消費者庁は10月28日、留学手続の代行と英会話教室の役務を提供する株式会社Jstyle(本店所在地・東京都新宿区新宿)に対し、特定商取引法に基づく3か月間の業務停止命令を出したと公表した。命令は10月27日付。10月28日から2027年1月27日まで、訪問販売と電話勧誘販売に関する業務のうち、勧誘、申込みの受付、契約の締結ができない。
あわせて同庁は、法令遵守体制の整備など再発防止策を講じるよう同社に指示した。代表取締役の安藤和隆氏に対しても、同じ3か月間、停止を命じた範囲の業務を新たに始めること(その業務を営む法人の担当役員になることを含む)を禁じる業務禁止命令を出した。同氏は創業以来の代表取締役で、経営全般を統括し業務の遂行に主導的な役割を果たしていたと認定された。同社は2016年12月設立、資本金1000万円。消費者庁は、似た名称の別会社と取り違えないよう、所在地も確かめるよう呼びかけている。
「無料カウンセリング」から営業所へ
公表資料によると、同社は「無料カウンセリング」や「留学診断」と称する無料の留学相談を受け付けていた。申し込んだ消費者には電話をかけ、有料契約の勧誘が目的であることを告げずに営業所への来訪を求め、営業所で留学手続の代行や英会話教室の契約を結ばせていた。消費者庁はこの取引を訪問販売にあたると認定した。
別の経路もあった。無料相談の申込者にLINEのメッセージでWeb会議のURLを送り、そのWeb会議の中で勧誘し、契約は郵便等で結ぶ形だ。消費者庁はこちらを電話勧誘販売にあたると認定している。
認定された違反は次の5つである。
| 取引類型 | 違反行為 | 根拠条文 | 認定された時期 |
|---|---|---|---|
| 訪問販売 | 勧誘目的を告げずに呼び出した客を、公衆の出入りしない場所で勧誘 | 第6条第4項 | 2024年1月〜2025年12月 |
| 訪問販売 | クーリング・オフについて事実と異なることを告げる | 第6条第1項第5号 | 2024年1月〜2025年12月 |
| 訪問販売 | 勧誘の前に事業者名を明らかにしない | 第3条 | 2025年11月下旬 |
| 電話勧誘販売 | 契約書面を遅滞なく交付しない | 第19条第1項第1号 | 2025年1月下旬 |
| 電話勧誘販売 | クーリング・オフについて事実と異なることを告げる | 第21条第1項第5号 | 2025年2月上旬 |
出典: 消費者庁「特定商取引法違反の事業者に対する業務停止命令(3か月)及び指示並びに当該事業者代表取締役に対する業務禁止命令(3か月)について」
「クーリングオフ制度の適応が無くて」
公表資料は3つの事例を挙げている。
1つ目は2024年1月。広告を見て無料相談を申し込んだ消費者Aに同社が電話をかけ、目的を告げずに営業所へ呼び、その場で契約を結ばせた。2日後に消費者Aがクーリング・オフを申し出ると、従業員は「私たちのサービスにはクーリングオフ制度の適応が無くて、お申込みいただいた後、キャンセルをされた場合10万円のキャンセル料がかかってきます」「法律に則り、クーリングオフ対象外の契約を結んでおりますため、他の皆様と同様キャンセル料は発生してしまいます」と告げた。
2つ目は2025年11月下旬から12月中旬。ウェブサイト経由で無料相談を申し込んだ消費者Bに、従業員は「夢カナ留学のY」と名乗るだけで、商号の「株式会社Jstyle」を名乗らなかった。営業所で契約した消費者Bが2日後にクーリング・オフを申し出ると、別の従業員は「英語のサポートに関してはクーリングオフ制度が適用となりますが、サポート料金に関してはキャンセル料がかかってまいります」と、契約の一部は解除できないかのように告げた。実際には契約の全部がクーリング・オフの対象だった。
3つ目は2025年1月下旬。「オンライン無料相談」と称してLINEでWeb会議に誘った消費者Cと、電子メールと電子署名で契約を結んだ。ところが契約書面は遅滞なく発送されず、消費者Cが受け取ったのは契約から9日後だった。受け取った翌日にクーリング・オフを申し出ると、従業員は「クーリングオフ期間をすぎてしまったため、どうしてもキャンセル料金が発生してしまいます」と告げた。
営業所での契約も、書面が遅れれば期間も延びる
営業所で結んだ契約がなぜ訪問販売になるのか。特定商取引法第2条第1項第2号は、営業所以外の場所で呼び止めて同行させた客や、政令で定める方法で誘い込んだ客を「特定顧客」とし、営業所で特定顧客と結ぶ契約も訪問販売に含めている。政令(施行令第1条)は、電話や郵便、電子メールなどで、契約の勧誘のためであることを告げずに営業所などへの来訪を求める方法を挙げる。Jstyleの「無料相談」からの呼び出しはこれにあたると認定された。
訪問販売と電話勧誘販売の契約は、法定の書面を受け取った日から数えて8日以内なら、書面か電磁的記録で申し出れば、申込みの撤回や契約の解除ができる(第9条第1項・第24条第1項)。これがクーリング・オフである。8日間の起算点は契約日ではなく書面を受け取った日なので、契約から9日後に書面を受け取った消費者Cは、受け取った翌日の時点で期間内だった。
さらに法は、事業者が事実と異なることを告げて消費者が誤認し、期間内に解除しなかった場合、8日間が過ぎた後でも解除できると定めている。この場合の期間は、事業者が改めて「解除できる」旨を書いた書面を交付し、消費者がそれを受け取った日から8日間となる。消費者庁が今回の指示で、同社に契約者への通知を義務づけたのはこの点と関係する。
2024年以降の契約者に11月27日までに通知
指示により同社は、2024年1月1日から2026年10月27日までに契約を結んだ全ての相手方に対し、業務停止命令と指示の内容、クーリング・オフができるのにできないと告げていた事実を、消費者庁の公表資料を添えて11月27日までに書面か電磁的方法で通知しなければならない。通知の内容は11月10日までに消費者庁長官へ報告して承認を得る。結果も11月27日までに報告する。業務を再開するまでに、再発防止策を役員と従業員に周知することも求められた。
業務停止命令や業務禁止命令に違反した場合、特定商取引法第70条により3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金、またはその両方が科される。
クーリング・オフを申し出た消費者に「対象外」と告げる行為が処分の理由になった例として、本紙は9月に「550円〜」の広告で呼んだ水回り修理、想定を10万円超上回る請求 訪問販売業者に9か月の業務停止 クーリング・オフを「該当しない」と拒むを報じた。SNSのメッセージを使う勧誘の扱いについてはSNSのメッセージ勧誘に8日間のクーリング・オフ 消費者庁検討会が中間取りまとめ 解約させない手口も規制対象にも参照。
本件に関する問い合わせは、消費者庁から権限の委任を受けて特定商取引法を担当している各地の経済産業局の消費者相談室が受け付ける。関東経済産業局消費者相談室は048-600-0340。ただし経済産業局は個別のトラブルのあっせんや仲介は行わない。事業者との個別トラブルの相談やあっせんを求める場合は、消費者ホットライン「188」(局番なし)で最寄りの消費生活相談窓口を案内している。
