厚生労働省は9月28日、毎月勤労統計調査の2026年(令和8年)7月分結果確報を公表した。物価の上昇分を除いた実質賃金は前年同月より2.0%増え、今年1月から7か月続けてプラスとなった。2025年は1月から12月まで12か月すべてマイナスだったため、1年以上続いた賃金の目減りからの反転が続いている。ただし先に出ていた速報の2.4%増からは下方修正された。
実質賃金とは 名目の賃金を物価指数で割ったもの
実質賃金は、実際に受け取った賃金(名目賃金)の指数を消費者物価指数で割って算出する。名目の賃金が3%増えても物価が3%上がっていれば、買える量は変わらない。その「買える量」の増減を見るための指標である。
毎月勤労統計調査は2種類の実質賃金を出している。ひとつは持家の帰属家賃を除く総合の消費者物価指数で割ったもので、賃金の購買力を示すため、実際に取引が行われている財・サービスに限定した指数を使う。持家の帰属家賃とは、持家を借家とみなした場合に支払われるであろう家賃のことで、実際にお金が動くわけではないため除いている。もうひとつは国際比較のため、帰属家賃を含む総合の指数で割ったものだ。
指数はいずれも2020年平均を100とする。7月の実質賃金指数(現金給与総額、帰属家賃を除く総合で実質化)は117.1で、前年同月比2.0%増。参考として示された消費者物価指数(帰属家賃を除く総合)の前年同月比は2.2%の上昇で、名目賃金の伸びがこれを上回った。総合の指数で割った場合は119.5で2.1%増となる。
調査は事業所規模5人以上を対象とし、今回は3万3047事業所に調査して2万5660事業所が回答した。回収率は77.6%である。
年でみると2022年から4年続けて減っていた
年ベースの実質賃金の前年比は、2021年が0.6%増でプラスだったのを最後に、2022年が1.0%減、2023年が2.5%減、2024年が0.3%減、2025年が1.3%減と4年続けて減少していた。厚労省が9月29日に公表したAIと協働する訓練を受けた労働者、日本の製造業は33.3%で米国の62.7%の半分 令和8年版労働経済白書 実質賃金は4年連続で減少でも、現金給与総額は5年連続で増えたのに実質賃金は4年連続で減ったことが指摘されている。
月次でみると、2025年は12月の0.1%減が最も小さく、5月の2.6%減が最も大きかったが、プラスになった月はひとつもない。これが2026年1月に0.7%増へ転じ、以降は2月2.0%増、3月1.4%増、4月2.0%増、5月1.6%増、6月2.2%増、7月2.0%増と続いている。名目賃金の伸びが3%台から4%台へ上がる一方、物価上昇率が2025年の3%台から2%台へ落ちたことが重なった結果だ。
名目は4.3%増 7月の金額が大きいのは夏の賞与が入るため
名目の賃金である現金給与総額は、1人平均43万4507円で前年同月比4.3%増だった。事業所規模30人以上では50万926円で5.1%増となる。
内訳は、基本給や家族手当、残業代を含む「きまって支給する給与」が30万974円で3.8%増、そのうち残業代などを除いた所定内給与が27万9911円で3.8%増。賞与などの「特別に支払われた給与」は13万3533円で5.3%増だった。7月の金額が他の月より大きいのは、この特別給与に夏の賞与が入るためである。夏の賞与そのものの水準は大手企業の夏のボーナス、平均97万6043円で3年連続の過去最高 伸び率は3.12%、2年前の6.29%から鈍化で伸びが鈍り始めている。
就業形態別では、一般労働者が57万6019円で4.3%増、パートタイム労働者が12万3263円で4.5%増。パートの時間当たり給与(所定内給与)は1455円で5.4%増と、全体より高い伸びだった。
なお、前年同月と同じ事業所だけを抜き出して比べる共通事業所ベースでは、現金給与総額が2.9%増、所定内給与が3.1%増にとどまる。全体の4.3%増との差は、調査対象の事業所が入れ替わる影響を含むかどうかの違いによる。賃金の実勢を見るときは、この2つを並べて見る必要がある。
主要国との比較では日本が最も高い伸び
厚労省は各国が公表した値を並べた比較も載せている。国際比較のため、いずれも帰属家賃を含む消費者物価指数で実質化した前年同月比である。2026年7月は日本が2.1%増で、米国が時給0.1%減・週給0.2%増、英国0.6%増、ドイツ1.6%増だった。4か国のうち日本が最も高い。
2025年の年ベースでは日本が0.8%減だった一方、米国は時給1.2%増、英国0.9%増、ドイツ1.9%増で、日本だけがマイナスだった。この順位が入れ替わったのは2026年に入ってからである。ただし米国と英国は季節調整済みの値、ドイツは各国のプレス発表の見出しの値をそのまま引用しており、調査の対象や算定方法は国ごとに異なる。
8月分の結果速報は10月に公表される予定で、その時点で7月分の数値がさらに改訂される可能性もある。
