内閣府は10月30日、「国民生活に関する世論調査」の速報を公表した。今後、政府が力を入れるべきことを複数回答で尋ねると、「物価対策」が72.5%で最も多く、令和5年の調査から4年続けて首位になった。2位は「医療・年金等の社会保障の整備」の61.9%、3位は「景気対策」の57.0%。前回(令和7年8月調査)と比べると、「防災」が31.1%から37.5%に、「防衛・安全保障」が37.2%から40.8%に上がり、「税制改革」は39.4%から35.1%に下がった。

調査は全国の18歳以上で日本国籍を持つ5000人を対象に、令和8年9月3日から10月11日まで郵送法で実施した。回収は2719人、回収率は54.4%。速報値は10月2日までに届いた調査票で集計しており、回収数や回収率を含めて確報で修正される可能性がある。属性別の結果やクロス集計は確報で公表する。昭和32年度から原則毎年度行っている調査で、今回が69回目にあたる。

物価対策、令和3年の32.9%から7割台へ

政府への要望で「物価対策」を挙げた人は、令和3年9月の調査では32.9%で、このときは「医療・年金等の社会保障の整備」の67.4%が最も多かった。翌年の令和4年10月調査で物価対策は64.4%に上がり、社会保障の64.5%とほぼ並んだ。令和5年11月調査では68.1%となって初めて首位に立ち、令和6年8月の66.1%、令和7年8月の73.1%を経て、今回は72.5%だった。前回からわずかに下がったものの、4人に3人に近い水準が続いている。

政府への要望で「物価対策」を挙げた人の割合(%)

2040608032.973.172.53年5年7年8年
複数回答。調査月は年により異なる(3年9月、4年10月、5年11月、6・7年8月、8年9月)出典: 内閣府「国民生活に関する世論調査」(令和8年9月調査・速報)参考表
数値で見る(単位: %)
項目%
3年32.9
4年64.4
5年68.1
6年66.1
7年73.1
8年72.5

社会保障は前回の64.1%から61.9%、景気対策は58.6%から57.0%とそれぞれ下がったが、上位3項目の顔ぶれと順番は前回と変わらなかった。4位の「高齢社会対策」は48.5%から49.2%とほぼ同じだった。

防災と防衛が伸び、税制改革と雇用は下がる

5位以下では順位の入れ替わりが目立った。前回は7位だった「防衛・安全保障」は40.8%で5位に、11位だった「防災」は37.5%で7位に上がった。防災の伸びは、上位15項目の中で最も大きかった。「資源・エネルギー対策」も23.7%から25.5%、「財政健全化の推進」も24.1%から25.3%に上がった。

一方、前回6位の「税制改革」は35.1%で8位に下がった。「雇用・労働問題への対応」は31.3%から27.5%、「教育の振興・青少年の育成」は22.8%から20.2%だった。前回5位の「少子化対策」は、今回から選択肢の名前が「少子化対策・こども政策」に変わり、37.9%で6位だった(前回は41.7%)。

順位 項目 今回(令和8年9月) 前回(令和7年8月)
1 物価対策 72.5% 73.1%
2 医療・年金等の社会保障の整備 61.9% 64.1%
3 景気対策 57.0% 58.6%
4 高齢社会対策 49.2% 48.5%
5 防衛・安全保障 40.8% 37.2%
6 少子化対策・こども政策 37.9% 41.7%
7 防災 37.5% 31.1%
8 税制改革 35.1% 39.4%
9 治安 34.4% 35.2%
10 外交・国際協力 33.4% 33.9%
11 雇用・労働問題への対応 27.5% 31.3%
12 自然環境の保護・地球環境保全・公害対策 26.9% 28.1%
13 資源・エネルギー対策 25.5% 23.7%
14 財政健全化の推進 25.3% 24.1%
15 教育の振興・青少年の育成 20.2% 22.8%
政府に対する要望(複数回答)の上位15項目出典: 内閣府「国民生活に関する世論調査」(令和8年9月調査・速報)。前回の「少子化対策・こども政策」は「少子化対策」として尋ねた値

