国土交通省は9月18日、10月16日に施行される改正地域交通法(地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律、令和8年法律第35号)に合わせ、関係する省令と基本方針を公布し、モビリティ・データの活用に関する指針を公表した。柱の一つが「公共ライドシェア」と呼ばれる自家用有償旅客運送の見直しで、実施主体に都道府県、一部事務組合、広域連合などを加える。
市町村だけでは担えなくなった「公共ライドシェア」
公共ライドシェアは、バスやタクシーが確保できない地域で、市町村やNPO法人などが自家用車を使って有償で住民を運ぶ仕組みを指す。道路運送法に基づく「自家用有償旅客運送」の登録を受けて実施するもので、営業許可を持つタクシー会社が運ぶ通常の運送とは制度が別になっている。
国交省が改正の理由に挙げたのは、担い手である市町村側の事情だ。同省の資料は「自家用有償旅客運送の主な実施主体である市町村は、人員・財源不足の課題を抱える一方、住民の移動は市町村域を越えて広域化している」と指摘し、市町村の枠を超えた共同化・協業化を促すために実施主体を広げると説明している。
今回の道路運送法施行規則の改正では、実施主体の拡大に加え、地域公共交通会議の任意の構成員に「連携促進団体」を追加したほか、福祉有償運送で運べる旅客の範囲を明確にし、運行管理の方法も見直す。
路線バスの廃止は9年で1万5804キロ
背景には、地域の足そのものが細っている実情がある。国交省の補足説明資料によると、路線バスの廃止キロ数は2016年度(平成28年度)の883キロから2024年度(令和6年度)は3887キロへ増えた。2023年度の2496キロからも1年で1391キロ増えている。2016年度から2024年度までの9年間の合計は路線バスが約1万5804キロ、鉄軌道が約533キロにのぼる。
運ぶ人も減っている。バスの運転者数は2016年度の13万3千人から2023年度は11万4千人となり、1万9千人減った。一方で、免許の返納や学校・病院の統廃合により、移動そのものの必要性はむしろ増しているというのが同省の見立てだ。
自治体の側にも余力がない。2024年度の地域交通行政調査では、人口5万人未満の自治体の84%が地域交通の専任担当者を置いていなかった。
国交省は、公共交通で移動できない「交通空白」を全国で約2500地区・地点と見込み、2025〜2027年度(令和7〜9年度)を集中対策期間として解消に取り組む方針を掲げている。さらに、交通空白に陥らないよう先手を打つ必要がある「要モニタリング」の地区・地点が約1800あるとしている。この方針は政府、令和8年版「交通政策白書」を閣議決定 地方の「交通空白」解消が焦点 自動運転や公共ライドシェア活用 全国2500か所を対象にでも示されていた。
複数の事業者で運転者や車両を持ち寄る新事業
改正法では、新たに「自動車地域旅客運送サービス再構築事業」を設けた。バス・タクシー・公共ライドシェアの交通空白について、地方公共団体が運転者や車両の融通をあっせんし、運送の主体とは別の交通事業者や、学校・病院・福祉施設・商業施設の送迎を行う事業者から協力を得て運送を提供する枠組みだ。国交省は、こうした送迎サービスの提供者を「施設利用者用運送サービス提供者」と位置づけ、事業への協力を努力義務とした。
9月18日に公布された地域公共交通活性化再生法施行規則の改正は、この新事業について事業者の選び方、実施計画に書く事項、同意を得るべき相手などを定めるものだ。独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構による出融資も措置された。
離島などの船についても、船舶検査による運休や減便で生活に支障が出るのを避けるため、他の事業者から代替運航や船舶の貸し渡しの協力を得る「海上運送利便確保事業」を創設した。
データを出しやすくする指針も同時に公表
同じ9月18日には「モビリティ・データの活用推進に向けたガイドライン」も公表された。利用者数や運行実績といったデータは、地域交通の計画づくりに欠かせない一方、事業者側には提供をためらう事情がある。指針は、自治体などがデータを集めやすくし、持っている側も安心して出せる環境を整えることを狙う。
改正法では、自治体が主導して事業実施計画をつくる事業について、自治体から情報提供などの協力を求められた交通事業者は、正当な理由がある場合を除いて応じなければならないとも定めた。
あわせて公布された基本方針の変更では、地域の輸送資源をフルに活用すること、自治体の機能や役割を補い強めること、モビリティ・データを使うことに関する記述が加わった。制度の枠組みは10月16日から動き出すが、実際に地域の足が戻るかどうかは、都道府県や広域連合が新たな担い手として手を挙げるかにかかる。
