半導体やサイバーセキュリティ製品を扱うマクニカホールディングス(東証プライム)は11月2日、2027年3月期の連結業績予想を上方修正した。5月11日に公表した予想に比べ、売上高を1兆3000億円から1兆6700億円に、営業利益を520億円から675億円に、純利益(親会社株主に帰属する当期純利益)を320億円から460億円に引き上げた。同日発表した4〜9月期(中間期)の連結決算は、売上高が8313億円(前年同期比44.5%増)、営業利益が335億円(同91.5%増)だった。中間配当を前回予想より5円多い1株45円とし、年間配当の予想を80円から90円に引き上げた。上限50億円の自社株買いも決めた。
4〜9月期は売上高44.5%増、純利益は2倍
4〜9月期の連結決算は、売上高が8312億9300万円で前年同期の5754億3500万円から44.5%増えた。営業利益は前年同期の175億円から335億1800万円に、経常利益は147億円から327億5100万円(122.4%増)に、純利益は110億円から222億7800万円(102.1%増)に増え、純利益は前年同期の2倍を超えた。1株当たり中間純利益は61円75銭から124円74銭になった。
前年同期は減益だった。2026年3月期の中間期は売上高こそ10.9%増えたものの、営業利益は21.8%減、純利益は27.7%減っていた。今回はその水準から大きく持ち直した形になる。
同社は決算短信で、市場の状況について、生成AI向けサーバーの需要が堅調に推移し「半導体需要全体の底上げにつながっています」と説明した。産業機器市場では半導体の製造・試験装置への設備投資のほか、工場の自動化に使う工作機械向けなど幅広い製品で需要が回復し、車載市場でも高度な制御システムの需要が続いているとした。
半導体事業が売上の9割近く、メモリは2倍超
同社はこの中間期から、事業の区分(報告セグメント)を2つから3つに改めた。従来の「集積回路及び電子デバイスその他事業」を「半導体事業」に、「サイバーセキュリティ及びその他ITソリューション事業」を「サイバーセキュリティ事業」に改称し、自動運転や製造業の業務改革(DX)支援などを担う「CPSソリューション事業」を独立させた。CPSはサイバー・フィジカル・システムの略で、現実の機械や交通をデジタル技術と組み合わせる事業を指す。前年同期の数値は新しい区分に組み替えて比べている。
半導体事業の売上高は7213億円(46.7%増)、営業利益は292億円(117.1%増)だった。外部顧客への売上高で見ると、連結売上高の約87%を半導体事業が占める。同社によると、産業機器市場ではAI需要に向けた設備投資を背景に半導体製造装置向けが堅調で、車載市場では在庫調整が終わって半導体の需要が回復した。コンピュータ向けはAIサーバー向けの需要が続いた。
品目別に見ると、伸びが大きかったのはメモリで、前年同期の281億円から614億円と2倍を超えた(118.6%増)。最も金額が大きいアナログ半導体は1363億円から2383億円(74.8%増)に、特定の用途向けに作られた汎用の集積回路(ASSP)は479億円から775億円(61.6%増)に増えた。マイコンは775億円から1015億円(31.0%増)だった。一方、顧客の注文に応じて設計するASICは87億円から84億円に減った。
| 品目 | 前年同期 | 今回 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 集積回路 | 4184億円 | 6296億円 | 50.5%増 |
| アナログ | 1363億円 | 2383億円 | 74.8%増 |
| マイコン | 775億円 | 1015億円 | 31.0%増 |
| ASSP | 479億円 | 775億円 | 61.6%増 |
| メモリ | 281億円 | 614億円 | 118.6%増 |
| 電子デバイス | 404億円 | 619億円 | 53.2%増 |
| 半導体事業 計 | 4916億円 | 7213億円 | 46.7%増 |
出典: マクニカホールディングス「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信」
サイバーセキュリティ事業は売上高が1059億円(31.2%増)、営業利益が89億円(14.8%増)だった。国内で大規模なサイバー被害が相次ぐなか、パソコンなどの端末を統合的に守るセキュリティ関連商品や、クラウド上の安全な管理を支える製品が伸びたという。シンガポールを中心とするアジア太平洋地域の事業も伸びたとしている。
自動運転バスは販売が想定を下回り赤字拡大
