総務省行政評価局は10月22日、不登校の子どもの健康診断に関する調査の結果をまとめ、文部科学省、こども家庭庁、厚生労働省に通知した。全国から抽出した小中学校52校で2025年度(令和7年度)の学校健診の受診状況を調べたところ、不登校の子どものうち全科目を受けていなかったのは小学校で5.7%、中学校で19.9%だった。学校健診を受けないまま、側わん症や腎臓の病気の発見が遅れたとみられる事例も把握した。総務省は子どもの状態を3つに分け、それぞれに合った受診の機会をつくるよう3省庁に求めた。
小中学校の不登校は35万人 健診の受診状況は分かっていなかった
学校健診は、学校保健安全法13条に基づき、学校が毎学年定期に行う健康診断だ。毎年度6月30日までに行うこととされ、各学校が定めた日に校内で実施するのが基本になっている。このため、決められた日に学校へ行けない子どもは受けにくい。学校保健安全法施行規則は、その日に受けられなかった場合は「その事由のなくなつた後すみやかに健康診断を行う」と定めており、文部科学省は2024年1月の通知と同年9月の事務連絡で、不登校などで受けられなかった子どもにも受診の機会を確保するよう学校側に求めてきた。
一方で、小中学校の不登校の子どもは増え続けている。文科省の調査では、2012年度の11万2689人から12年連続で増え、2024年度は35万3970人(小学校13万7704人、中学校21万6266人)になった。報告書は、2016年に教育機会確保法が成立して以降、不登校の子どもへの支援は強まったものの、その中身は多様な学びの場の確保が中心で、健康診断や健康管理の対策ははっきりしていないと指摘する。不登校の子どもがどれだけ学校健診を受けているかは、これまで分かっていなかった。
調査は2025年10月から2026年10月にかけて、北海道、関東、近畿、中国四国の各管区行政評価局と兵庫行政評価事務所も加わって行った。30市町村の首長部局(福祉部局など)・教育委員会と、公立小中学校52校(小学校19校、中学校33校)に聞き取りや書面で調べ、あわせて不登校の子ども本人と保護者にウェブでアンケートを取った。アンケートはフリースクールや不登校の親の会などを通じて依頼し、3116件(有効回答2889件)が集まった。
中学校は2割が全科目未受診 問診のある科目の受診率は3〜4割
52校に2025年9月末時点で在籍していた不登校の子どもは、小学校174人、中学校690人だった。在籍者に占める割合は小学校で平均1.74%、中学校で平均4.98%になる。
この子どもたちの2025年度の受診状況は次の通りだった。
| 受診状況 | 小学校(174人) | 中学校(690人) |
|---|---|---|
| 全科目受診 | 17.8% | 12.2% |
| 全科目未受診 | 5.7% | 19.9% |
| 尿検査以外を未受診 | 12.1% | 8.1% |
| 問診のある科目を未受診(上の2つを除く) | 21.3% | 25.1% |
| その他(一部の科目を未受診) | 43.1% | 34.8% |
出典: 総務省「不登校等のこどもの健康診断に関する調査」結果報告書
全科目を受けていたのは小学校で2割弱、中学校で1割強にとどまる。科目別にみると、医師や歯科医師の問診がある内科、耳鼻咽喉科、眼科、歯科の受診率が低い。保護者が検体を学校に出せる尿検査は小学校で85.6%だったが、歯科は33.9%だった。中学校では内科が33.5%、歯科が27.1%だった。内科、耳鼻咽喉科、眼科、歯科、尿検査、心電図、身体等計測の7科目の平均は、小学校で55.8%、中学校で45.3%。不登校に限らない在籍者全員でみると、受診者数を把握できた39校の7科目平均は小学校98.1%、中学校95.3%で、開きは大きい。
不登校の子どもの学校健診の科目別受診率(2025年度)(%)
小学校中学校
数値で見る(単位: %)
| 項目 | 小学校 | 中学校 |
|---|---|---|
| 内科 | 44.8 | 33.5 |
| 耳鼻咽喉 | 41.4 | 33.6 |
| 眼科 | 38.8 | 28.2 |
| 歯科 | 33.9 | 27.1 |
| 尿検査 | 85.6 | 60.7 |
| 身体計測 | 77.6 | 65.9 |
全科目を受けていない子どもの9月末時点の平均欠席日数は、小学校で93.0日、中学校で85.4日だった。報告書によると、9月末で90日前後欠席している場合は、年度初めからの登校日をほぼ全て休んでいることになる。総務省は、こうした子どもには校内での受診を前提にした対策では限界があるとみる。