生活の満足度51.4%、所得と資産はなお6〜7割が不満

現在の生活に全体として「満足している」「まあ満足している」と答えた人は合わせて51.4%で、前回の50.0%とほぼ同じだった。「やや不満だ」「不満だ」は合わせて48.0%。令和3年の55.3%からみると、満足の割合は5割前後で推移している。

生活の側面ごとに見ると、満足の割合が高いのは「住生活」の66.3%、「食生活」の64.1%、「自動車、電気製品、家具などの耐久消費財」の58.6%だった。これに対し「所得・収入」に満足している人は35.7%で、63.7%が不満と答えた。「資産・貯蓄」は満足が29.6%、不満が70.0%で、7つの側面の中で最も不満が多かった。いずれも前回(所得・収入の満足34.5%、資産・貯蓄の満足29.2%)から大きくは変わっていない。

去年の今ごろと比べた生活の向上感では、「低下している」が31.6%で、前回の34.8%から下がった。「向上している」は5.4%、「同じようなもの」が62.6%だった。家庭の生活の程度を世間一般と比べて尋ねると、「中の中」が48.5%で最も多く、「中の下」が27.0%、「中の上」が14.1%だった。家計の動きを統計で見た記事に「8月の家計支出、実質3.1%減で9か月連続マイナス 旅行・電気代・大学授業料が押し下げ」がある。

悩みの首位は「自分の健康」に、老後の生活設計を上回る

日ごろの生活で悩みや不安を「感じている」「どちらかといえば感じている」人は合わせて77.3%だった(前回78.1%)。このうち2102人に内容を複数回答で尋ねると、「自分の健康について」が63.4%で最も多く、「老後の生活設計について」が60.9%、「今後の収入や資産の見通しについて」が59.7%と続いた。前回は老後の生活設計が63.9%で首位、自分の健康は62.7%で2位だったため、今回は上位2つが入れ替わった。「家族の健康について」は48.6%、「現在の収入や資産について」は48.3%だった。

日ごろの生活で充実感を「十分感じている」「まあ感じている」人は合わせて57.8%で、前回の59.2%からやや下がった。充実感を感じるのは「ゆったりと休養している時」が55.7%で最も多く、「趣味やスポーツに熱中している時」が48.4%、「家族団らんの時」が46.8%だった。休んだり好きなことをしたりする時間のゆとりが「かなりある」「ある程度ある」人は65.8%で、前回の63.9%を上回った。自由になる時間が増えたらしたいことでは「旅行」が60.7%で最も多かった。

これから先の家庭の生活については、「良くなっていく」が7.1%、「同じようなもの」が62.6%、「悪くなっていく」が28.9%だった。前回は良くなっていくが8.6%、悪くなっていくが30.5%で、悲観と楽観の双方がわずかに減り、「同じようなもの」が増えた。

「将来に備える」が46.5%に、心の豊かさ重視は51.1%

今後の生活で貯蓄や投資など将来に備えることに力を入れたいか、毎日の生活を充実させて楽しむことに力を入れたいかを尋ねると、「将来に備える」側(「どちらかといえば」を含む)が46.5%、「毎日の生活を楽しむ」側が52.6%だった。前回はそれぞれ43.9%と55.2%で、将来への備えを選ぶ人が増えた。

収入と自由時間のどちらを増やしたいかでは、「収入をもっと増やしたい」側が55.5%、「自由時間をもっと増やしたい」側が40.1%で、前回の53.8%と42.4%から収入を選ぶ人がやや増えた。今後の生活で特に力を入れたい側面は、「健康」が72.3%で最も多く、「食生活」の40.9%、「資産・貯蓄」の39.9%が続いた。

これからは心の豊かさやゆとりのある生活に重きを置きたい人は合わせて51.1%、まだ物質的な面で生活を豊かにしたい人は47.6%で、前回(52.2%と46.6%)とほぼ同じ割合だった。働く目的では「お金を得るために働く」が63.3%で最も多く、理想的な仕事では「収入が安定している仕事」が61.9%、「私生活とバランスがとれる仕事」が56.2%を占めた。

今回の結果は速報値で、属性別の傾向は確報で示される。