CPSソリューション事業は売上高が41億円(25.9%増)だったが、営業損失は前年同期の37億円から46億円に広がった。製造業向けのシステム構築や受託生産の案件は伸びた一方、自動運転の領域で損失が膨らんだ。
同社は自動運転の電気バス(EVバス)を手がけており、2026年3月には自社の自動運転EVバス「EVO」が茨城県常陸太田市の一般道で、運転者を必要としない自動運転車(レベル4)としての運行認可を受けた。ただ、バスを生産する連結子会社Navya Mobility SASで生産・出荷の体制を広げているものの、地方自治体などに導入されるまでの期間が長くなり、完成車両の外部への販売台数が当初の想定を下回った。費用が売り上げに先行して計上される状態になったうえ、顧客の車両開発計画の中止で、当初計画に織り込んでいた案件が終わったという。
同社はこの領域について、下期(10月〜2027年3月)の売上高と利益も当初計画を下回る見込みだと説明した。理由として、自動運転EVバスの事業開発に向けた投資の段階が続くことや、海外の事業環境の変化を踏まえた販売計画の見直しを挙げた。一方で、政府の成長戦略で重点とする17分野の製品・技術の一つに自動運転が位置づけられ、今後は自動運転バスの導入拡大が期待されているとも述べている。
通期予想は売上高37.5%増、下期も上期並み
修正後の通期予想は、売上高が1兆6700億円で前期実績の1兆2142億円から37.5%増える。営業利益は675億円(60.9%増)、経常利益は660億円(76.5%増)、純利益は460億円(65.7%増)を見込む。5月時点の予想と比べると、売上高は3700億円(28.4%)、純利益は140億円(43.7%)の上積みとなる。1株当たり当期純利益の予想は179円21銭から257円56銭に上がった。
マクニカHDの2027年3月期通期予想の修正(億円)
売上高営業利益
数値で見る(単位: 億円)
| 項目 | 売上高 | 営業利益 |
|---|---|---|
| 前期実績 | 12,142 | 420 |
| 5月予想 | 13,000 | 520 |
| 今回予想 | 16,700 | 675 |
中間期の実績は、修正後の通期予想に対して売上高、営業利益とも約5割に当たる。通期予想から中間期の実績を差し引くと、下期の売上高は約8387億円、営業利益は約340億円となり、上期とほぼ同じ水準を見込んでいることになる。前期の下期(売上高約6388億円、営業利益約244億円)と比べると、売上高、営業利益とも3割を超えて増える計算だ。予想の前提となる為替レートは1ドル=158円とした。
修正の理由について同社は、半導体事業では「AI関連向けの需要が市場を牽引し、幅広い市場で半導体需要は堅調に推移する見込み」とし、サイバーセキュリティ事業でもAIに起因する新たな需要が増えていると説明した。自動運転の領域が計画を下回る分を見込んだうえで、全体として予想を引き上げた。
年間配当90円に増配、上限50億円の自社株買い
株主への還元も厚くした。9月30日を基準日とする中間配当は1株45円とし、5月時点の予想(40円)より5円増やした。配当金の総額は80億3900万円で、12月2日に支払いを始める。期末配当の予想も40円から45円に引き上げ、年間配当は前回予想の80円から90円になる見込みだ。前期の年間配当は70円(中間35円、期末35円)だった。
あわせて、自社株買いを決めた。取得するのは上限160万株(自己株式を除く発行済み株式の0.89%)、金額で上限50億円。11月4日から12月21日まで、東京証券取引所の市場で買い付ける。9月30日時点の発行済み株式数(自己株式を除く)は1億7865万5213株、自己株式は41万6933株だった。
同社は2025〜2027年度の中期経営計画で、株主資本に対する配当の割合を示す「連結自己資本配当率(DOE)」5%を目安に安定した配当を続け、機動的な自社株買いと合わせて、利益のうち株主に還元する割合(総還元性向)を40〜50%にすることを掲げている。今回の増配と自社株買いはこの方針に基づくと説明した。
半導体関連では、試験装置大手のアドバンテストも10月28日に通期予想を引き上げ、売上高の予想を1兆8630億円とした(アドバンテスト、通期予想を再び上方修正 売上高1兆8630億円に 中間期は過去最高)。
財務面では、売上債権と在庫が膨らんだ。9月末の総資産は8403億円で、3月末から1394億円増えた。売掛金などが923億円、商品在庫が413億円増え、短期借入金も401億円増えた。この結果、営業活動によるキャッシュ・フローは326億円の支出超過(前年同期は236億円の収入超過)となり、自己資本比率は3月末の39.8%から34.9%に下がった。
