企業・団体献金の扱いを定める衆議院提出の法律案3本が、令和8年10月5日に衆院の政治改革に関する特別委員会へ付託されたまま並んでいる。内容は3通りに分かれる。自由民主党・無所属の会と日本維新の会が出した案は政治資金規正法の条文を1か所も書き換えず、国会に学識経験者で構成する合議制の組織を置いて令和9年9月30日までに結論を得ると定めるだけである。中道改革連合・無所属と国民民主党・無所属クラブの案は団体献金を受けられる政党支部を都道府県ごとに1つへ限り、参政党とチームみらいの案は団体による寄附と政治資金パーティーの対価の支払そのものを罰則付きで禁じる。衆議院の議案審議経過情報では、3本とも衆議院審査終了年月日・審査結果の欄が空欄のままである。

3本が同じ日に同じ委員会へ付託された

衆議院の議案情報で第222回国会の衆法一覧に載る政治資金関係の法律案は、次の3本である。いずれも第221回国会(特別会)に提出され、令和8年10月5日召集の第222回国会で政治改革に関する特別委員会に付託された。

議案 件名 提出者 提出会派
衆法221-1 政治資金規正法の一部を改正する法律案 落合貴之君外4名 中道改革連合・無所属/国民民主党・無所属クラブ
衆法221-12 政党等の政治資金の収入に関する制度の在り方に係る措置に関する法律案 長谷川淳二君外9名 自由民主党・無所属の会/日本維新の会
衆法221-14 政治資金規正法の一部を改正する法律案 和田政宗君外3名 参政党/チームみらい
衆院の政治改革に関する特別委員会に付託された政治資金関係の3法案出典: 衆議院「議案審議経過情報」(衆法 第221回国会 1号・12号・14号)

3本の経過情報は、いずれも「衆議院議案受理年月日」の欄が空欄で、付託年月日と付託委員会だけが入っている。「衆議院審査終了年月日/衆議院審査結果」「衆議院審議終了年月日/衆議院審議結果」の欄も空欄で、委員会での採決は行われていない。参議院側の各欄、公布年月日・法律番号の欄もすべて空欄である。

議員立法では提出者と賛成者の数が、その案を支える会派の広がりを示す。12号は提出者10人(長谷川淳二、石田真敏、井出庸生、勝目康、国定勇人、奥下剛光、金村龍那、萩原佳、黒田征樹、阿部圭史の各氏)に加えて賛成者が47人で、3本のうち最も多い。1号は落合貴之氏ほか4人、14号は和田政宗氏ほか3人が提出者である。付託だけを受けて採決に至らない議員立法は珍しくなく、同じ第222回国会では国民民主党のコロナ検証委員会設置法案、議院運営委員会に付託 報告書は6か月目途で1年の時限も同じ状態にある。

自民・維新案は現行条文を変えず、期限と検討の場を定める

12号「政党等の政治資金の収入に関する制度の在り方に係る措置に関する法律案」は、本則3条と附則だけの法律案である。政治資金規正法の条文を書き換える規定は含まれていない。

第1条は「最近における政治資金をめぐる状況に鑑み、国民の信頼を確保する観点から行われる政党等の政治資金の収入に関する制度の在り方の検討及びその結論に基づく法制上の措置等について定める」と趣旨を置く。ここでいう政党等は、政治資金規正法第3条第2項の政党、同法第5条第1項第2号の政治資金団体、同法第19条の7第1項の国会議員関係政治団体の3つを指す。

第2条は検討する事項を5つ挙げる。会社・労働組合・職員団体その他の団体から政治活動に関する寄附を受けることができる政党の支部の範囲と、その寄附の量的制限の在り方。政党・政治資金団体以外の政治団体がする寄附の量的制限の在り方。機関紙誌の発行その他の事業による収入に係る政治資金の授受に関する制度の在り方。これら以外の政党等の収入に係る授受の制度の在り方。そして、これらの収入の公開に関する制度の在り方である。検討は「各政党等の成り立ち、組織の形態及び規模等が様々であることを踏まえつつ」行い、令和9年9月30日までに結論を得るとする。

検討の場は、第2条第2項で「国会に置かれる学識経験を有する者により構成される合議制の組織」と定める。組織の名称、委員の人数、任命の手続、議事を公開するかどうかは条文に書かれていない。第3条は、結論に基づき「必要があると認められるときは、速やかに法制上の措置その他の措置が講じられる」とするもので、必要がないと判断された場合の扱いは定めていない。附則は公布の日からの施行で、期限と検討の場を先に決め、中身は組織の議論に委ねる組み立てである。

中道改革連合・国民民主案は入り口を「指定政党支部」に絞る

1号は、団体献金を禁止せずに受け皿と金額の両方を狭める。中心は団体献金を受けられる政党支部の限定である。要綱は、団体から政治活動に関する寄附を受けられる政党の支部を届出済みの「指定政党支部」に限るとし、政党は「一の都道府県の区域を単位として設けられる支部を、その区域につき一に限り」指定できるとする(第21条関係)。指定したときは直ちに文書で、その旨と指定政党支部の名称・主たる事務所の所在地を総務大臣に届け出る。指定を取り消したときや届け出た事項に異動があったときも同じで、総務大臣は届出に係る事項を官報への掲載やインターネットの利用その他の適切な方法により、遅滞なく公表しなければならない。

