立憲民主党の徳永エリ政務調査会長、石橋通宏社会保障・雇用制度改革調査会長、熊谷裕人税制調査会長は10月29日、党の政調審議会の後に国会内で記者会見を開き、政府の食料品消費税減税と「就業者負担軽減支援金」に対する具体的な対案「生活どまんなか給付金」を発表した。10月7日に党が決めた3段階の対案のうち、第1段階と第2段階に給付額と財源を書き込んだ。第1段階は今年度内に住民税非課税世帯へ1世帯5万円、第2段階は2027年度から2年間、年収300万円までの人に1人5万円を配り、年収600万円で支給がなくなる。所要額は3年度で約9.2兆円と見込む。

第1段階 非課税世帯に1世帯5万円、子ども1人2万円を加算

党の資料によると、第1段階は「年度内可及的速やかに」実施する。11月中に予備費の支出を閣議決定し、「重点支援地方交付金」を通じて自治体に財源を渡すことで、多くの自治体で年度内に給付を始められるとした。

対象は住民税非課税世帯で、均等割だけが課税される世帯も含む。給付額は1世帯あたり5万円で、子どもがいる場合は1人あたり2万円を加える。所要額は約0.9兆円で、財源は予備費の残りで賄うとした。資料は残額を中東情勢等対応予備費1.9兆円、一般予備費0.7兆円と記している。

対象を非課税世帯に絞った理由について、資料は令和7・8年度の税制改正による所得税減税(基礎控除などの引き上げ)を挙げる。中間層はこの減税で3万〜6万円程度の負担が軽くなる一方、住民税非課税世帯はその恩恵を受けられない。石橋氏は会見で「ここが穴が空いたままになっている」と述べ、非課税世帯への給付を加えれば低所得者から中間層までを支援できると説明した。資料は参考として、2024年度補正予算の低所得世帯向け給付金が1世帯3万円(子ども1人2万円加算)、総額0.5兆円だったことも載せている。

第2段階 年収300万円まで1人5万円、600万円で支給なし

第2段階は、党が最終目標とする「給付付き税額控除」の理念に沿った「簡易版・暫定版」の給付制度で、2027年度と2028年度の2年間実施する。政府が2027年4月から整備する「所得に連動したきめ細かな給付」の仕組みを使う。

給付は個人単位で、年収300万円までは定額5万円とし、そこから年収が上がるにつれて額を減らし、年収600万円で支給がなくなる。収入の無い人や、さまざまな事情で働けない人も満額の対象になる。受給者の扶養親族と配偶者にも本人と同額を支給する。党は総人口の約8割が対象になるとしている。党の会見記事は、子ども2人を育てる年収200万円のひとり親なら合計15万円を受け取れるとの例を示した。

支給は2回に分ける。2027年6月以降の早い時期に、前々年度の住民税の課税情報をもとに半額を配り、前年度の住民税が確定する9月以降に残る半額を配る。2回目は、対象から外れた人には支給せず、新たに対象になった人には1年分を支給する。石橋氏は、早ければ6月に支給できると述べた。

段階 時期 対象 給付額 所要額
第1段階 2026年度内 住民税非課税世帯(均等割のみ課税を含む) 1世帯5万円、子ども1人2万円加算 約0.9兆円
第2段階 2027〜2028年度 個人(扶養親族・配偶者を含む)。年収600万円まで 年収300万円まで5万円、以降は逓減 年約4.1兆円(2年で約8.2兆円)
第3段階 2029年4月〜 世帯単位で制度設計中 今後検討 今後検討
「生活どまんなか給付金」の3段階の概要出典: 立憲民主党「政府の『消費税・支援金』に対する対案『生活どまんなか給付金』について」、同党の会見記事

所要額は3年度で9.2兆円 第3段階は恒久財源を検討

会見で記者から財源の総額を問われた石橋氏は、第1段階が約0.93兆円、第2段階が1年あたり4.1兆円で2年間8.2兆円になり、3年度の合計が9.2兆円だと答えた。党の1枚の概要資料は、政府案は2年間で約10兆〜11兆円かかるとして、「財源は政府案より少ない」と記している。

