陸上に設けた水槽などで魚介類を育てる「陸上養殖業」の届出件数が、2026年1月1日時点で808件になった。水産庁栽培養殖課が集計し、今年1月6日に公表した。1年前の740件から68件増え、この間に110件が新たに届け出て、42件が廃止している。届出制が始まって3年目で件数は積み上がってきたが、2024年度の出荷数量は6907トンで、国内の養殖業の生産量およそ83万2000トンの0.8%程度にとどまる。

2023年4月に始まった届出制 無届けには10万円以下の罰金

届出制は、内水面漁業の振興に関する法律(平成26年法律第103号)に基づき、2023年4月1日から始まった。河川沿いなどで古くから営まれてきた淡水魚の養殖は統計が整っており、周辺環境への影響もおおむね把握されている。これに対し、多額の投資と高度な技術で陸地に海と同じような生育環境をつくる新しい方式は、飼育に使った水を排出することが周辺環境にどう影響するのか、知見が積み上がっていない。そこで養殖場の所在地や養殖方法を把握する必要があるとして、法律上の「届出養殖業」に位置づけられた。

対象になるのは食用の水産物を育てる養殖で、海水や淡水に塩分を加えた水を使うもの、水をろ過して繰り返し使う閉鎖循環式のもの、餌や糞などを取り除かずに排水するもののいずれかに当たる場合だ。種苗生産や、マス・アユ・コイなどを川の水を通すだけで育てる淡水の掛け流し式は対象外で、営むのに農林水産大臣の許可が必要なウナギ養殖も除かれる。

手続きは養殖場ごとで、開始の1か月前までに養殖場のある都道府県知事へ届出書を出す。さらに毎年4月30日までに、前年度の実績報告書を提出しなければならない。届け出をせず、または虚偽の届け出をした場合は10万円以下の罰金が科される。水産庁がいう「届出件数」は受理した開始届出書の数で、養殖場の数と同じ意味になる。

沖縄が195件で最多 海ぶどう・ヒラメ・クルマエビが上位

都道府県別では沖縄県の195件が最も多く、大分県53件、鹿児島県36件と続き、九州地方に多い。前年と比べて件数が増えたのは27都府県、減ったのは4県、増減がなかったのは16道県で、過半数の都府県で新規の参入があった。前年に増えたのは30都道府県だった。

養殖する種類ごとに数えた延べ件数は、クビレズタ(海ぶどう)が172件で最多。ヒラメ124件、クルマエビ117件、バナメイエビ107件が続く。延べ件数の合計は1332件で、前年の1183件から149件増えた。増え方が目立ったのはバナメイエビの20件増、クルマエビの10件増、シラヒゲウニの9件増、クロアワビの8件増、クビレズタの7件増だ。

延べ件数は、同じ養殖場で複数の種類を育てている場合に種類ごとに1と数えるため、届出件数の合計より多くなる。届出書に「今後養殖する予定」と書かれた種類も数に入るので、まだ実際には育てていない魚種が含まれることがある。

出荷量はヒラメが1742トンで最多 電気代と初期投資が壁

2024年度の出荷数量6907トンの内訳は、魚類5211トン、藻類740トン、その他947トン、貝類9トンだった。前年度は魚類4802トン、藻類657トン、その他919トン、貝類15トンで、合計は6392トンだった。

種類別ではヒラメが1742トンで最も多く、トラフグ1289トン、ニジマス1278トン、アユ766トン、クルマエビ701トンと魚類が上位を占めた。前年度から目立って増えたのはニジマスの487トン増、スジアオノリの103トン増、バナメイエビの94トン増である。

それでも国内の養殖業全体に対する比重は小さい。水産庁が6月5日に公表した令和7年度水産白書によると、2024年の国内の養殖業生産量は内水面を含めて約83万トンで、うち海面が約80万トン、内水面が約3万トンだった。養殖業の生産量は1988年の約143万トンを頂点に減少が続いている。白書は陸上養殖の課題として、初期投資と電力使用量が大きく、コスト削減と省力化が要ると指摘した。

なお白書は、陸上養殖の生産量と養殖業全体の生産量は集計の対象期間・魚種・地域が異なり、養殖業全体の数字には一部の陸上養殖の収獲量が含まれていないと注記している。0.8%という比率は目安である。

秋サケの来遊は686万尾から365万尾へ ヒラメが養殖共済の対象に

白書が陸上養殖を特集で取り上げた背景には、天然資源の振れ幅の大きさがある。北海道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場が6月24日に公表した資料によると、2025年に北海道へ来遊した秋サケは沿岸の漁獲数と河川の捕獲数を合わせて686万尾で、前年の39%にとどまり、平成以降で最も少なかった。2026年の全道の来遊予測は365万尾で、2025年実績の53.1%にあたる。海区別ではオホーツクが210万8000尾、日本海が39万尾、えりも以東が56万4000尾、根室が33万1000尾、えりも以西が25万1000尾と見込む。

天然のサケが減る一方、サケ・マス類は国内の需要が大きく輸入に頼る割合も高い。白書は、安定供給を目指す企業や地方公共団体が陸上養殖への関心を高めていると説明し、従来の漁業・養殖業と陸上養殖の両方で生産することが食料安全保障への貢献につながるとした。

制度面の後押しも動いた。不漁や大量死の損害を補う養殖共済は、陸上養殖ではこれまでウナギ養殖だけが対象だったが、2026年度から、陸上養殖で出荷量が最も多いヒラメが新たに加わった。水産庁は、加入する事業者の数がある程度そろい損害の数量も把握できるなど保険としての設計上の課題が解決した種類について、順次対象に加えるか検討するとしている。