総務省は10月30日、行政書士法施行規則の一部を改正する省令案をまとめ、意見募集を始めると発表した。行政書士試験の事務のうち、都道府県知事が指定試験機関に任せることのできなかった「合格の決定に関する事務」を、任せられるようにする。これにより、試験の施行に関する事務はすべて指定試験機関に委ねられるようになる。都道府県の事務負担を減らす狙いで、2025年12月23日に閣議決定された地方分権の対応方針に沿った見直しだ。施行は2028年(令和10年)4月1日の予定で、意見は10月31日から11月30日まで受け付ける。

試験の実施は知事の事務 合格の決定だけは任せられなかった

行政書士法第3条は、行政書士試験を総務大臣が定めるところにより毎年1回以上行うとし、試験の施行に関する事務は都道府県知事が行うと定めている。そのうえで第4条は、知事が総務大臣の指定する「指定試験機関」に試験事務を行わせることができるとし、任せた場合には知事自身はその事務を行わないとする。

ただし第4条には、任せられる事務から「総務省令で定めるもの」を除くという括弧書きがある。これを受けた施行規則第2条が「合格の決定に関する事務とする」と定めており、合格の決定だけは知事の手元に残る仕組みになっている。

現在、この指定試験機関として試験を担っているのが一般財団法人行政書士試験研究センターだ。同センターの2025年度事業報告書によると、センターは「都道府県知事の委任を受けて」試験の実施に関する事務を行っている。試験委員20人が問題を作り、試験委員会が採点したうえで、2025年12月20日に試験委員会で合否の判定会議を開いた。センターの試験結果難易度評価委員会も、科目ごとの年度間の難易度など「委任都道府県知事が行う合否の決定に資する事項」を審議している。2026年度の試験案内も、不正行為が判明した場合には合格発表の後でも「委任都道府県知事が合格の決定を取り消すことがある」と記す。問題の作成から採点、判定までをセンターが担い、合格の決定という最後の段階だけが知事の権限として残っている。

規則第2条を削除 帳簿と報告書の中身も改める

省令案は、合格の決定を委任の対象から外していた施行規則第2条を削除する。法第4条の括弧書きが指す「総務省令で定めるもの」がなくなるため、知事は試験事務のすべてを指定試験機関に行わせることができるようになる。

あわせて、指定試験機関が備える帳簿と、知事に出す報告書の記載事項を改める。帳簿には、受験者ごとの得点に加えて「合否の別」を記載し、合格した者の受験番号を公告した日(合格公告日)を新たに載せる。試験を実施した後に知事へ提出する報告書には、合格者数と合格公告日の2項目を加える。

報告書に添える一覧表も変わる。いまは受験者全員の受験番号、氏名、住所、生年月日、得点を載せた「受験者一覧表」を添付する決まりだが、案では合格者の受験番号、氏名、生年月日を載せた「合格者一覧表」に改める。知事が受け取る一覧表から、受験者全員の住所と得点が外れることになる。

指定試験機関に事務を任せたあとの監督の仕組みは、法律にすでに置かれている。試験事務に従事する役員と職員は、刑法などの罰則の適用で「法令により公務に従事する職員」とみなされ、試験事務で知り得た秘密を漏らすことも禁じられる。総務大臣と委任都道府県知事は、試験事務の適正な実施のため必要があれば、指定試験機関に報告を求めたり、立ち入って帳簿などを検査させたりできる。指定試験機関が行う試験事務に係る処分やその不作為については、総務大臣に審査請求をすることができると法は定めている。

地方からの提案を受けた閣議決定 「合格証への押印 約6千件/年」

見直しのきっかけは、地方公共団体が国に制度改正を求める「提案募集方式」だ。政府は2025年12月23日に「令和7年の地方からの提案等に関する対応方針」を閣議決定し、行政書士試験については「都道府県の事務負担の軽減を図るため、都道府県が指定試験機関に合格の決定に関する事務を行わせることを可能とすることについて検討し、令和8年中に結論を得る」とした。総務省は、今回の案がこの対応方針を踏まえたものだと説明している。

内閣府がまとめた対応方針の概要資料は、この項目を「自治体業務の簡素化・効率化」の一つに分類している。支障事例として「都道府県が行う試験問題作成等の事務は指定試験機関に委任可能とされているが、合格決定の事務のみ委任できない」と記し、効果の欄には「事務負担の軽減」とともに「合格証への押印 約6千件/年」と添えた。概要資料によると、2025年の提案は355件(前年257件)で、実現・対応の割合は88%だった(いずれも内閣府地方分権改革推進室による推計値)。

受験者は5万人台、2026年度の申込は6万8241人

指定試験機関が扱う試験の規模は大きい。センターの「試験結果の推移」によると、2025年度の試験は受験申込者6万3845人、受験者5万163人、合格者7292人で、合格率は14.54%だった。合格者は前年度の6165人から1127人増えた。2025年度の試験は11月9日に47都道府県の62試験場で行われ、合格者の受験番号は2026年1月28日に公示された。

年度 受験申込者数 受験者数 合格者数 合格率
2021年度 6万1869人 4万7870人 5353人 11.18%
2022年度 6万479人 4万7850人 5802人 12.13%
2023年度 5万9460人 4万6991人 6571人 13.98%
2024年度 5万9832人 4万7785人 6165人 12.90%
2025年度 6万3845人 5万163人 7292人 14.54%
行政書士試験の受験者数と合格者数の推移出典: 一般財団法人行政書士試験研究センター「最近10年間における行政書士試験結果の推移」

2026年度の試験は11月8日に行われる。センターが公表した都道府県別の受験申込者数は全国で6万8241人で、前年度の申込者数を4396人上回った。都道府県別では東京都が1万8096人と最も多く、大阪府6298人、愛知県4463人が続く。最も少ないのは高知県の202人だった。同じく士業の国家試験である社会保険労務士試験の結果は、社会保険労務士試験、合格率9.3%に上昇 前年の5.5%から倍近くに 合格者3961人は過去10年で最多にまとめている。

合格発表は2027年1月27日の予定で、合格者には2月12日に合格証を発送するとしている。今回の改正は2028年4月1日の施行予定のため、2026年度の試験は、いまの仕組みのまま知事が合格を決めることになる。

施行は2028年4月 意見は11月30日まで

総務省は意見公募の結果を踏まえて省令を改正する予定だ。施行日は附則で2028年4月1日と定めている。改正後も法第4条の「行わせることができる」という規定は変わらないため、合格の決定まで指定試験機関に任せるかどうかは、それぞれの都道府県知事が判断することになる。

意見は、電子政府の総合窓口(e-Gov)の意見提出フォームのほか、電子メール、郵送、FAXでも受け付ける。締め切りは11月30日必着で、郵送も同日必着とする。提出先は総務省自治行政局行政課。意見が1000字を超える場合は要旨を添えるよう求めている。意見提出者の名称を公表する場合があるが、個人で意見を出した人の氏名は含まないとしている。総務省は、提出された意見に個別には回答しないとしている。期間の終了後に届いた意見や、案以外についての意見は、提出意見として扱わないことがあるという。

省令案の公表文は「意見公募の結果を踏まえ、当該省令の改正を行う予定」と記すにとどめ、公布の時期は示していない。