第2段階の財源には、「積み過ぎ基金」の国庫返納、外国為替資金特別会計の剰余金のさらなる活用、租税特別措置の見直しを挙げた。

第3段階は2029年4月からの本格的な給付付き税額控除で、世帯単位での所得の把握や、金融所得・資産を勘案する仕組みを検討する。所得の基準が個人から世帯に変わるため、給付単価と年収の上限も見直すとした。恒久制度のため恒久財源が必要だとして、石橋氏は社会保障・雇用・税制の一体改革案を党内で議論し、できるだけ早く示したいと述べた。その際には、所得控除から税額控除への転換や、「『1億円の壁』を是正する金融所得課税改革」を進め、再分配の強化と財源の確保を両立させるとしている。

石橋氏は、自治体がこれまでの給付で使ってきた仕組みをそのまま使えるとして、制度を簡素にし自治体の負担を減らすことも狙いだと説明した。

政府案との違い 時期と対象者

政府が9月15日に閣議決定した大綱では、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品の消費税率を現行の軽減税率8%から1%(国0.78%、地方を合わせて1%)に下げる。あわせて、中低所得の現役勤労者を対象に、勤労所得に応じて支給する就業者負担軽減支援金を2027年4月から導入する。法案は10月9日に衆院で受理され、20日に財務金融委員会に付託された。

立憲は、この政府案を「遅い・狭い・薄い」と批判し、自らの案を「早い・必要な人に届く・厚い」と位置づけた。時期について石橋氏は、政府案の支援金の先行給付は来年秋になるとして、「高市さんなんか『給付は遅い』とおっしゃるけど、違うよね、政府案遅いじゃないかと」と述べた。立憲案は第1段階で年度内、第2段階で来年6月に給付を届けられるとする。

対象者について、党の資料は、政府の支援金が低所得者・無所得者を対象から外し、上限も年収300万円程度で、総人口の2割弱にとどまると指摘した。食料品の減税が2年で終わった後は、支援金の対象外となる多くの中低所得者で7%の負担増になるとも記している。効果の面でも、政府案の減税は単純計算で1人平均3.6万円、支援金は平均3万円とされているとし、価格が減税分だけ下がらない可能性も挙げた。

ここで示された政府案の対象者の割合や平均額は、立憲の資料が記した数字である。政府の法案の中身は食料品消費税1%と支援金の法案、国会に提出 支援金の額と所得の線引きは政令に委ねるで伝えている。

他の野党へ説明し共同案めざす 法案への賛否は示さず

同じ29日、立憲は税制調査会、社会保障・雇用制度改革調査会と財政金融、厚生労働、総務、内閣の各部会の合同会議を開き、対案を議員間で協議・審査していた。熊谷氏は衆院での法案審議が進むなか、参院での審議を見据えて党の案を議論すると述べた。会議では、参院での特別委員会の設置をめぐる報道にも触れ、今後の動きに備えて党内で準備を続ける考えが示された(参院の野党の動きは参院野党6党、食料品減税法案は「特別委で」 設置まで審議入りに応じず)。党はこの日の政調審議会で対案を決めた。

石橋氏は会見で「これから他の野党の皆さんにも説明に回りたい」と述べ、「政府案では駄目だと、給付措置が必要だと、これは野党概ね方向性はまとまっております」として、野党でまとまって給付を実現したいとした。熊谷氏も年収300万円まで定額給付にしたことで、30代前半くらいまでの若い層に手厚く給付できると述べ、この案で野党の結束を図りたいとした。

対案をいつ国会に出すのかを問われた徳永氏は、まず速やかに他党と協議を始め、協議の中で党の案に修正が入る可能性もあるとしたうえで、扱いや提出先はこれから決めると答えた。他党との協議について徳永氏は、公明党の中野政調会長から8万円給付の案の資料を受け取ったが、10兆円という額の財源をどこから捻出するのかといった詳細は示されておらず、協議には至っていないと説明した。

政府の法案への賛否について、徳永氏は「きちんと機関決定をしていかなければなりませんので、まだここでは申し上げません」と述べるにとどめた。党が10月7日に決めた「考え方」は、政府の支援金が低所得者・無所得者を対象から外していると批判していた(立憲民主党、食料品減税から「給付中心」へ転換の対案)。