政府の南極地域観測統合推進本部は10月28日、文部科学省で第169回総会を開き、今冬に出発する第68次南極地域観測隊の行動計画を確定した。南極観測船「しらせ」は11月11日に横須賀を出港し、12月25日に昭和基地へ接岸する予定。隊員は73人(夏隊44人、越冬隊29人)で、この日追加した3人を含む同行者13人と合わせて86人になる。総会では、来年度(令和9年度)に派遣する第69次隊の隊長に国立極地研究所の平譯享(ひらわけ・とおる)教授(56)、副隊長兼越冬隊長に気象庁高層気象台の久光純司(ひさみつ・じゅんじ)観測第二課長(55)を充てることも決めた。
しらせは12月25日に昭和基地接岸の予定
確定した行動計画によると、第68次隊は三つの隊に分かれて南極に入る。中心になるのは、しらせに乗って昭和基地へ向かう本隊だ。
しらせは11月11日に横須賀を出港する。本隊の隊員は11月25日に羽田空港から出国し、翌26日にオーストラリアのフリーマントルでしらせに乗り込む。12月1日にフリーマントルを出港し、12月25日に昭和基地に接岸する計画になっている。
夏の作業を終えると、来年2月15日に昭和基地から最終便が出る。帰路のしらせは2月27日から3月11日までトッテン氷河の沖で観測を行い、3月21日にフリーマントルに入港する。隊員は22日に下船して出国し、23日に成田か羽田へ帰国する。しらせ本体は4月10日に横須賀へ帰港する予定。
| 日付 | 本隊(しらせ)の予定 |
|---|---|
| 2026年11月11日 | しらせが横須賀を出港 |
| 11月25日 | 観測隊が羽田から出国 |
| 11月26日 | フリーマントルに入港、観測隊が乗船 |
| 12月1日 | フリーマントルを出港 |
| 12月25日 | 昭和基地に接岸 |
| 2027年2月15日 | 昭和基地から最終便が出発 |
| 2月27日〜3月11日 | トッテン氷河沖で観測 |
| 3月23日 | 観測隊が帰国(成田か羽田) |
| 4月10日 | しらせが横須賀に帰港 |
先遣隊は空路で10月に昭和基地入り、海鷹丸の別動隊も
本隊とは別に、先遣隊は南極航空網(DROMLAN)の航空機で南極に入る。行動計画では、先遣隊は10月19日に羽田から出国し、25日に南アフリカのケープタウンを発って28日に昭和基地に着く日程を組んでいた。その後、10月29日から来年2月11日までの間に内陸への旅行を行い、帰りは本隊と同じしらせに乗る。
先遣隊には、内陸での活動を担当する副隊長(兼夏副隊長)で国立極地研究所共同研究推進系の川村賢二氏が入る。同行者名簿には、「第3期ドームふじ深層アイスコア」の年代を精密に決めるためのガス分析や、メタンの同位体比の分析に使う試料の採取を目的にした大学院生らが、先遣隊として名を連ねる。氷床を掘って取り出す氷の柱(アイスコア)と積雪を採り、過去の宇宙線の強さの変化を調べる大学院生も先遣隊に入った。
三つ目の別動隊は、東京海洋大学の練習船「海鷹丸」で観測する。海鷹丸は11月26日に東京・豊海を出港し、隊員は来年1月6日に成田から出国して7日にフリーマントルで乗船する。11日に出港して観測を行い、2月7日にオーストラリアのホバートに入港する。隊員は10日に羽田へ帰国し、海鷹丸は3月3日に豊海へ戻る。
隊長は測地学の青山氏、越冬隊の5人は気象庁から
第68次隊の隊長(兼夏隊長)は、国立極地研究所先端研究推進系の青山雄一氏。専門は測地学で、第36次・第49次の越冬隊に加わり、第61次では副隊長兼越冬隊長を務めた。副隊長兼越冬隊長は同研究所南極観測センターの藤野博行氏で、専門は設営。第48次で越冬している。2人は2025年10月27日の第167回総会で決まっていた。
隊員と同行者は段階的に決まった。今年6月30日の第168回総会で第68次の基本的な考え方と行動計画案、最初の隊員と同行者を決め、9月の推進本部連絡会で隊員23人(夏隊17人、越冬隊6人)と同行者5人を追加した。10月28日の総会では同行者3人を加え、隊員73人、同行者13人の体制が固まった。
越冬隊の名簿を見ると、基本観測のうち気象の定常観測は気象庁大気海洋部の5人が担う。このほか、発電機や車両、電気設備、通信、調理、医療、建築・土木といった基地の暮らしと設備を支える設営部門の隊員が多くを占める。国立極地研究所の所属とした上で、括弧内に民間企業の名前を記した隊員も多く、メーカーや建設会社から技術者が加わっている。
同行者には、教員南極派遣プログラムで「南極授業」を行う新潟大学附属長岡中学校と北海道札幌啓成高等学校の教員2人、海洋観測の技術支援をする民間企業の技術者3人、ノルウェー極地研究所の研究者、報道関係者などが入った。
6か年計画は5年目、第69次隊長に衛星海洋学の平譯氏
日本の南極観測は6年を一つの単位とする計画で進めている。現在の第Ⅹ期6か年計画は、2022年の第64次隊から、2028年に第69次隊が越冬を終えるまでを対象とする。第68次はその5年目に当たる。
6月に決めた基本的な考え方は、基本観測を着実に実施しつつ、重点研究観測のメインテーマ「過去と現在の南極から探る将来の地球環境システム」のもとで、研究観測に取り組むとした。あわせて、しらせの本隊、空路の先遣隊、海鷹丸の別動隊の活動を「可能な限り当初計画通り実施できるよう計画する」ことも掲げた。
国立極地研究所によると、このメインテーマの下には三つのサブテーマがある。最古級のアイスコアを採取して過去の環境を調べる観測、氷床と海氷と海洋のつながりから東南極の氷床が解ける仕組みを探る観測、大型の大気レーダーを中心に大気の大循環と宇宙からの影響を探る観測だ。
10月28日の総会では、計画の最終年次に当たる来年度の第69次隊の隊長と副隊長も決めた。隊長(兼夏隊長)の平譯享氏は国立極地研究所先端研究推進系の教授で、専門は衛星海洋学と海洋光学。第42次で越冬し、第44次では夏隊の専用観測船に同行者として乗った。
副隊長(兼越冬隊長)の久光純司氏は気象庁高層気象台の観測第二課長で、専門は気象学。第45次と第52次の2回、越冬隊に加わっている。第69次の越冬隊は、気象庁の職員が隊長として率いることになる。
国立極地研究所は9月16日、第69次で実施する萌芽研究観測として、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の斎藤芳隆氏が代表を務める「南極域におけるスーパープレッシャー気球の飛翔性能試験」を採択したと発表した。応募は3件だった。第69次の隊員は、今後の推進本部の総会や連絡会で順次決まる。
