政府は10月9日、飲食料品の消費税率を2027年4月から2年間1%に引き下げ、中低所得の働く人に「就業者負担軽減支援金」を支給する制度の準備を各省庁で足並みをそろえて進めるため、「飲食料品に係る消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する関係府省庁連絡会議」を設けた。設置を決めた関係府省庁申合せと、第1回会合の議事次第・配付資料が内閣官房のサイトに掲載された。初会合は同日午後4時半から5時までの30分間、中央合同庁舎8号館6階の623会議室で開かれた。
この日は、同じ制度の法律案が閣議決定され、国会に提出された日でもある。衆議院の議案審議経過情報によると、法律案は10月9日に衆議院が受理し、同日、参議院も予備審査の議案として受理した。つまり政府は、法案を国会に送り出すのと同じ日に、成立を待たずに実務の準備を動かす場をつくったことになる。法律の中身は食料品消費税1%と支援金の法案、国会に提出 支援金の額と所得の線引きは政令に委ねるで伝えた通り、支給額や所得の線引きを政令に委ねており、決めるべきことは法案提出後も多く残っている。
議長は内閣官房副長官補 13府省庁24ポストで課題を4分野に整理
申合せによると、連絡会議は「各府省庁が連携して、消費税率の引下げに向けた所要の準備作業及び地方自治体とも連携した支援金制度の導入に向けた準備、国民、事業者、システムメーカー等に向けた広報活動を行い、その進捗状況を確認する」ために開く。あわせて、引下げの効果が的確に表れるよう「所要の環境整備、価格動向の把握等」も行うとしている。値下げが店頭の価格にきちんと反映されるかを見張る役回りも、この会議に与えられている。
議長は内閣官房副長官補(内政担当)。副議長は内閣官房の内閣審議官2人と、内閣官房人口戦略本部・全世代型社会保障構築本部事務局審議官(内閣府大臣官房の所得に連動したきめ細かな給付制度準備室長を兼ねる)、そして財務省主税局長の4人が務める。
構成員は19のポストで、議長・副議長と合わせて24のポストが並ぶ。顔ぶれを府省庁別に見ると、内閣官房、内閣府、公正取引委員会、金融庁、消費者庁、デジタル庁、総務省、財務省、国税庁、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、中小企業庁の13にまたがる。総務省は自治行政局長・自治財政局長・自治税務局長・統計局長の4人、農林水産省は大臣官房総括審議官(新事業・食品産業)・大臣官房統計部長・経営局長の3人が入っており、この2省の出席が多い。
税制の担当官庁だけで固めていないのが特徴で、公正取引委員会からは官房審議官(取引適正化)と経済取引局長の2人が入る。税率が下がるときに仕入先への買いたたきや便乗値上げが起きないか見るためで、消費者庁次長、総務省統計局長(物価統計の担当)が加わっているのも同じ文脈にある。会議の庶務は財務省の協力を得て内閣官房が処理する。申合せの附則には、この規程が2029年(令和11年)12月31日限りで効力を失うと書かれている。支援金が本格導入される2029年度いっぱいで、つなぎの体制は畳む想定だ。
初会合に配られた資料4は、この会議が追いかける課題を4分野に整理している。1つ目は消費税率引下げに係る準備作業で、レジシステム等の改修の進捗(経済産業省)と、総額表示義務への対応状況(財務省、国税庁、経済産業省)の2項目。2つ目は自治体と連携した支援金制度導入に向けた執行準備で、公金受取口座の機能強化や支援金算定ツール、地方税システムの改修といった国・自治体のシステム整備の見通しと進捗(デジタル庁、総務省、国税庁)、2029年4月の支給を含む執行方法の詳細の検討と自治体との調整、コールセンターやマイナポータルによる情報提供といった国の支援策、そして「適切な所得捕捉に係る対応」が挙がっている。
3つ目は広報活動で、事業者やシステムメーカー向け(税率引下げの所要の措置=国税庁、農林漁業者・食品事業者・外食事業者の支援=農林水産省、レジシステムの改修支援=経済産業省・中小企業庁)と、国民向け(財務省、国税庁ほか)に分かれる。4つ目が税率引下げの効果の発現と適正な価格転嫁で、引下げ効果の発現に向けた環境整備、価格動向の把握、適正な価格転嫁と便乗値上げ・買いたたき等への対応の3項目が並び、公正取引委員会と中小企業庁が名を連ねる。
