北海道夕張市が財政再生計画のもとで返してきた再生振替特例債の償還が、今年度末(2027年3月末)に終わる見込みとなった。藤井総務相が11月2日の閣議後記者会見で、記者の質問に答えて明らかにした。10月30日には夕張市、北海道、総務省の実務者が、市の今後の行財政運営のあり方について協議した。藤井総務相は、財政再生計画は令和11年度(2029年度)で終了する見込みだと述べ、「財政再生団体からの脱却後のまちづくりを見据えて、夕張市が、着実に、そして力強く前進していくことを強く期待しております」と語った。夕張市は、全国の自治体で唯一の財政再生団体である。
3者協議と総務相の答弁
会見で記者は、10月30日(金)に夕張市で総務省と北海道を交えた3者協議が開かれたと述べ、20年間市を支えてきた総務省の大臣としての受け止めを尋ねた。
藤井総務相は、10月30日に夕張市、北海道、総務省の実務者が、夕張市の今後の行財政運営のあり方などについて協議をしたと報告を受けていると答えた。そのうえで、夕張市は平成18年度に353億円の赤字を抱えて財政再建団体となり、それ以降、国の関与の下で財政再生計画に基づく行政運営を行ってきたと経緯を説明した。「財政再生は着実に進み、今年度末には、再生振替特例債の償還が完了し、令和11年度で財政再生計画は終了する見込みとなっております」と述べた。
今後については、人口減少への対応、地場産業の振興、持続的な行財政運営の確立など、取り組むべき課題が多いと指摘した。夕張市は令和9年度(2027年度)を始期とする総合計画の策定に着手し、市民とともにまちの将来像を議論していると述べ、「総務省といたしましても、北海道と連携して、夕張市の取組をしっかりと支援してまいります」と語った。
固定資産税は標準より高い1.45%
協議の中身について、質問した記者は会見で、特例債の完済予定を踏まえ、夕張市から固定資産税を標準税率に戻すことや各種交付手数料を従来の水準に戻す意向が示され、3者で財政再生計画に大きな影響を与えないことを確認したと聞いていると述べた。藤井総務相の答弁はこの点に触れていない。協議の内容を伝える市・北海道・総務省の公表資料は、11月2日時点で確認できていない。
夕張市が公表している現行の財政再生計画書は、市税について平成29年度以降、固定資産税の税率を1.45%とすると定めている。地方税法第350条が定める固定資産税の標準税率は1.4%で、夕張市はそれを上回る税率で課税してきた。軽自動車税も、超過課税をしている他の市町村の税額を下回らないことを基準に定めるとしている。計画書は、超過課税による増収を計画期間中に5億3700万円と見込む。
計画書によると、市は平成19年度から超過課税を始めた。当初の財政再生計画書では、個人市民税の均等割を3500円、所得割を6.5%とするなど、固定資産税のほかにも標準を超える税率を並べていた。現行の計画書は「定住・移住を促進する観点等から、一部の超過課税については、平成29年度より、標準税率等への税率見直しを行う」としている。
手数料も引き上げてきた。計画書は、各種の交付・閲覧手数料を平成19年度から150〜200円引き上げたと記している。市の税務課のページでは、納税証明書や市・道民税の課税証明書の交付手数料は1件500円である。
赤字を借金に振り替えて17年で返す仕組み
再生振替特例債は、地方公共団体の財政の健全化に関する法律(財政健全化法、2007年制定)第12条が定める地方債である。財政が破綻状態に陥った自治体(財政再生団体)が、財政再生計画に総務相の同意を得ている場合に限り、一度に埋められない赤字(収支不足額)を地方債に振り替え、計画の期間内に計画的に返していくことを認めている。同条2項は、特例債を財政再生計画の計画期間内に償還しなければならないと定めている。
同法第8条によれば、財政再生計画は、赤字の解消や財政指標の改善とあわせ、特例債を起こした場合はその償還を完了することを目標として作る。計画に盛り込む事項として、歳出削減の措置のほか、使用料・手数料の額の変更や、地方税法が定める標準税率を超える税率での課税による増収計画も挙げている。財政再生団体は、市民の負担を増やしてでも返済の財源を確保することが前提になっている。
夕張市の当初の財政再生計画書は、破綻に至った経緯をこう分析している。市は主要な産炭地として発展したが、炭鉱の閉山が相次ぎ、人口はピーク時の10万8千人から平成17年には1万3千人まで減った。石炭産業に代わる観光振興や住宅、福祉などに多額の財政支出を続け、観光関連の第三セクターの赤字補塡も膨らんだ。さらに、一時借入金を使って会計間で年度をまたぐ貸し付けと償還を繰り返す不適正な会計処理で赤字決算を先送りしてきた。平成18年度に観光事業会計や病院事業会計などを廃止して累積債務を清算した結果、実質収支の赤字は約353億円となった。
