人事院は9月14日、国家公務員の留学の実施状況を公表した。令和7年度に新たに留学を始めたのは463件で、海外の大学院などへ行く「在外」が267件、国内が196件だった。前年度の450件から13件増えている。あわせて、留学中か終了後5年未満で辞めたために留学費用の返還(償還)義務が新たに生じた件数も公表され、令和7年度は94件だった。前年度の96件をわずかに下回った。
国家公務員の留学は、職員の同意を得たうえで職務命令として国が行う研修である。授業料や渡航費は国費で負担する。人事院は在外18研修、国内25研修が整備されているとしており、各府省がそれぞれの所管分野に合わせて職員を送り出している。
辞めれば返す 在職1か月ごとに60分の1ずつ減る
国費で学んだ直後に辞められては、費用を負担した意味がない。そのため、国家公務員の留学費用の償還に関する法律(平成18年法律第70号)は、留学中または留学終了後5年以内に離職した職員に、留学費用の全部または一部を返させると定めている。
返す額は辞めた時期で変わる。留学中に辞めた場合は、その時点までに国が支出した留学費用の総額をそのまま返す。留学を終えて戻ってきた後に辞めた場合は、在職期間が1か月増えるごとに返還額が60分の1ずつ減っていく。5年(60か月)勤めれば義務は消える。対象となる費用は授業料や旅費(航空賃、宿泊料など)である。
ただし、本人の意思によらない離職は除かれる。死亡による離職、公務災害・通勤災害で心身に故障が生じた場合や廃職・過員による分限免職、人事交流のための退職などは償還義務が課されない。在職期間の計算でも、私傷病による病気休職、停職、育児休業の期間は在職期間に含めない。
償還94件の内訳 在外は長期研究員33件、国内は防衛省が36件
令和7年度に償還義務が生じた94件は、在外48件と国内46件に分かれる。
在外48件のうち最も多いのは、原則2年間の「行政官長期在外研究員制度」で33件。次いで外務省在外研修が11件、財務省在外研究員制度が3件、金融庁在外研究員制度が1件だった。
国内46件は、内訳の偏りがはっきりしている。防衛大学校理工学研究科(前期課程)が13件、防衛医科大学校医学研究科が12件、防衛大学校総合安全保障研究科(前期課程)が4件、防衛大学校理工学研究科(後期課程)が3件、防衛省の国内一般大学留学が修士・博士それぞれ2件で、防衛省関係が合わせて36件を占めた。残る10件は行政官国内研究員制度(修士課程5件、博士課程1件)と、金融庁・財務省・国税庁の派遣制度が各1件ずつである。
防衛省は自衛官の人員確保に課題を抱えており、自衛官の充足率88.1% 定員24万7154人に対し現員21万7701人 最前線を担う「士」は57.8%にとどまる 令和8年版防衛白書という状況にある。国費で高度な教育を受けた層の離職が、償還件数という形でも表れている。
なお94件のうち85件は、令和8年5月1日までに償還を終えている。人事院は返還を求めた金額そのものは公表していない。
留学の開始件数は400件台後半で推移
新たに留学を始めた件数は、令和5年度476件、令和6年度450件、令和7年度463件と、400件台後半で推移している。償還制度ができた平成18年6月19日以降の累計は8,227件で、在外4,961件、国内3,266件だった。制度別では昭和41年度に創設された行政官長期在外研究員制度が累計2,768件と最も多く、令和7年度も138件を送り出している。
人事院は、令和8年度の新規採用職員へのアンケートで回答者の約8割が留学などの国際的な経験を希望したとして、留学を「公務の魅力の一つ」として発信する方針を示した。採用の段階では、国家公務員総合職の申込1万8281人 専門試験のない「教養区分」が48.8%で半数に迫る 専門試験を課す区分は1万740人から8078人へという変化が起きており、人材を集める手段として留学の位置づけは重くなっている。一方で、国家公務員の52.6%が転勤に否定的 10万7662人調査 「絶対に行きたくない」は持ち家が49.4%で最多 人事院が公務員白書で特集という調査結果もあり、働き方への希望と実際の人事運用の間には隔たりが残っている。
