防衛省と内閣官房は10月29日、北朝鮮が同日午後0時36分ごろ、弾道ミサイルの可能性があるものを発射したと発表した。朝鮮半島東岸付近に落下したと推定され、日本の領域や排他的経済水域(EEZ)への飛来は確認されていない。付近を航行する航空機や船舶の被害の報告などの情報も、発表の時点で確認されていない。高市早苗首相は発射の2分後にあたる午後0時38分付で、情報収集・分析や安全確認など3項目を指示した。北朝鮮の発射は10月3日、12日に続いて今月3回目となる。
朝鮮半島東岸付近に落下と推定、詳細は日米韓で分析
防衛省と内閣官房の29日付の発表によると、発射されたのは「弾道ミサイルの可能性があるもの」で、政府は日米韓で緊密に連携し、その詳細を分析している。落下地点は朝鮮半島東岸付近と推定した。
発表には、発射した地点や方向、ミサイルの数、最高高度、飛んだ距離の記載はない。10月3日と12日の発表では、いずれも発射の当日に最高高度と飛翔距離を示していた。発表は、今後追加して公表すべき情報を入手した場合には速やかに発表するとしている。30日昼の時点で、防衛省の報道発表に29日の発射の続報は掲載されていない。
発表は、これまでの度重なる発射も含め、一連の北朝鮮の行動は日本と地域、国際社会の平和と安全を脅かすものだとした。そのうえで、米国や韓国などと連携し、情報の収集・分析と警戒監視に全力を挙げるとしている。10月3日と12日の発表には、発射が関連する国連安全保障理事会の決議に違反し、北朝鮮に厳重に抗議して強く非難したとの記述があったが、29日の発表にはこの記述はない。
首相は発射2分後に3項目を指示、官邸で緊急参集チーム
首相官邸によると、高市首相は午後0時38分付で総理指示を出した。指示は、▽情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対して迅速・的確な情報提供を行う▽航空機、船舶などの安全確認を徹底する▽不測の事態に備え、万全の態勢をとる――の3項目で、10月3日、12日の発射の際と同じ内容だった。
政府は官邸危機管理センターに置く「北朝鮮情勢に関する官邸対策室」で関係省庁からの情報を集約し、緊急参集チームを招集して対応を協議した。防衛相は首相の指示を受けて、▽米国、韓国などと緊密に連携しつつ情報収集・分析に全力を挙げる▽不測の事態の発生に備え、引き続き警戒監視に万全を期す――の2点を防衛省に指示した。
29日午後の内閣官房長官の記者会見について、官邸のホームページは「冒頭発言なし」と掲載している。
10月は3回目、首相指示は2月以降の一覧で11件目
北朝鮮は10月3日午前6時36分ごろ、北朝鮮東岸付近から少なくとも1発の弾道ミサイルを北東方向へ発射した。防衛省と内閣官房の発表では、最高高度は約90キロ程度、飛んだ距離は約680キロ程度で、日本海の日本のEEZの外に落下したと推定された(北朝鮮が3日朝に弾道ミサイル1発発射 約680キロ飛翔し日本のEEZ外に落下 9月20日の約440キロ・約590キロを上回る)。
12日は午前9時台に北朝鮮内陸部から少なくとも2発を発射した。1発目は午前9時19分ごろの発射で最高高度約20キロ程度、約220キロ程度を飛び、2発目は午前9時36分ごろの発射で最高高度約70キロ程度、約910キロを超えて飛んだ。政府は2発目について、変則軌道で飛んだ可能性を含めて分析するとしていた(北朝鮮が12日朝に弾道ミサイル2発 1発は約910キロ超飛翔、変則軌道の可能性)。
| 発射日 | 発射時刻 | 最高高度 | 飛んだ距離 | 落下地点(推定) |
|---|---|---|---|---|
| 10月3日 | 午前6時36分ごろ | 約90キロ程度 | 約680キロ程度 | 日本海の日本のEEZ外 |
| 10月12日(1発目) | 午前9時19分ごろ | 約20キロ程度 | 約220キロ程度 | 北朝鮮東岸付近や日本海 |
| 10月12日(2発目) | 午前9時36分ごろ | 約70キロ程度 | 約910キロ超 | 北朝鮮東岸付近や日本海 |
| 10月29日 | 午後0時36分ごろ | 記載なし | 記載なし | 朝鮮半島東岸付近 |
官邸ホームページの「総理の指示・談話など」の一覧には、2月18日以降の掲載分が並んでいる。このうち北朝鮮の弾道ミサイルの可能性があるものの発射に関する総理指示は、3月14日、4月8日、4月19日、8月6日、8月12日、8月20日、9月20日(2件)、10月3日、10月12日、そして今回の10月29日で、計11件となった。8月以降が8件を占める。
10月の過去2回はいずれも朝の発射で、総理指示の時刻は10月3日が午前6時40分、12日が午前9時24分だった。今回は木曜日の昼の発射で、指示は発射の2分後に出ている。
防衛省「より実戦的なミサイル戦力を拡充」
防衛省は資料「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」(令和8年8月)で、北朝鮮が近年、低空を変則軌道で飛ぶことができる短距離弾道ミサイル(SRBM)などを繰り返し発射し、一連の発射を通じて関連技術と運用能力の向上を急いでいるとの見方を示している。発射台付き車両(TEL)や潜水艦、鉄道といったさまざまな場所からの発射によって、兆候の把握や探知、迎撃を難しくするなど、「より実戦的なミサイル戦力を拡充」しているとも記した。
資料はまた、北朝鮮が2026年2月の朝鮮労働党第9回大会で今後5年間の新たな方針を示したことに触れ、今後はこの方針に基づいて各種兵器の研究開発や運用能力の向上に力を入れていくとの見方を示した。
29日の発射がどのような種類のミサイルだったのか、どこまで飛んだのかは、政府の分析の結果を待つことになる。政府は追加で公表すべき情報を入手すれば速やかに発表するとしている。
