厚生労働省は10月26日、社会保障審議会介護保険部会(第137回)を開き、要介護認定の見直し案を示した。更新申請のうち一定の条件を満たすものについて、介護認定審査会の審査を簡素な方式で済ませられる範囲を広げ、前回認定の有効期間が「12か月以上」としている条件を「6か月以上」に緩める。簡素化できるのに実施していない自治体が多いことから、実施割合を毎年自治体別に公表する案もあわせて示した。

会議は午前10時から12時30分まで、厚労省の会議室で開かれた。議題は「持続可能性の確保(給付と負担)」と「要介護認定」の2つで、介護支援専門員(ケアマネジャー)の法定研修の見直しについての報告もあった。要介護認定の資料は、①審査会の簡素化対象の拡大②がん等の疾病への対応③在宅で生活する人の評価④認知症の人の評価——の4項目で構成されている。

審査会の「簡素化」とは 6つの条件をすべて満たす更新申請が対象

要介護認定は、市町村の認定調査と主治医意見書をもとにコンピュータが要介護度を判定する一次判定と、保健・医療・福祉の専門家でつくる介護認定審査会が個別事情を加味して判定する二次判定の二段階で決まる。仕組みの全体は要介護・要支援の認定は721万人、65歳以上の19.7% 介護保険の仕組みを数字で押さえる 総費用14.3兆円は保険料と公費が半分ずつ、自己負担は原則1割で解説している。

介護保険法は、認定の申請に対する処分を申請のあった日から30日以内に行うよう定めている。調査に日時を要するなど特別な理由がある場合は、期間の延長を通知できる。この期間を縮めるための手段の一つが、審査会の簡素化である。

資料2によると、簡素化は2018年度(平成30年度)に始まった。審査会が個々の案件を一件ずつ審議するのではなく、コンピュータによる一次判定の要介護度をそのまま審査判定結果とし、委員の包括的な同意で個別の審査に代える方式である。二次判定で一次判定から要介護度が変わらない人を分析したうえで、次の6条件をすべて満たす申請に限って認めた。

条件 内容 今回の案
① 65歳以上(第1号被保険者)である 維持
② 更新申請である 維持
③ 一次判定の要介護度が前回認定と一致している 維持
④ 前回認定の有効期間が12か月以上である 6か月以上に緩和
⑤ 一次判定が要介護1・要支援2の場合、状態が「安定」と判定されている 維持
⑥ 一段階重い要介護度に達するまで「3分以内」ではない 維持
介護認定審査会を簡素化できる6条件と今回の見直し案出典: 厚生労働省「第137回社会保障審議会介護保険部会 資料2」

条件⑥は、一次判定で算出する「要介護認定等基準時間」が、一段階重い区分の境目まで3分以内に迫っていないことを求めるものである。

対象の45%は未実施 自治体の半数超が簡素化をしていない

資料2によると、2024年度の65歳以上の更新申請は231万9293件あった。このうち簡素化の条件を満たしたのは32.7%に当たる75万9230件だったが、実際に簡素化されたのは17.9%の41万5243件にとどまった。残る34万3987件(14.8%)は、条件を満たしながら通常どおり審査会にかけられた。条件を満たした申請の半数近くが、簡素化されていなかったことになる。

保険者(市町村など)ごとの差は大きい。1571保険者のうち、簡素化できる申請の90%超で実施したのは474保険者(30.2%)で、うち257保険者は全件で実施していた。一方、実施割合が10%未満の保険者は853(54.3%)あり、このうち834保険者(53.1%)は一件も実施していなかった。簡素化を実施している保険者からは、事務負担の軽減などに一定の成果があるとの意見が寄せられたという。

このため厚労省は、簡素化が可能であることを自治体に改めて周知し、条件に合う申請のうち簡素化した割合を毎年自治体別に公表する案を示した。

条件の緩和では、6条件のうち④だけを動かす。資料は、①と⑤を緩めると特定疾病に当たるかの確認や状態の維持・改善の可能性の審査が必要な人が含まれ、③と⑥を緩めると審査会で要介護度が変わる人が相当程度出ると説明した。2024年度の認定データでは、一次判定が前回認定と一致するか一段階異なる人のうち、二次判定で要介護度を重く変更された人が6.4%いた。

④を「6か月以上」にした場合、新たに6万565件が簡素化の対象となる。2024年度のデータで、これらの申請のうち二次判定で要介護度が変わったのは1.1%(重く変更527件・0.9%、軽く変更127件・0.2%)だった。現行の条件を満たす申請では、重く変更が5280件(0.7%)、軽く変更が1034件(0.1%)である。厚労省は、緩めても二次判定での変更率は低いと判断した。

