総務省は11月2日、NTT東日本・西日本の固定電話網を他の通信会社が使う際の接続料のうち、長期増分費用(LRIC)方式で算定する2027年度分について、計算に使う数値を改める「第一種指定電気通信設備接続料規則」の改正省令案を公表した。電柱に架ける架空メタルケーブルの経済的耐用年数を37.5年から29.3年に短くし、メタルケーブルの加入者回線1回線あたりの施設保全費を104円から84円に下げるなど、設備の量と費用の数値を最新のものに置き換える。11月3日から12月2日まで意見を募集する。

2027年度の接続料に使う数値を置き換える

対象は、NTT東西が設置する「第一種指定電気通信設備」の接続料のうち、メタル回線収容機能と一般中継系ルータ接続伝送機能の2つだ。この2機能の接続料はLRIC方式で算定すると定められており、総務省は今回、2027年度(令和9年度)の算定で使う「正味固定資産価額算定に用いる数値」(規則の別表第2の2)と「費用算定に用いる数値」(別表第4の3)を改める。

数値は、情報通信審議会の接続政策委員会に置かれた「接続料の算定等に関するワーキンググループ」が10月29日と30日に持ち回りで開いた第9回会合の検討を踏まえたという。総務省は、審議会への諮問を要しない「軽微な事項」に当たるとしており、意見募集の結果を踏まえて規則を改正する予定だ。意見は郵送の場合、締切日の消印まで有効とする。

省令案の新旧対照表には、設備の長さ、費用の比率、都道府県別の単価など、数百の数値が並ぶ。総務省の発表は、改定によって接続料の額がどれだけ変わるかを示していない。接続料の額そのものは、これらの数値をモデルに入れて算定され、NTT東西が接続約款の変更として申請する。審議会の答申によると、2026年度の接続料は同年1月にNTT東西が申請し、審議を経て3月に認可された。

架空メタルケーブル、耐用年数を8.2年短縮

改定で幅が大きいのは、設備を何年使えるとみなすかを示す「経済的耐用年数」だ。電柱に架けて張る架空メタルケーブルは37.5年から29.3年に短くなる。一方、地下に通す地下メタルケーブルは46.5年から47.6年に、ケーブルを通す管路と電線共同溝は67.6年から68.9年に延び、主配線盤と光ケーブル成端架は28.5年から28.8年になる。

保全の費用でも、メタル回線に関わる数値が下がる。メタルケーブルの加入者回線1回線あたりの施設保全費は104円から84円になる。メタルケーブル延長1キロあたりの施設保全費は47都道府県のうち38で下がり、東京都は6万9941円から6万8741円になる。設備の量では、き線管路の総延長が11万8639キロから11万6822キロに減る。

これに対し、IP網側の設備の保全費の比率には上がるものが目立つ。投資額に対する施設保全費の比率は、通話の制御などに使うSBCが0.10635から0.12180に、ENUMサーバが0.10293から0.11520に、DNSサーバが0.10237から0.11420に、共用コアルータが0.08813から0.09622になる。伝送装置は0.01917から0.01441に、電力設備は0.05016から0.03641に下がる。

土地は38都道府県で上昇、道路占用料は引き下げ

設備を置く土地の評価に使う「土地単価時点補正係数」は、38都道府県で上がり、9道県で下がる。東京都は1.2420から1.3468に、大阪府は1.0043から1.0478になる。道路に設備を置くための占用料の単価は下がり、電柱1本あたりは203円から193円に、管路1キロあたりは2万5946円から2万5193円に、とう道1キロあたりは61万8692円から60万730円になる。

主な数値の新旧は次のとおり。

項目 現行 改正案
架空メタルケーブルの経済的耐用年数 37.5年 29.3年
地下メタルケーブルの経済的耐用年数 46.5年 47.6年
メタルケーブル加入者回線当たり施設保全費 104円 84円
き線管路総延長 11万8639キロ 11万6822キロ
土地単価時点補正係数(東京都) 1.2420 1.3468
電柱1本当たり道路占用料 203円 193円
SBC施設保全費対投資額比率 0.10635 0.12180
2027年度接続料の算定に用いる数値の主な新旧出典: 総務省「第一種指定電気通信設備接続料規則の一部を改正する省令案」(別紙1)

撤去費用の比率も改める。投資額に対する撤去費用の比率は、機械設備が0.002598から0.0008633に下がる一方、市外線路は0.001931から0.003617に上がる。管理共通費の比率は、メタルIP電話が0.1297から0.1345に上がり、光IP電話は0.1556から0.1555とほぼ横ばいとなる。

LRIC方式とは 「最も効率的な網」を仮に組み立てる

接続料は、他社の利用者が電話をかけてきたときなどに、NTT東西の網を使った分として通信会社どうしで精算する料金だ。NTT東西の固定網は他社のサービスに欠かせないため、電気通信事業法の第一種指定電気通信設備制度で接続料や接続条件が規律されている。1997年にNTT(現NTT株式会社)の設備が指定され、1999年の再編でNTT東西が地位を引き継いだ。

審議会の第一次答申によると、接続料は当初、実際にかかった費用を基礎とする実績原価方式で算定していたが、それでは除けない非効率を除くため、2000年度からLRIC方式が導入された。LRICモデルは、ネットワークを「現時点で利用可能な最も低廉で最も効率的な設備と技術」で新たに構築した場合の費用を計算する技術モデルで、おおむね3年ごとに改修され、現在は第9次IP-LRICモデルが使われている。

モデルに入れる数値については、2021年9月の答申が「必要に応じて総務省において毎年度の接続料算定時に見直し、可能な限り最新のデータを用いることが適当」としていた。今回の省令案は、この毎年度の見直しを2027年度分について行うものだ。2026年度分の数値も、同じワーキンググループで見直されている。

2031年度に向けた接続料の見直しの中で

LRIC方式は、存廃が議論されている。NTT東西の加入電話は2024年12月までにIP網へ移り、メタル回線を使う「メタルIP電話」となった。答申によると、メタルIP電話に固有の設備の接続料原価は、2025年1月から2028年3月までLRIC方式で算定すると定められている。加入電話・ISDNの契約数は1997年度の6285万をピークに減り、2024年度は1253万だった。

審議会は9月の第一次答申で、通話の接続料を互いに払い合わない「ビル&キープ方式」を原則とし、全事業者一律に「遅くとも令和13(2031)年度に係る接続料から」適用することを目処に検討を続けるのが適当だとした(通話の「接続料」廃止へ 通信会社が互いに払い合う仕組み、2031年度をめどに全社一律で終了 情報通信審議会が答申)。LRIC方式については、遅くともその原則化にあわせて接続料算定への適用を廃止することに、おおむね賛同が得られたとしている。

答申には、立場の違いも記されている。NTT東西は、加入電話は2035年頃までにサービスの水準を保つのが難しくなる「維持・縮退フェーズ」に入っており、新たな設備の更改が見込まれない中で「LRIC方式は既にベンチマークとして機能しない」と主張した。ソフトバンクや楽天モバイルなどは、非効率の排除の見通しが示されない限り継続すべきだとした。接続政策委員会は10月27日の第86回会合で、ビル&キープ方式の原則化に向けた移行期間と、移行期間の音声接続料の算定方法について通信各社から意見を聴いた(通話の接続料廃止、いつから・どう移るか 携帯大手とNTTの主張割れる 総務省委員会)。

今回の改定案で架空メタルケーブルの耐用年数が短くなったことについて、総務省の発表は理由を示していない。LRIC方式を使い続ける間は、毎年度こうした数値を見直して接続料を算定することになる。