までの移行統治役、66事業の復旧計画

外務省は発表の注記で、NCAGを次のように説明している。「包括的計画」と安保理決議第2803号に基づき、パレスチナ自治政府が改革を終えてガザを統治できるようになるまでの間、ガザ住民向けの公共サービスや自治体の日常的な運営、暫定的な移行統治を担う。構成するのはパレスチナ人の専門家(テクノクラート)で、行政機関と位置づけられている。

土台となる「包括的計画」は、トランプ米大統領が2025年9月に発表した「ガザ紛争終結のための包括的計画」を指す。外務省の外相談話によると、この計画に基づく当事者間の第1段階の合意は2025年10月8日(日本時間9日)に成立した。仲介国として米国、カタール、エジプト、トルコなどの名を挙げている。

国連安保理は同年11月17日(日本時間18日)、この計画を支持し、すべての当事者に履行を求める決議第2803号を採択した。採決は賛成13、反対0、棄権2で、棄権したのは中国とロシアだった。日本政府は外相談話で採択を歓迎し、ガザの人道状況の改善や早期の復旧・復興への取り組みに加え、「暫定的な統治メカニズムへの人材派遣」を通じて役割を果たすと表明していた。

会合でNCAG側が説明した「ガザ復旧プログラム」について、外務省は注記で、国連総会のハイレベル・ウィークにあわせて9月23日、「平和理事会」とNCAGが発表したものだと説明している。6分野・計66の優先事業からなる6か月間の計画だという。外務省の発表は6分野の内訳や各事業の中身には触れていない。

「平和理事会」は、「包括的計画」の実施を担う枠組みとして外務省の発表に登場する。8月19日付の外務省発表によると、平和理事会は2026年7月30日、「包括的計画」の第2段階の実施に向けた15項目のロードマップに合意したと発表した。外務省はこれを平和理事会とハマスとの間の合意と記している。

この段階を経て、9月に6か月の期限を区切った事業一覧が示され、日本との作業部会もその具体化を議題に初会合を開いた形になる。

大使の訪問から作業部会まで 1年近くの接触

大久保大使は、外務省の「ガザ情勢」ページによると、2025年12月にヨルダン、パレスチナ、イスラエルを相次いで訪れた。12月2日にはパレスチナでムハンマド・ムスタファ首相を表敬し、ガザの人道支援や早期の復旧・復興、暫定統治にかかわる国際的な取り組みに貢献していくと伝えた。ムスタファ首相は日本の長年の支援に謝意を表し、ガザ再建で日本が果たす役割に期待すると述べた。その後も大使は2026年2月に米国、4月にベルギーとエジプトを訪れている。

外務省の「ガザ情勢」ページで、大使とNCAG委員長の協議として最初に載っているのは8月19日のオンライン協議だ。このときもJICAの三井理事が同席した。双方は「今後、ガザ再建に関するワーキング・グループの立ち上げも視野に入れつつ」連携していくことで一致しており、今回の初会合はこの合意を具体化したものだ。

9月21〜26日には大使がニューヨークを訪れた。パレスチナ支援調整委員会(AHLC)の閣僚級会合に出席して、日本独自の枠組みである「パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合(CEAPAD)」などを紹介したほか、エジプト、フランス、ドイツ、欧州連合(EU)が共催したガザ早期復旧に関する閣僚級会合にも出た。滞在中には平和理事会のニコライ・ムラデノフ・ガザ上級代表やシャアス委員長と意見交換している。

時期 出来事
2025年10月8日 「包括的計画」に基づく第1段階の合意が成立
2025年11月17日 国連安保理が決議第2803号を採択(賛成13、棄権2)
2025年12月2日 大久保大使がパレスチナでムスタファ首相を表敬
2026年7月30日 平和理事会が第2段階に向けた15項目のロードマップ合意を発表
2026年8月19日 大使とシャアス委員長がオンライン協議、作業部会の設置を視野に
2026年9月23日 平和理事会とNCAGが66事業の「ガザ復旧プログラム」を発表
2026年10月28日 日・NCAG作業部会の第1回会合
「包括的計画」と日・NCAG作業部会をめぐる主な経過(日付は現地時間)

出典: 外務省の外相談話・報道発表(2025年10月〜2026年10月)

今後の焦点は協力の中身

今回の会合で、日本とNCAGの間には、外務省とJICAが加わる協議の枠組みが動き出した。外務省の発表は「ワーキンググループの枠組も通じ、引き続き緊密に連携していく」と結んでおり、2回目以降の日程は示していない。

復旧プログラムは6か月間の計画とされるが、外務省の発表は始期や終期を示していない。JICAが提案した協力の方途がどの事業に結び付くのか、日本が外相談話で示した暫定統治の仕組みへの人材派遣がどう進むのかは、今回の発表からは分からない。次回以降の会合や外務省の発表で、事業の名前や規模がどこまで明らかになるかが焦点となる。