この見直しは、政府が2024年6月21日に閣議決定した規制改革実施計画に盛り込まれた項目で、簡素化対象の拡大は2026年度までに結論を得るとされている。

がん患者の認定、審査期間を自治体別に公表へ

がんなどの病気で心身の状態が急に悪くなる人は、認定を待つ間にサービスの利用が遅れるおそれがある。厚労省はこれまで事務連絡で迅速な対応を自治体に求めてきた。認定申請から二次判定までの認定審査期間は2024年度から都道府県別・保険者別の一覧を厚労省のホームページで公表しているが、がん患者などの認定に自治体がどう取り組んでいるかは公表していなかった。

2025年度の老人保健健康増進等事業の調査では、迅速化の取り組みの実施状況は保険者によって差があり、実施していても標準的な対応方法を定めていない保険者がみられた。認定調査のオンライン実施は12.5%の保険者にとどまり、審査会のオンライン開催や簡素化は3〜4割の保険者が実施していた。主治医意見書を簡易に作成する取り組みの実施率は15%未満だった。一方、「申請と同日ないし数日以内の認定調査」「直近の審査会への付議」「主治医意見書の簡易な作成」を実施した場合は、いずれもおおむね1〜2週間、審査期間が縮んだ。

厚労省は、特定疾病が「がん」の40〜64歳(第2号被保険者)の認定審査期間を、都道府県別・保険者別の一覧で公表する案を示した。個人が特定されないよう、対象者が少ない保険者には一定の配慮をする。期間を縮める取り組みの実施状況も保険者ごとの一覧にまとめ、自治体に改めて取り組みを促す。

一次判定は施設のデータで作られた 在宅と認知症の評価も論点に

資料2は、一次判定の仕組みの成り立ちにも触れた。2000年度の制度開始に向け、特別養護老人ホームや老人保健施設などで提供されている介護サービスの調査をもとに作られた。現行のプログラムは、2006年度に介護保険施設の入所者約3500人を対象にケアの内容と時間を調べた結果に基づく。在宅の高齢者についても2001年度に約1100人、2006年度に530人を調べたが、介護をする人や環境で同じ状態でも介護時間に大きな差があったことやデータの精度の課題から、一次判定には反映されなかった。

規制改革実施計画は、現行の一次判定が2009年以降データを見直しておらず、在宅や通所サービスの利用者の生活環境や生活実態が反映されていないと指摘し、幅広い利用者のデータを加えることを含めて検討するよう求めた。

厚労省は2026年2〜3月、在宅で介護を受ける人を対象に、48時間にわたって介護の内容を記録する調査を実施した。調査員が付き添う方式で32人、本人や家族が記録する方式で549人のデータを集めた。いずれの要介護度でも介護時間の最小値と最大値の差が大きかった。終日自宅で過ごした日より通所サービスを利用した日の方が介護時間が長く、家族と同居する人の方が一人暮らしの人より長い傾向もみられた。資料は論点として、在宅の利用者を含めた一次判定データを使うことを「どのように考えるか」と部会に問うた。

認知症については、制度開始時から状態像を評価項目に入れ、加算の仕組みや調査項目の追加を重ねてきたと説明した。現行制度で評価が難しい状態や介護の手間を調べたところ、挙がった項目はすでに一次・二次判定で評価されているものか、介護の手間で判定する要介護度には加味できないものだったという。そのうえで、認知症の利用者に関する認定調査項目をどう考えるかを論点とした。

給付と負担も議題に 介護費用は14.6兆円

もう一つの議題である「給付と負担」では、介護サービスの自己負担が2割になる「一定以上所得」の判断基準の見直しを引き続き議論した。前回9月の第136回の議論は介護の2割負担、対象拡大の議論が始まる 年金収入280万円の基準引き下げを2026年度中に結論で伝えている。

資料1によると、介護費用の総額は2026年度予算ベースで14.6兆円となり、制度創設時の約4.0倍に増えた。65歳以上が納める保険料の全国平均は、第1期の2911円から第9期は6225円に、40〜64歳の一人当たり平均月額は2000年度の2075円から2026年度は6360円(見込み)に上がった。一方、費用全体に占める利用者負担の割合は2024年度で約7.5%と、おおむね横ばいである。

資料は、高齢者世帯の平均貯蓄額が2025年はおおむね横ばいか増加傾向で、2割負担を導入した2015年と比べて水準が下がっていないとした。2割負担の線引きに預貯金を使う場合に備え、保険者と国が2026年5月に「預貯金等の把握等に係る検討の場」を設け、4回議論したことも報告した。金融機関への書面照会に手間がかかるといった自治体の声を挙げ、将来的には預貯金へのマイナンバーの付番を進める必要があるとした。論点としては、高齢者の生活への影響や医療保険の見直しの状況などを踏まえ、判断基準の見直しを「どのように考えるか」と示した。

要介護認定の4項目のうち、簡素化の拡大とがん患者の認定期間の公表は具体案まで示された。在宅と認知症の評価は論点の提示にとどまり、部会で今後議論を続ける。