国民民主党の舟山康江参院議員会長(山形県選出)は10月9日の参議院本会議で、高市首相の所信表明演説に対する代表質問に立った。党が公表した質問全文によると、舟山氏は会派「国民民主党・新緑風会」を代表し、国際秩序、閣僚の資質、財政、食料安全保障など8つの項目を取り上げた。最後の項目では、地元の山形県を走るJR米坂線が2022年の被災から復旧していない問題を挙げ、鉄道の災害復旧支援のあり方を見直すよう求めた。政府側の答弁は、本稿の執筆時点で参議院の会議録が公開されておらず、確認できていない。
米坂線「4年以上経った今も復旧の目処が立っていない」
舟山氏は、鉄道を「地域の足、観光、脱炭素に加え、災害時の物資輸送も担う公共交通、公共財」と位置づけた。東日本大震災では磐越西線が石油の迂回輸送を担ったと例を挙げた。
そのうえで、道路や河川など公共性の高い施設には高率の災害復旧支援がある一方、鉄道は「運賃収入を基本として整備、運営することが原則」とされ、同様の支援が適用されないと指摘した。度重なる自然災害を契機に、鉄道が休止や廃止の危機に瀕していると述べた。
舟山氏によると、斉藤鉄夫元国土交通相は2023年と2024年の舟山氏の質問に対し、「ローカル鉄道が被害を受けた場合、まず災害復旧が最優先」と答えていた。しかし米坂線は「4年以上経った今も復旧の目処が立っていません」と訴えた。
JR東日本の運行情報によると、米坂線は2022年8月の豪雨で被災し、坂町駅と今泉駅の間で上下線とも「当分の間」運転を見合わせている。この区間では代行バスを走らせている。残る米沢駅と今泉駅の間でも、2026年11月まで設備のメンテナンスのため日中の列車に運休が出ると案内している。
舟山氏は井林国土交通相に、大臣が替わっても約束は変わらないのかと質問し、公共性の高い鉄道にも公共土木施設と同様の支援を行うべきだと求めた。首相には、災害をきっかけに地域に不可欠な路線が事実上失われることを容認するのかと問い、道路や河川と同じ公共インフラとして、鉄道の災害復旧支援のあり方そのものを見直す考えがあるかをただした。11月に防災庁が発足するのを前にした質問だと前置きしている。
米の需給「過剰在庫は誰が生み出したのか」
舟山氏は食料安全保障の項目で米の需給を取り上げた。政府が毎年示す需要見通しは、過去10年で実績との差が10万トン以上になった年が5回あり、2024年産は42万トン、2023年産は25万トンの過小推計だったと指摘した。逆に2025年の見通しは実際より28万トン過大だったとし、米市場は価格高騰から一転して下落局面に入っていると述べた。
先の特別国会で成立した改正食糧法は、生産者に「需要に応じた生産」を求めている。舟山氏は、政府の見通しが外れ、生産量も天候で変わる中で、生産者一人ひとりの判断で需給を合わせるのは「神業」だとし、価格変動のリスクを生産者に押しつけるのは酷だと主張した。
2026年産米の農協の概算金は各地で60キロ当たり2万円を割り込む一方、4月に公表された「米のコスト指標」は2万535円で、「このままでは赤字」だと述べた。政府備蓄米は6月末で32万トン、買い戻しと新たな買い入れを含めても59万トンで、適正在庫とされる100万トンに届かないとして、早急に適正水準へ戻すよう求めた。首相には「現在の需給ギャップ、すなわち米の過剰在庫は誰が生み出したのでしょうか」と問い、同党が掲げる「食料安全保障基礎支払」のような直接支払制度の導入を迫った。
消費税減税は「手取りがいくら改善したか」で検証を
今国会の目玉政策である飲食料品の消費税率の臨時的な引き下げについて、舟山氏は「手取りを増やす」目標は共有するとしつつ、費用対効果をただした。税率を8%から1%に下げると、政府試算で年間約4.3兆円の減収になると説明し、そのうちどの程度が店頭価格の低下として消費者に届くのかを示すよう求めた。
政府は制度準備に総額1119億円を充て、うち781億円を中小企業などのレジやPOSの改修支援に、338億円を自治体の税務システム改修などに使うとしている。舟山氏は、値札の変更や従業員教育など支援の対象外となる負担もあり、2年間の時限措置のため引き下げと復元の両方で費用がかかると指摘した。地方消費税や地方交付税の原資が減る分を国が全額手当てするのかも尋ねた。
そのうえで、政府は「4.3兆円減税した」という投入額ではなく、価格への転嫁の度合い、制度移行のコスト、円安や輸入物価への影響を差し引いて、「国民の手取りと暮らしが最終的にいくら改善したのか」で検証し、結果を示すべきだと求めた。消費税減税をめぐっては、前日の衆議院で玉木雄一郎代表が農家・外食・中間層への影響を質問している(玉木代表、財政の持続性で「ドーマー条件」を追及 名目成長率の見通し3.0%に対し10年債の金利は3.089% 食料品消費税減税は農家・外食・中間層の3点)。
閣僚の発言や公益通報の制度も取り上げる
舟山氏は、簗農林水産相が選挙の期間中や選挙後に、支持・不支持と予算や公共工事を結び付ける発言をしたと指摘した。総務相に対しては一般論として、支持・不支持を理由に特殊な利害関係を利用して不利益を示唆し威迫する行為が、公職選挙法第225条第3号の対象となり得るかを尋ねた。同号は「特殊の利害関係を利用して」選挙人らを威迫する行為を選挙の自由妨害罪と定め、4年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金を科す。第251条は、当選人が選挙に関してこうした罪で刑に処せられた場合、当選を無効とする規定である。舟山氏は首相に対し、本人と関係省庁に事実確認を指示し、結果を明らかにするよう求めた。
公益通報者保護制度では、ある独立行政法人の関係者が所管省庁に通報したが十分な調査がされずに放置され、退職に至った事案を承知していると述べた。公益通報者保護法第13条は、通報を受けた権限のある行政機関に「必要な調査」を行うことを義務づけている。舟山氏は、行政機関への通報について省庁の不作為を是正する仕組みが不十分だとして、消費者庁に是正権限を与えるなどの制度見直しを求めた。
質問の冒頭では、国際刑事裁判所(ICC)の赤根所長らを米国が8月18日に制裁対象に指定した問題に触れ、2027年分の分担金の早期拠出や、制裁解除を求める締約国共同声明を日本が主導するよう提案した。結びでは、先の特別国会で本年度予算が国会提出から47日で成立したことなどを挙げ、参議院から「熟議の国会」を実現すると述べた。
