電気やガスなどの利用額に応じて自社株を渡す「カブアンド」を運営する株式会社カブ&ピース(東京都港区虎ノ門)が、カブアンド種類株式第4期募集の新株式発行届出目論見書を公式サイトで公表している。有価証券届出書は2026年4月27日に関東財務局長へ提出され、訂正届出書が同年6月19日、9月9日、9月29日に出された。目論見書によると、利用者が受け取る「カブアンド種類株式」は株主総会での議決権が一切なく、会社が清算された場合の残余財産の分配も受けられない。譲渡には取締役会の承認が必要で、金融商品取引所に上場する予定はないと明記されている。サービスの宣伝で使われる「株がもらえる」という表現と、発行会社自身が開示している条件を照らし合わせた。
「もらえる」のは申込みと払込みを経た新株
カブアンドの公式サイトは冒頭に「生活費が株に変わる。電気代やガス代が株に変わる」「使えば使うほど、株がもらえます」と掲げ、「株をあげちゃいます」と書いている。同じ画面の注記には「カブアンドでの株の受け取りにはサービス利用と株式の申込が必要です」とあり、申し込む前に目論見書を読むよう促している。
目論見書の記述に沿えば、株式の受け取りは贈与ではなく、新株の募集に応募して払込みを行う行為である。会社は各サービスの利用額に応じて「株引換券」を付与する。2026年9月29日時点の付与率は、KABU&でんきとKABU&ガス(都市ガス)が通常会員1%・プラス会員2%・プレミアム会員4%、KABU&モバイル(国内モバイル)の基本料金が通常会員5%・プラス会員10%・プレミアム会員20%である。株引換券は「当社との関係で1枚につき1円として扱われます」と定められ、割引券に交換することもできるが、割引券を株引換券に戻すことはできない。
取得の手続は3段階である。株主規約によると、利用者はまず会社が指定する前払式支払手段発行業者の利用規約に同意し、割り当てられた株数に相当する株引換券をその事業者が発行する前払式支払手段に交換し、その前払式支払手段を使って払込みを行う。株券が無償で送られてくるのではなく、サービス利用で得た1枚1円相当の券を払込資金に充てて新株を引き受ける仕組みだ。会社は証券会社を使わない「自己募集」で発行しており、勧誘方針には「電話や訪問による当社株式の取得の勧誘は行いません」と記されている。
第4期募集の条件も目論見書に出ている。発行数は上限の見込みで6億株、発行価額の総額は48億円。想定発行価格は1株8〜11円の範囲で、評価機関である山田コンサルティンググループによる評価額を勘案し、2026年10月29日の条件決定日に決める。申込期間は11月5日から25日まで、払込期日は12月9日。公式サイトは「8円は第3期募集の発行価格」と注記し、発行価格は「カブアンド種類株式の価値を示すものでも保証するものでもありません」と明記している。
何株もらえるかは、引き換えるまで確定しない
株引換券は1枚1円として扱われるが、その券が何株に変わるかは、引き換えの申込みを終えるまで確定しない。1株当たりの発行価格は条件決定日の2026年10月29日に決める設計で、目論見書に載っている8〜11円は想定の範囲にすぎない。目論見書の注記は、その時点の評価額によっては「その時点で示されている想定発行価格の範囲外で発行価格を決定」する可能性があるとしている。申込株数単位は1株。1000枚(1000円相当)の株引換券を使う場合、単純に割れば1株8円なら125株、11円なら90株である。券の枚数は1円で固定されていても、受け取る株数は会社が後から決める価格に左右される。
券を持っていれば必ず今回の募集で株になる、というわけでもない。会社は申込期間の終了後に申込者が株主として適切かを審査し、「当該審査を通過した申込者に係る申込株式数の総数が発行数を上回った場合、申込みの先着順によりまたは申込株式数に応じて発行数を按分して割り当てる」と定める。上回った分の株引換券は返還され、次回以降の募集か割引券に使える。本人確認や振替口座の連携を済ませない場合には「払込期日において有効な払込みとして取り扱われない場合があります」と書かれている。
では、会社が種類株式だけを分割して渡す株数を増やすことはできるのか。目論見書の「ヌ 株式の併合、分割または募集株式の割当てを受ける権利等」は「当社は、株式の併合または分割を行うときは、普通株式およびカブアンド種類株式の種類ごとに同時に同一割合で行います」と定める。種類株式だけを10分割して株数を膨らませることはできず、分割するなら普通株式も同じ割合で分割される。株数の多寡そのものに意味はなく、1株当たりの価値は会社が依拠する評価額の側で決まる。会社自身、上場時に種類株式1株と普通株式1株を交換する条項は「カブアンド種類株式と普通株式で1株当たりの価値が等しいことを前提」としたものだと説明し、「普通株式の市場価格がカブアンド種類株式の発行価格を上回る保証もありません」と付記している。
議決権も残余財産の分配もなく、譲渡は取締役会の承認が必要
目論見書の「摘要(カブアンド種類株式の内容)」は、普通株式と種類株式の違いを項目ごとに列挙している。「ハ 議決権」の項は「カブアンド種類株主は、すべての事項につき株主総会において議決権を有しません」とする。取締役や監査役の選任、配当の決定、計算書類の承認といった議案に賛否を示すことはできない。会社はこの設計の理由を「上場に向けた準備を含む当社グループの重要な業務を円滑に執行するためであります」と説明する。「ロ 残余財産の分配」の項は「当社は、カブアンド種類株主等に対しては、残余財産の分配を行いません」の1文で終わる。残余財産の分配とは、会社を解散して資産を売り、負債を返した後に残った財産を株主に配ることをいう。配当は普通株式1株当たりと同額・同順位で支払うと定められているが、リスクの欄は「剰余金の配当自体が行われない可能性があります」としており、その是非を決める株主総会で票を投じることはできない。
| 項目 | 普通株式 | カブアンド種類株式 |
