厚生労働省は10月30日、令和6(2024)年度の国民医療費が48兆8100億円になったと公表した。前年度の48兆915億円から7185億円、1.5%の増加で、過去最高を更新した。人口1人当たりでは39万4300円となり、前年度の38万6700円から7600円、2.0%増えた。伸び率は前年度の3.0%から半分に鈍り、国内総生産(GDP)に対する比率は前年度の7.76%から7.60%に下がった。年齢別では65歳以上が29兆3491億円で全体の60.1%を占め、75歳以上の医療費の増加額は総額の増加額を上回った。
国民医療費とは何か 確定値で、健診や出産は含まない
国民医療費は、その年度に医療機関や薬局で、保険診療の対象となり得る病気やけがの治療にかかった費用を推計したものである。医療保険などからの給付に、国や自治体の公費負担と、患者が窓口で払う自己負担を合算する。医科の診療費のほか、歯科診療費、薬局の調剤費、入院時の食事・生活の費用、訪問看護の費用を含む。
一方、保険診療の対象とならない費用や、正常な妊娠・分娩、健康診断、予防接種など、傷病の治療以外の費用は含まない。厚労省には「医療費の動向」(概算医療費)という別の統計もあるが、こちらは速報値である。国民医療費は労働者災害補償保険(労災)などの医療費も対象とし、各制度の決算額に基づいて集計するため、厚労省は確定値と位置づけている。年度が終わってから集計がまとまるまでに1年半余りかかり、2024年度分は2026年10月の公表となった。
統計が始まった昭和29(1954)年度の国民医療費は2152億円だった。平成12(2000)年度に介護保険制度が始まり、それまで国民医療費に含まれていた費用の一部が介護保険へ移ったため、同年度以降はその分を含まない。
伸び率は1.5%に鈍化 GDP比は7.60%に下がる
国民医療費の推移(2017〜2024年度)(兆円)
数値で見る(単位: 兆円)
| 項目 | 兆円 |
|---|---|
| 17年度 | 43.1 |
| 18年度 | 43.4 |
| 19年度 | 44.4 |
| 20年度 | 43.0 |
| 21年度 | 45.0 |
| 22年度 | 46.7 |
| 23年度 | 48.1 |
| 24年度 | 48.8 |
国民医療費は令和元(2019)年度に44兆3895億円まで増えた後、2020年度に42兆9665億円へ3.2%減った。その後は2021年度に4.8%、2022年度に3.7%、2023年度に3.0%と伸び、2024年度は1.5%にとどまった。増加した年度の中では、0.8%だった平成30(2018)年度以来の低い伸びとなる。
GDPに対する比率が下がったのは、分母のGDPの伸びが医療費を上回ったためだ。表によると、2024年度の名目GDPは642兆4147億円で、前年度より3.7%増えた。医療費は1.5%増にとどまり、比率は7.60%となった。比率が7.6%台になるのは、7.61%だった2018年度以来である。
診療の種類別では、医科診療医療費が34兆8941億円で全体の71.5%を占めた。内訳は入院が18兆3602億円、入院外が16兆5339億円である。歯科診療医療費は3兆4059億円、薬局調剤医療費は8兆5742億円だった。前年度からの伸びは医科が1.0%、歯科が3.4%、薬局調剤が1.4%で、歯科の伸びが最も大きかった。訪問看護医療費は6785億円だった。
65歳以上が6割、75歳以上の増加が全体を上回る
年齢階級別では、0〜14歳が2兆6521億円(構成割合5.4%)、15〜44歳が5兆9712億円(同12.2%)、45〜64歳が10兆8375億円(同22.2%)、65歳以上が29兆3491億円(同60.1%)だった。75歳以上は20兆1117億円で、全体の41.2%にあたり、前年度の39.8%から上がった。
75歳以上の医療費は前年度の19兆1503億円から9614億円増えた。国民医療費全体の増加額7185億円を上回っており、75歳未満の医療費は合わせて2429億円減ったことになる。0〜14歳は前年度の2兆7688億円から1167億円減った。
