国土交通省と中日本高速道路(NEXCO中日本)は10月30日、神奈川県の西湘バイパス(E84)石橋料金所の出口(熱海・湯河原方面)で、土日・祝日のETC通行料金を時間帯ごとに変える社会実験を11月28日から始めると発表した。渋滞が集中する午前7時から正午までは普通車で210円、交通量の少ない午前0時から7時までは110円、正午以降は150円とする。期間は2027年11月28日までの1年間の土日・祝日。特定の時間帯の料金を変える「ETC時間帯別料金」の社会実験は東京湾アクアラインに続く全国2例目で、NEXCO中日本としては初めてとなる。
午前7時〜正午は210円、早朝は110円に
対象は、ETCの無線通信で石橋料金所の出口(熱海・湯河原方面)を通る軽自動車等と普通車。中型車・大型車・特大車と、現金で支払う車は対象外となる。現金車は時間帯にかかわらず、最も高い210円を払う。
いまの石橋料金所の料金は、定価が普通車210円で、休日割引が適用される日は150円になる。実験ではこの休日の150円を基準に、時間帯で上げ下げする。
| 車種 | 現在(休日割引適用時) | 0時〜7時 | 7時〜12時 | 12時〜24時 |
|---|---|---|---|---|
| 軽自動車等 | 110円 | 80円 | 160円 | 110円 |
| 普通車 | 150円 | 110円 | 210円 | 150円 |
普通車でみると、午前7時前に通れば定価から約5割引の110円、正午以降は約3割引の150円になり、混雑する午前中は定価と同じ210円を払う。料金所の通過時刻が切り替わりの時刻にあたる場合は、午前0時〜6時59分が110円、7時〜11時59分が210円、正午〜23時59分が150円と、通過した時刻の料金が適用される。
適用されるのは石橋料金所の出口方面だけで、石橋料金所の入口や、国府津IC・橘本線の料金所には適用されない。橘・国府津ICの料金所を通る場合は、別に料金がかかる。休日割引が適用されない日(大型連休や年末年始など)も含め、すべての土日・祝日が対象になる。
ほかの割引との関係も決めた。休日割引の対象になる走行では時間帯別料金が優先される。深夜割引、障害者割引、二輪車定率割引の対象になる場合は、時間帯別料金と比べて割引額が最も大きいものが適用される。料金所の表示は、混雑時間帯に通過して210円になった場合も「割引」と出る。
休日の交通量は平日の約1.4〜1.5倍
10月29日に開いた第1回「西湘バイパス交通円滑化対策検討会」(座長・関東地方整備局横浜国道事務所長)の資料によると、石橋料金所の交通量は休日が平日の約1.4〜1.5倍あり、出口方面の渋滞回数は2021年以降増える傾向で、休日は平日の約2〜5倍にのぼる。通る車の約9割は軽自動車等と普通車が占める。
休日の出口方面は、午前7時ごろから料金所を先頭に渋滞が始まり、午前11時に交通量が最も多くなる。11時から正午が渋滞のピークで、速度は午後3時以降に回復する。1時間あたりの交通量が約600台を超えると、所要時間が大きく延びるという。資料は、私的な外出などで混む時間が偏っていると分析した。
渋滞は西湘バイパスの中にとどまらない。資料によると、休日は国道135号の小田原市内の下り方面でも、午前8時ごろから石橋料金所の合流部を先頭に、早川口交差点付近まで速度が落ちる。石橋料金所の合流部を先頭にした速度の低下は午前9時以降さらに悪化し、早川分岐部から小田原IC方面と小田原西IC方面まで延びる(2026年2月の休日の観測)。
料金の時間帯は、この交通量の分布に合わせて決めた。資料は、渋滞が特に多い午前7時から正午を「混雑」の時間帯とし、需要を移す余地がある午前0時から7時を「非混雑」の時間帯とした。混雑時の210円は「利用者の理解しやすさから」定価と同じ額にし、非混雑時の110円は「公平性を著しく損なわない」ことと休日割引の額を考えて決めたとしている。
1例目のアクアラインは渋滞の損失時間が8〜9分減少
時間帯別料金は、社会資本整備審議会の国土幹線道路部会が2021年8月の中間答申で「特定の時間帯や経路の料金の割引や割増を行う料金を本格的に導入すべき」と提言したのが出発点だ。答申は、まず大都市圏の主な渋滞区間で、時間帯や曜日をあらかじめ区切った料金を検討するよう求めた。検討会資料によると、同部会は2025年1月の会合で、休日に混む時間が偏る路線の例として東京湾アクアラインと西湘バイパスを挙げ、同年11月の会合では他地域での試行箇所を検討するとしていた。
1例目の東京湾アクアラインでは、2023年7月22日から土日・祝日の上り線(木更津→川崎)で社会実験が始まった。当初は普通車で通常800円の料金を、午後1時から8時までは1200円、午後8時から深夜0時までは600円とした。2025年4月からは差を広げ、普通車は午後1時から7時までが1600円、午前0時から4時と午後8時から深夜0時までが400円となり、下り線でも実験を始めた。
国交省などによると、アクアラインでは料金を上げた時間帯の交通量が減り、下げた時間帯は増えた。渋滞による最大の損失時間は、実験前と比べて土曜日で8分、日曜日で9分減った。検討会は「混雑の緩和に一定の効果が認められる」とした一方、効果を続けて分析・評価する必要があるとして、2026年度も同じ料金で実験を続けている。
料金の差は最大100円、周知に1か月
西湘バイパスの料金の差は、普通車で最大100円となる。アクアラインの普通車の最大1200円の差と比べると小さい。検討会資料に載った有識者の意見で、東京女子大学の二村真理子教授は「料金の価格差が小さいため、早い時間に混雑箇所を通過して、観光地に行きたくなるような工夫や周知方法の検討が必要」と指摘した。横浜国立大学の田中伸治教授は「ETCによる支払では課金に対する感度についても留意する必要がある」とし、効果と影響を分析して料金設定の見直しも検討するよう求めた。
NEXCO中日本は、運転する人に行動を変えてもらうため、実施前に1か月の周知期間を設ける。ポスターやチラシ、横断幕、看板、X・Instagram・YouTubeなどで知らせ、始まった後も広報を続ける。実施期間中に交通状況を踏まえて条件を変えることがあるとしている。
実験の効果は、国交省、NEXCO中日本、神奈川県、静岡県が分担して調べる。西湘バイパス本線では時間帯別の交通量、渋滞の回数と長さ、速度を、国道135号では渋滞長と速度を見る。小田原厚木道路や国道1号、東名・新東名へ車が移るかどうかや、交通事故の発生率の変化も調べる。観光への影響として、観光客数や地域に滞在する時間、観光施設の時間帯別の利用者数も分析の対象に入れた。
検討会の議事概要によると、10月29日の会合では実験の内容を確認し、今後効果を調査・分析して評価することを決めた。休日の朝に箱根・熱海方面へ向かう車が、午前7時前か正午以降にどれだけ移るのかが、1年間の実験で示されることになる。