初会合では、この会議の下に2つの幹事会を置くことも決まった。税率引下げ側の幹事会は財務省主税局税制第二課長が議長を務め、構成員15人には国税庁課税部の軽減税率・インボイス制度対応室長、総務省統計局の物価統計室長、経済産業省の流通政策課長、中小企業庁総務課長らが入る。制度の運用と店頭の実務を直接扱う課長級の集まりだ。
支援金側の幹事会はデジタル庁が6ポスト 口座と給付システムが焦点
もう1つの支援金側の幹事会は、内閣官房人口戦略本部・全世代型社会保障構築本部事務局参事官(内閣府大臣官房の所得に連動したきめ細かな給付制度準備室参事官を兼ねる)が議長を務める。構成員14人のうち6人がデジタル庁の参事官・企画官で、担当は総務総括、給付システム総括(参事官と企画官の2人)、預貯金二法、公共サービスメッシュ、マイナポータルに分かれる。1つの幹事会に1省庁から6ポストが入るのは異例の厚さで、支援金の実施がどれだけシステムの話に寄っているかを示している。
残りは金融庁銀行・証券監督局銀行第一課長、総務省の自治行政局住民制度課長・自治財政局調整課長・自治税務局企画課長、財務省主税局調査課長と税制第一課企画官、国税庁課税部個人課税課長、厚生労働省政策統括官付参事官である。住民情報、地方財政、地方税、所得把握、社会保険料という支援金の計算に必要な要素が、それぞれの担当課長で押さえられている形だ。
支援金は、前年の勤労所得が「所得下限額」を超え、前年の合計所得金額が「所得上限額」以下で、住民税額と社会保険料控除額から公的年金等収入を引いた額が「純負担基準額」を超えることなどを要件に、市町村が年1回支給する。大綱は、公的給付支給等口座を登録している人については市町村長が職権で認定できるとしたうえで、「支給事務の運用においては、職権認定の処理を原則とする」と書いている。申請書を出さなくても振り込まれる仕組みを本筋に据えたということで、デジタル庁の参事官が並ぶ理由もここにある。支給の時期や回数については就業者負担軽減支援金はいつ・誰に? 支給は年1回秋、2029年度だけ4月と秋の2回 金額は政令でで詳しく扱った。
経済産業省「詳細公表後5〜6か月」 レジ改修の4工程
実施日程の厳しさを数字で示したのが、経済産業省・中小企業庁の資料5である。6月3日の実務者会議でターミナルPOSと基幹システムの改修に必要な期間やコストについて配られた資料をもとに作成したもので、改修を4つの工程に分けて必要な期間を並べている。影響調査が1.5か月程度、システム改修が1.5か月程度、テストが2か月程度、店舗導入が1か月程度で、合計すると6か月になる。
レジ・基幹システム改修に必要な期間(制度の詳細公表後)(か月)
数値で見る(単位: か月)
| 項目 | か月 |
|---|---|
| 影響調査 | 1.5 |
| 改修 | 1.5 |
| テスト | 2.0 |
| 店舗導入 | 1.0 |
資料は、税率を0%にするのではなく「1%への引下げ」であれば「0%の特殊性」に関する影響調査・システム改修・テストが不要となるため、必要期間は制度の詳細公表後5〜6か月程度に短縮できるというシステムメーカーの見解を併記している。工程の中身を見ると、影響調査では税率欄に「1」を入力する項目の洗い出しなど改修の要否と内容を検討し、小売側とコスト面を含めた作業方針をすり合わせる。テストには、POSと基幹系の全体や取引先システムとの連携を通した相応のパターンが要るとされ、4工程のうち最も長い2か月が充てられている。
この数字は逆算の材料になる。2027年4月1日の実施に店舗側が間に合うには、制度の詳細が5〜6か月前、つまり2026年の秋から年末にかけて公表されている必要がある。ところが支援金の額も所得の線引きも政令待ちで、税率引下げ側も総額表示義務の特例など細目が残る。大綱が「制度の詳細についてできる限り早急に公表して広報活動を開始する」と関係府省庁に求め、資料4の筆頭にレジ改修の進捗が置かれているのは、この時間の余裕のなさを映している。
経済産業省は、周知の実績も報告した。10月8日時点で、中小企業・小売・システム関係団体等26団体と、システムメーカー8社に働きかけている。中小企業団体にはデジタル化・AI導入補助金でスマートレジシステムが優先採択の対象になったことと事前着手制度が措置されたことの周知を、小売事業者にはレジ・会計システムの改修など必要な対応の計画的な準備・着手を、システムメーカーには広域的な体制の構築や改修要員の確保を依頼した内容だ。