1人当たりの額は年齢とともに大きく開く。65歳未満の22万2300円に対し、65歳以上は80万9800円で約3.6倍、75歳以上は96万8000円だった。0〜14歳の1人当たりは19万1800円で、前年度より1.8%減った。
75歳以上の医療を受け持つ後期高齢者医療制度の状況は、75歳以上の一人当たり医療費97万1531円 後期高齢者医療の総額は19兆4830億円にで、別の統計(後期高齢者医療事業状況報告)から詳しく見ている。
医科診療医療費を主な傷病別に見ると、「循環器系の疾患」が6兆3357億円(構成割合18.2%)で最も多く、「新生物<腫瘍>」が5兆2937億円(同15.2%)で続いた。65歳未満では新生物が、65歳以上では循環器系の疾患が最も多い。
財源は保険料が半分 後期高齢者医療の給付が4.3%増
| 財源 | 金額 | 構成割合 | 前年度比 |
|---|---|---|---|
| 公費(国庫) | 11兆9975億円 | 24.6% | 0.6%増 |
| 公費(地方) | 6兆2703億円 | 12.8% | 2.7%増 |
| 保険料(事業主) | 10兆6657億円 | 21.9% | 1.0%増 |
| 保険料(被保険者) | 13兆9014億円 | 28.5% | 2.4%増 |
| 患者負担 | 5兆7411億円 | 11.8% | 1.0%増 |
出典: 厚生労働省「令和6(2024)年度 国民医療費の概況」表3
誰がお金を出したかを示す財源別では、保険料が24兆5671億円で全体の50.3%、公費が18兆2678億円で37.4%を占めた。保険料のうち、加入者本人が払う被保険者分が13兆9014億円で、勤め先が払う事業主分の10兆6657億円を上回る。前年度からの伸びは被保険者分が2.4%、事業主分が1.0%だった。公費では地方が2.7%増えたのに対し、国庫は0.6%増にとどまった。
医療費を支払った制度の区分別では、医療保険等給付分が21兆4480億円(構成割合43.9%)、後期高齢者医療給付分が17兆9432億円(同36.8%)、患者等負担分が5兆9656億円(同12.2%)、公費負担医療給付分が3兆4532億円(同7.1%)だった。
前年度から増えたのは後期高齢者医療給付分で、7360億円、4.3%増えた。医療保険等給付分は0.3%減り、なかでも国民健康保険は2.9%、そのうち70〜74歳の高齢者分は5.8%減った。会社員らが入る被用者保険では、加入者本人の分が3.7%増えた一方、扶養家族の分は1.3%減った。
都道府県で1.44倍の差 高知が最も高く埼玉が最も低い
患者の住所地による都道府県別では、総額は東京都が5兆1260億円で最も多く、大阪府の3兆7637億円、神奈川県の3兆3387億円が続いた。最も少ないのは鳥取県の2173億円で、島根県の2803億円、福井県の2882億円の順だった。
人口1人当たりでは、高知県が50万2600円で最も高く、鹿児島県の47万8300円、徳島県の47万6900円が続いた。最も低いのは埼玉県の34万9300円で、千葉県の35万5000円、滋賀県の36万円の順だった。最も高い高知県は最も低い埼玉県の約1.44倍にあたる。
大都市圏では、総額が最も多い東京都の1人当たりは36万1500円で全国平均の39万4300円を下回り、大阪府は42万9800円だった。北海道は45万7200円、沖縄県は36万7300円である。
差の中身を統計表で見ると、入院医療費の比重の違いが大きい。高知県は国民医療費3297億円のうち入院医療費が1597億円で、48.4%を占める。全国平均の37.6%を大きく上回り、入院外の889億円の2倍近い。最も低い埼玉県は入院医療費の割合が35.2%、東京都は32.8%で、どちらも入院外の方が多かった。
2024年度の数字からは、総額の伸びが鈍るなかでも、75歳以上の医療費と、それを賄う後期高齢者医療の給付が増えている姿が読み取れる。財源の半分を占める保険料のうち、加入者本人の負担は事業主分より速く伸びた。高齢者の医療費を誰がどの割合で支えるのかを考えるうえで、基礎となる数字である。