3回以上続けて受けない子も 見過ごされた病気
アンケートでも、長く受けていない子どもが少なくないことが分かった。不登校の期間中に学校健診が1回以上あったとする2242件のうち、一度も受けていないとの回答は966件(43.1%)。1回以上受けなかった1671件のうち、3回以上続けて受けなかったとの回答は565件(33.8%)あった。
調査では、不登校で学校健診を受けず、病気などの発見が遅れたと考えられる事例を把握した。小学1年から不登校だった子どもは、中学2年のときに福祉部局などとの面談で顕著な側わん症が分かり、医療機関で手術が必要と診断された。まぶたと足のむくみがひどく小児科で尿検査を受けたところ、大きな病院を紹介されてIgA腎症などと診断された子どももいた。事例の記述には「学校の尿検査を受けていれば早期発見できていたかもしれない」とある。
ほかに、小学3年で声変わりが始まって検査を受け、思春期早発症と診断された例がある。10センチ以上身長が伸びており、事例の記述では、学校健診を受けていれば早く発見できていたとしている。子どもの受診や治療に消極的な家庭で十分な食事が取れずに成長障害が生じ、健康な歯が3本しか残っていなかった事例もあった。
受けなかった理由 「学校以外の場所なら」が6割
学校健診を受けなかった主な理由を保護者などに1つ選んでもらうと(1671件)、「日時をずらすなどの配慮はあったが、子どもが学校に行くことが難しかった」が33.7%で最も多かった。「配慮がなかった」が28.4%、「事前の連絡がなかった・気付かなかった」が21.2%で続いた。連絡に気付かなかったという355件の内訳では、「学校からの連絡が紙の配布のみで、受け取れなかった又は受け取るまでに時間がかかった」が57.7%を占めた。
子ども734件に、どうすれば受けやすかったかを聞くと、「学校以外の場所(病院など)でする」に「はい」と答えたのが58.7%、「学校内で他の友達や先生と会わないようにする」が42.8%、「学校内で家の人が一緒にいる」が28.5%だった。
学校の外で受けられるようにしている自治体もある。52校のうち23校は、校内で受けられなかった子どもが学校医の医療機関で受診できるようにしていた。この取り組みのある学校とない学校で不登校の子どもの受診率を比べると、内科は45.3%と29.4%、歯科は39.1%と22.8%で、耳鼻咽喉科と眼科も含めた4科目すべてで取り組みのある学校の方が高かった。
ある市は、学校健診を受けていない不登校の小中学生を対象に、学校健診の科目を市立病院でまとめて無料で受けられるようにしている(歯科は市内の歯科医療機関)。健診期間を8月から3月までとし、臨床心理士の相談も受け付ける。市の独自財源で賄っており、国の支援を求めている。福祉部局の保健師などが家庭を訪ね、安否や健康状態を確かめて受診を勧めたり、病院に同行したりしている町もあった。
3省庁への求め 子どもの状態で3つに分ける
総務省は、不登校の子どもの状態はさまざまだとして、対策を3つに分けた。
1つ目は、断続的にでも登校している子どもだ。52校の不登校の子どものうち、9月末時点で欠席が90日以上だったのは小学校17.7%、中学校22.0%で、残りは少しは登校している。こうした子どもには、同級生と日時をずらして校内で受けられるよう配慮することを、教育委員会へ周知するよう文科省に求めた。
2つ目は、学校には通えないが外出はできる子どもで、学校の外で受ける機会が要る。文科省には、学校医の医療機関で受けられるようにしている例を教育委員会に紹介して広げることを求めた。こども家庭庁には、福祉部局などが不登校の子どもの健康診断をする場合、2024年度補正予算で始めたモデル事業「地域における不登校のこどもへの切れ目ない支援事業」などの対象になり得ることを明確にし、周知するよう求めた。
3つ目は、ひきこもりの状態にある子どもや、家庭事情が複雑な子どもで、学校と連携した福祉部局などによる家庭訪問が要るとした。厚生労働省には、社会福祉法に基づく包括的な支援体制が役に立つことを福祉部局などに周知し、2026年の同法改正を踏まえて広めるよう求めた。こども家庭庁には、福祉部局などが家庭訪問などで不登校の子どもの健康管理に取り組む場合も同じ事業の対象になり得ることを明確にし、周知するよう求めた。
このほか文科省には、症状がなくても学校健診を受ける必要があることを子どもや保護者が分かるよう資料を作って周知すること、学校健診の知らせを確実に届けるため、連絡手段の一つとしてデジタルツールの活用を教育委員会に促すことも求めた。