市は平成19年3月に旧法の地方財政再建促進特別措置法に基づく財政再建計画を作ったが、平成20年度決算で実質赤字比率が703.60%となるなど、財政健全化法の3つの再生判断比率がいずれも財政再生基準以上となり、同法に基づく財政再生計画に移った。当初の計画書は、計画期間を平成21年度から平成41年度(令和11年度)までの21年間とし、赤字を解消する実質的な期間を平成22年度から平成38年度(令和8年度)までの17年間としていた。
総務省が公表した最新の計画書によると、市は計画の初年度である平成21年度(2009年度)に、321億9900万円の再生振替特例債を発行した。同年度の一般会計の歳入総額は420億4023万円で、その8割近くを特例債が占めた。当時の市の地方税収入は9億3470万円であり、特例債は税収の30年分を超える額だった。
毎年25億円余りを返済 公債費は今年度の3分の1以下へ
計画書の歳入歳出年次総合計画を見ると、特例債の償還額は平成22年度が4億5321万円、平成23年度と平成24年度がそれぞれ4億8299万円だった。平成25年度からは毎年度25億5845万円前後となり、令和8年度(今年度)の25億5845万円が最後の返済になる。平成22年度から令和8年度までの17年度分を合計すると372億3748万円で、発行額の321億9900万円を50億円余り上回る。
夕張市の公債費(一般会計、財政再生計画の見込み)(億円)
数値で見る(単位: 億円)
| 項目 | 億円 |
|---|---|
| 令和6 | 35.95 |
| 令和7 | 36.03 |
| 令和8 | 37.15 |
| 令和9 | 10.62 |
| 令和10 | 10.38 |
| 令和11 | 9.88 |
特例債の返済が終わると、市が借金返済にあてる公債費は大きく減る。計画では、一般会計の公債費は令和8年度の37億1450万円から、令和9年度には10億6244万円に下がる。令和10年度は10億3845万円、計画の最終年度の令和11年度は9億8764万円を見込む。
一般会計の歳出総額も、令和8年度の113億9434万円から令和9年度は81億4969万円に縮む。歳入の側では、地方交付税が令和8年度の52億1040万円から令和9年度は46億1629万円に、地方税が8億6693万円から6億5652万円に、それぞれ減ると見込んでいる。計画書の表は、地方税が減る理由を示していない。
返済後も計画は令和11年度まで 新しい総合計画と並行
特例債の返済が終わっても、夕張市はすぐには財政再生団体から外れない。夕張市の財政再生計画の計画期間は平成21年度から令和11年度までの21年間で、令和8年度は第18年度にあたる。藤井総務相の答弁どおり、計画は令和11年度で終了する見込みである。
財政再生団体の長は、財政再生計画に基づいて予算を作らなければならない(同法第9条4項)。計画を変えるには市議会の議決が要り(同条1項)、総務相の同意を得た計画を変えるときは、あらかじめ総務相に協議して同意を得なければならない(同法第10条6項)。夕張市の計画は、今年度だけで9月の変更が4度目(第4次変更)だった。9月の変更は、老朽化した消防ポンプ自動車の更新を令和10年度の予定から前倒しするなどの内容で、夕張市の財政再生計画、今年度4度目の変更に総務相が同意 消防ポンプ車の更新を2年前倒し 322億円の再生債返済は今年度で終わるで伝えた。
全国の自治体の財政状況は地方自治体が返していく借金は179兆5246億円 令和8年版地方財政白書 赤字決算の自治体はゼロ、財政再生団体は夕張市だけで伝えている。
来年度からは、市の歳出で大きな割合を占めてきた特例債の返済がなくなり、計画上、公債費は26億5206万円減る。その一方で、地方交付税は5億9412万円、地方税は2億1042万円少なく見込まれ、歳出の総額は32億4465万円小さくなる。計画の数字の上では、返済が終わった分がそのまま新しい事業に回る形にはなっていない。
夕張市は令和9年度を始期とする総合計画で、特例債完済後のまちの将来像を示す。藤井総務相が挙げた人口減少への対応と地場産業の振興は、計画が終わる令和11年度の後も続く課題である。特例債の完済から計画の終了までの3年間は、国の同意の下での財政運営と、新しい総合計画に基づくまちづくりが並行して進むことになる。