量的制限も加える。第22条第4項を新設し、団体の寄附は同一の政党または同一の政治資金団体に対して、寄附の総額の限度額の5分の1に相当する額までとする。政党・政治資金団体以外の政治団体がする寄附には、年1億円の総枠制限(第21条の3第5項)と、同一の政治団体に対する年2000万円の個別制限(第22条第1項)を置く。現行の個別制限は5000万円である。

附則には2つの検討条項が入る。附則第2条は個人の寄附を促すための税制で、租税特別措置法の所得税額の特別控除について、控除率を100分の40以下の範囲内で引き上げること、適用の対象に衆参両院議員・都道府県議会議員・都道府県知事・指定都市議会議員・市長の資金管理団体への寄附を追加することを、速やかに検討するとする。現行の控除率は100分の30、対象は政党と政治資金団体に限られる。附則第3条は政党の組織・管理運営等に関する法制度の在り方を検討するとし、その措置を講じる際には、できた法制度の適用を受けない政党が団体献金を受けることを禁止する措置を併せて講じるとする。施行は令和9年1月1日で、支部の指定・届出・公表の規定は令和8年10月1日から、検討条項は公布の日からとされている。

参政党・チームみらい案は寄附とパーティー対価を罰則付きで禁じる

14号は第21条第1項を書き換え、会社・労働組合・職員団体その他の団体は「政治活動に関する寄附又は政治資金パーティーの対価の支払をしてはならない」とする。現行の第21条第1項は団体の寄附先を政党と政治資金団体に限る形だが、この案は相手を問わず禁じ、政治資金パーティーの対価の支払を寄附と同じ列に並べる。1号と12号はパーティー収入を規制の対象に含めていないため、ここが3案の最も大きな違いになる。違反には1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金を科す。政治資金パーティーは、国会議員が議員会館で開いた事例が関文科相、議員会館で政治資金パーティー2回 会見で陳謝「猛省」のように問題になってきた資金集めの手段である。

政治団体の寄附については、年総額6000万円の制限(第21条の3第3項)と、同一の政治団体に対する年2000万円の制限(第22条第1項)を置く。ただし同一の国会議員に係る国会議員関係政治団体の間の寄附は適用から除く。総枠は1号の1億円より4000万円低く、個別制限は1号と同額である。

さらに第22条の6の3を新設し、団体が役職員や構成員に対して、雇用その他の関係もしくは組織の影響力を不当に利用して、または政治団体の会費の額に相当する額の金銭を支払うことを約束して、政治団体の構成員となることを勧誘し、かつ、その政治団体に寄附や政治資金パーティーの対価の支払をさせる行為を禁じる。団体が直接出せなくなった資金を、会費を肩代わりして個人の名義で出させる形を想定した規定である。施行は令和9年1月1日で、施行に必要な関係法律の整備は別に法律で定めるとしている。

現行法の上限と3案の隔たり 会期は12月12日まで

現行の政治資金規正法は、会社・労働組合・職員団体その他の団体の寄附先を政党と政治資金団体に限り(第21条第1項)、年間の総額に上限を置いている(第21条の3第1項)。会社は資本金または出資の金額で区分し、10億円未満が750万円、10億円以上50億円未満が1500万円、50億円以上が3000万円である。

会社が政党・政治資金団体にできる寄附の年間上限(万円)

02,5005,0007,50010,00075010億未満1,50010~50億3,00050億以上10,000加算上限
資本金100億円以上の会社は第2項の加算が適用され、加算額の合計は7000万円が上限出典: 政治資金規正法(昭和23年法律第194号)第21条の3第1項・第2項
数値で見る(単位: 万円)
項目万円
10億未満750
10~50億1,500
50億以上3,000
加算上限10,000

労働組合・職員団体は組合員等の数で区分し、5万人未満が750万円、5万人以上10万人未満が1500万円、10万人以上が3000万円。それ以外の団体は前年の年間経費の額で区分し、2000万円未満が750万円、2000万円以上6000万円未満が1500万円、6000万円以上が3000万円である。資本金または出資の金額が100億円以上の会社、組合員等が15万人以上の労働組合・職員団体、前年の年間経費が8000万円以上のその他の団体には第2項の加算が適用され、加算額の合計が7000万円を超える場合は7000万円の加算にとどまるため、上限は1億円で頭打ちとなる。

個人の寄附は、政党・政治資金団体あてで年2000万円、それ以外の者あてで年1000万円、同一の者に対しては年150万円が上限である。政党・政治資金団体以外の政治団体の寄附は、同一の政治団体に対して年5000万円までと定められているだけで、年間の総枠には制限がない。1号と14号がそろって政治団体の寄附に総枠を設け、個別制限を2000万円へ下げようとしているのは、この総枠の空白を埋めるためである。政党の収入には政党交付金の10月分、11党に78億8412万円を交付 中道改革連合も5億8470万円を請求のとおり公金の交付もあり、団体献金の制限が収入の構成をどう変えるかは、交付金の額とあわせて見ることになる。

3案の隔たりは制度の設計そのものに及ぶ。14号は団体献金をパーティー対価まで含めて禁止し、1号は受け皿を都道府県ごとに1支部へ絞って金額も抑え、12号は現行条文を動かさず結論を得る期限だけを置く。12号が定める令和9年9月30日は、第222回国会の会期末より9か月あまり先である。第222回国会(臨時会)は令和8年10月5日に召集され、会期は69日で12月12日まで。特別委員会が3本をどう扱うかは、この日までの審査に委ねられている。