総務省は10月30日、福井県が原子力発電所の設置者に課している法定外普通税「核燃料税」の更新について、総務大臣が同日付で同意したと発表した。いまの条例は11月9日限りで失効するため、県は新しい条例を制定しており、11月10日に施行する予定だ。課税する期間は2031年11月9日までの5年間。課税の3つの柱である価額割・出力割・搬出促進割の税率をすべて引き上げ、平年度の収入見込みは約192億円になる。
3つの税率をすべて引き上げ
核燃料税は、原子炉を設置する電力会社に、3つの物差しで課税する。総務省が公表した概要と、県報に載った条例によると、新しい税率は次のとおり。
1つ目の「価額割」は、原子炉に核燃料を入れたときに、その核燃料の価額に課す。税率は100分の8.5から100分の9.0に上がる。
2つ目の「出力割」は、原子炉を設置して行う運転と廃止に係る事業に、熱出力に応じて3か月ごとに課す。1000キロワットあたり5万1200円から6万5000円に上がり、1年に直すと20万4800円から26万円になる。廃止措置中の原子炉は半額とする扱いは変えない。新条例は、廃止措置計画の認可を受けた月の翌月から半額になると定め、施行の時点ですでに認可を受けている原子炉にも半額を当てはめる経過措置を置いた。
3つ目の「搬出促進割」は、原発の敷地内に5年を超えて貯蔵されている使用済み燃料の重量に応じて、3か月ごとに課す。1キログラムあたり375円から500円に上がる。1年に直すと1500円から2000円になる。
| 区分 | 何に課すか | 前の5年間 | 11月10日から |
|---|---|---|---|
| 価額割 | 原子炉に入れた核燃料の価額 | 100分の8.5 | 100分の9.0 |
| 出力割(3か月ごと) | 原子炉の熱出力1000キロワット | 5万1200円 | 6万5000円 |
| 搬出促進割(3か月ごと) | 5年を超えて貯蔵する使用済み燃料1キログラム | 375円 | 500円 |
| 課税期間 | 2021年11月10日〜2026年11月9日 | 2026年11月10日〜2031年11月9日 | |
| 収入見込み(平年度) | 153億6600万円 | 約192億円 |
出典: 総務省「福井県『核燃料税』の更新」概要(2021年10月1日)、同「福井県『核燃料税』の新設(更新)」概要(2026年10月30日)
出力割の引き上げ幅は約27%、搬出促進割は約33%になる。
税収見込みは154億円から192億円に
県の総務部副部長は6月19日の知事記者会見で、計画上の税収は「今期154億円のところ、次期は192億円になる見込み」と説明し、これは「全ての原子力発電所が稼働した場合の計画額」だと述べた。総務省が2021年の前回更新の際に公表した概要でも、平年度の収入見込みは153億6600万円だった。
実際の税収は計画額を下回っている。総務省の「法定外税の実施状況」によると、福井県の核燃料税の2024年度決算額は127億2700万円だった。
知事は同じ会見で、引き上げの理由を「財政需要の増大が主な課題」と説明した。資材費や労務単価の高騰に加え、人口減少対策、交流人口の増加に向けた産業振興、安全・安心のためのインフラ整備の重要性が高まっていることを挙げた。
県は1976年に、全国に先駆けて核燃料税を設けた。総務省の一覧によると施行日は1976年11月10日で、それ以来5年ごとに条例を作り直している。今回の条例も、施行から5年を経過した日に効力を失うと定めている。
搬出促進割と使用済み燃料
搬出促進割は、敷地内に長くとどまる使用済み燃料に課す。知事は6月の会見で、県は1996年ごろから、発電所内での保管が長期化して貯蔵プールが満杯になる懸念があったため、事業者に県外への搬出を求めてきたと説明し、今後も同じ考えで臨む必要があると述べた。
会見では記者から、最終処分場の場所が決まらず再処理工場も動いていない中で、課税によって搬出を促せるのかという質問が出た。知事は今回の引き上げの目的を「財政需要の増大」と答え、税の名前の由来については過去の経緯を確認して示すとした。県の税務課は「搬出すればするほど事業者の税負担は減っていく」仕組みで搬出を促していると補足した。
前回の2021年の更新では、引き上げの理由に搬出が明記されていた。総務省が同意の審査で示した資料によると、県は協議書で「現状では使用済燃料の県外搬出は進んでおらず、早期の搬出をより強力に促すため」に搬出促進割の税率を年1キログラムあたり1500円に引き上げると説明していた。出力割の引き上げは、人口減少の中で立地地域が消費地とともに発展するための基盤整備などの財源を安定して確保するためとしていた。今回、知事が会見で挙げた引き上げの主な理由は財政需要の増大で、搬出の促進には触れなかった。
電気料金への影響と市町への配分
核燃料税は電力会社に課す税だが、電気料金に上乗せされれば、最終的に負担するのは電気の利用者になる。会見では、福井県の原発で作った電気を使う関西の消費者が負担することになるという質問も出た。
県の総務部長は、料金に反映するかどうかは電力会社の考え方だと答えた。総務部副部長は、電力自由化によって転嫁するかどうかは事業者の判断になると説明した。そのうえで、全額が反映された場合でも「年間、標準的な家庭で100円程度の増額」と試算しており、住民への影響は限られるとの見方を示した。
2021年の前回更新の際、総務省の審査資料は、税の負担が特に大きい納税者として関西電力と日本原子力発電の2社を挙げていた。平年度の負担は関西電力が年約129億円、日本原子力発電が年約23億円で、電気料金に転嫁された場合の影響は県の試算で標準家庭1世帯あたり月36.6円とされた。総務省は、両社の売上高や利益の規模を踏まえ、住民の負担が著しく重くなるとは言えないと判断していた。今回の更新について、同じ審査の資料は確認できていない。
税収の使い道をめぐっては、立地市町から県に配分の見直しを求める要望が出ている。知事は会見で、条例が県議会で可決された後に、市町の意見を聞きながら配分を検討すると述べた。条例は7月21日に県議会で可決された。
法定外税と総務大臣の同意
地方税法が定める税目以外に、自治体が条例で独自に設ける税を「法定外税」という。使い道を限らない「法定外普通税」と、使い道を定める「法定外目的税」がある。新設や税率の引き上げには、総務大臣との協議と同意が必要だ。総務大臣は、国税や他の地方税と課税標準が同じで住民の負担が著しく重くなる場合、自治体間の物の流通に重大な障害を与える場合、国の経済施策に照らして適当でない場合のいずれかに当たると認めない限り、同意しなければならない。
福井県は7月21日に県議会で条例案が可決された同じ日に総務大臣と協議し、10月30日に同意を得た。
総務省のまとめでは、2024年度の法定外税の決算額は全国で935億円で、地方税収の0.20%にあたる。このうち法定外普通税は611億円。核燃料税は福井県のほか、愛媛県、佐賀県、島根県、静岡県、鹿児島県、宮城県、新潟県、北海道、石川県が課しており、決算額は計313億円だった。福井県の127億円は、その約4割を占める。地方税収全体の動きは「地方税収、初の50兆円超え 2025年度決算見込み、前年度比5.2%増 個人住民税が2桁増」で伝えている。
他県と比べると、愛媛県と佐賀県の出力割はいずれも3か月で1000キロワットあたり5万9000円で、福井県の新税率6万5000円はこれを上回る。