|---|---|---|
| 株主総会の議決権 | あり(完全議決権株式) | すべての事項について無し |
| 剰余金の配当 | 対象 | 普通株式1株当たりと同額・同順位 |
| 残余財産の分配 | 対象 | 行わない |
| 上場の状況 | 非上場・非登録 | 非上場・非登録。上場の予定なし |
| 株主数 | 3者(2026年4月27日現在) | 101万4058人(2026年9月9日現在) |
| 発行済株式数 | 31億6666万6667株 | 8億2252万3059株 |
「ヲ 譲渡制限」の項は「カブアンド種類株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を受けなければなりません」と定める。カブアンド株主規約はさらに踏み込み、第3条で「第三者に譲渡、担保提供、貸付け、その他の移転または処分をしないようお願いいたします」とし、公式サイトも「未公開株(当社種類株式)は、原則、売却不可になります」と注記している。リスクの欄は「当社取締役会が譲渡を承認しないときは、その保有する当社株式を譲渡することができず、カブアンド種類株式を換金することができない可能性があります」と記す。
「ワ 非上場」の項は「カブアンド種類株式は、金融商品取引所において上場の予定はありません」と明記する。上場に向かう道筋は「ヘ 会社による普通株式対価の取得条項」に書かれており、いずれかの金融商品取引所への上場申請を取締役会が承認した場合、会社は種類株式1株を取得するのと引き換えに普通株式1株を交付することが「できる」とされている。会社の義務ではなく権利として定められた条項である。リスクの欄も「当社が発行する株式が上場される保証はなく、したがってカブアンド種類株式の転換が行われる保証もありません」とし、公式サイトも「当社の上場について確約するものではありません」と2か所に注記している。
会社側から取り戻せる条項と、2028年末の買取期限
目論見書は、会社が種類株式を取得できる場合も列挙している。「チ 会社による金銭対価の取得条項」は、会員から強制的に退会させる場合と、会社がする通知または催告に6か月以上返答がない場合に、取締役会の承認を経て1株当たりの払込金額相当額で株式を取得できると定める。リスクの欄はこれを「メールアドレスや住所変更等の理由により連絡が取れなくなってしまった場合、当該カブアンド種類株主が保有するカブアンド種類株式を当社が当該カブアンド種類株主の同意なく取得する可能性があります」と説明している。「リ 全部取得条項」は、株主総会の特別決議によって種類株式の全部を取得できるとし、その対価は「当該決議時の当社の財務状況を踏まえて株主総会において定める」とする。この株主総会で議決権を持つのは普通株主だけである。
一方で、上場しなかった場合の出口も用意されている。目論見書の「カブアンド種類株式の買取りについて」は、2028年12月31日までに会社の発行する株式がいずれの金融商品取引所にも上場しなかった場合、会社が指定する条件および方法により、買取りを希望する者から、会社が指定する評価機関が算定するその時点の評価額で買取りに応じるとしている。ただし評価額が払込金額相当額の1.2倍を上回る場合は、その1.2倍の金額(買取上限金額)での買取りとなる。評価額が上限を下回る場合は評価額での買取りとなるため、1.2倍は上限であって最低保証ではない。
配当は創業以来なく、101万人の議決権はゼロ
「3【配当政策】」の項は「創業以来配当は実施しておりません」とし、「現時点において配当実施の可能性およびその実施時期については未定であります」と書いている。業績は、連結での第2期(2026年1月期)の売上高が80億2624万8000円、親会社株主に帰属する当期純損失が13億5220万8000円だった。純資産は33億5499万7000円で、自己資本比率は44.9%、1株当たり純資産額は0.88円である。なお売上高は、サービスの利用などに伴い付与する株引換券に相当する金額を差し引いた後の数値だと注記されている。
発行価格の8〜11円は評価機関の評価額を基準にしたもので、1株当たり純資産額の0.88円とは算定の考え方が異なる。会社は希薄化のリスクも挙げており、株引換券の付与を通じて種類株式を随時追加発行する予定であるため発行済株式数が増え、既存の株主の持分割合が減少し、配当が行われる場合の金額や上場時に転換される普通株式の1株当たりの価値に「悪影響を受ける可能性があります」としている。希薄化とは、新株の発行で1株当たりの価値や持分比率が薄まることをいう。
目論見書によると、2026年9月9日現在のカブアンド種類株式の株主数は101万4058人で、保有株式数は8億2252万3059株(うち10万5989株は自己株式)。すべて個人が保有している。これに対し、議決権のある普通株式の株主は2026年4月27日現在で3者にとどまる。法人2社が10億6666万6667株(33.7%)、個人1人が21億株(66.3%)を保有し、合計31億6666万6667株である。大株主の状況の欄では、2026年6月19日現在で前澤友作氏が21億株を持ち、自己株式を除く発行済株式総数に対する所有割合は52.64%。株式会社前澤ファンドが6億2666万6666株で15.71%、株式会社グーニーズが4億4000万1株で11.03%と記載されている。
リスクの欄はこの構図を「カブアンド種類株主は、株主総会およびカブアンド種類株主総会における議決権行使を通じた当社の意思決定に参加することが原則としてできません。したがって、当社普通株主または当社の取締役会により、カブアンド種類株主の意向に沿わない意思決定が行われる可能性があります」と記している。なお公式サイトには、SNSなどで会社や株主・顧客を「情弱」「養分」などと揶揄する投稿があるとして「法的措置を含めた厳正な対応を取ってまいります」とする告知も掲載されている。