国税庁は9月15日に特設サイト 非課税の人にも確定申告を呼びかけ
国税庁の資料6によると、同庁は大綱が閣議決定された9月15日と同じ日にホームページに特設サイトを開設し、リーフレット(2頁の概要版)とパンフレット(8頁の詳細版)、具体的な事例に基づくQ&A、説明動画を公表して広報を始めた。コールセンターを置いて電話相談に応じるほか、レジ・システム開発事業者から寄せられる税務の質問に対応する専用の照会窓口も設けている。今後はオンライン説明会の開催、事業者団体が主催する説明会への講師派遣、飲食料品を扱う事業者へのダイレクトメール送付を予定する。大綱が閣議決定された日から広報を始めていたことになり、食料品の消費税1%、大綱を閣議決定 2027年4月から2年間 支援金の額は決定後も「検討し定める」のままで触れた準備の前倒しが、実務の面でも裏づけられた形だ。
支援金については、国税庁は「非課税者の方にも積極的に確定申告を行っていただくために」として、ホームページでの周知、SNSアカウントを使った発信、税務署窓口へのリーフレットの備え付けと掲示を挙げた。税務署では、非課税の人が適正かつ円滑に申告手続きを行えるよう、丁寧に申告相談を行う体制を構築するとしている。
ここは支援金制度の弱点に直結する部分だ。支援金は前年の所得と社会保険料の負担をもとに市町村が額を決めるが、そもそも申告がなければ市町村は所得を把握できない。大綱も、国の取り組みとして「非課税者であっても積極的に確定申告を行っていただくことを含め」周知広報を行うと明記し、ウェブサイトで受給資格者が自ら支援額を算定できる仕組みの構築や、国のコールセンターで支援見込額を案内できる体制づくりを掲げている。これまで申告の必要がなかった人に申告してもらわなければ届かない給付であり、広報の出来がそのまま受給率に跳ね返る。
法案は10月20日に衆院財務金融委員会へ付託
肝心の法律案は、10月20日に衆議院財務金融委員会に付託された。衆議院の議案審議経過情報では審議状況は「衆議院で審議中」で、審査終了年月日・審査結果の欄は空欄のままである。参議院は10月9日に予備審査の議案を受理したが、予備付託の委員会はまだ記載がない。
法律案の正式名称は「租税及び社会保険料による負担の軽減のための飲食料品に係る消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の支給に関する法律案」で、第222回国会の閣法第1号にあたる。大綱に沿って、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、軽減税率(8%)が適用されている飲食料品の消費税率を国税0.78%、地方消費税と合わせて1%とする。週2回以上発行される新聞の定期購読分は8%のまま据え置かれ、引下げの対象にならない。
支援金の額について大綱は、住民税所得割が課税される水準を踏まえて定める「逓増開始額」以下の人には定額を支給し、そこから「逓増終了額」までは支給額を一定の割合で増やし、その後は定額の「支援基本額」とする設計を示している。単身者の住民税所得割の非課税限度額は所得45万円(給与収入119万円)である。これに加え、社会保険料の負担が生じるいわゆる「年収の壁」に直面する人には「就業促進特例加算」を、19歳未満の扶養児童がいる人には人数に応じた「こども加算」を上乗せする。支援額は1,000円単位の切り上げとし、2027年度と2028年度については、支援金全体に要する費用が飲食料品に係る消費税1%相当分の範囲に収まるよう定めるとしている。ただし、逓増開始額も支援基本額も具体的な金額は決まっていない。
費用は国が3分の2以上を負担し、残りを都道府県と市町村が半分ずつ持つ。2027年度と2028年度は、支援金の支給に要する市区町村の負担に相当する額を、すべての市区町村に特別交付金として交付する。事務費やシステム改修に要する経費は制度導入に際して全額国費で措置される。連絡会議が追う工程表は、国会の審議と並んで、この制度が2027年4月に動き出せるかどうかを左右することになる。
