政府は10月1日午後4時45分から、第8回日本成長戦略会議を総理大臣官邸で開いた。7月21日に閣議決定した「日本成長戦略」で打ち出した『「強く豊かな日本」投資枠』のうち、経済安全保障上とくに重要な分野を特別会計で別枠管理する方針が示された。複数年度分の財源を先に確保したうえで、償還財源の裏付けのある「つなぎ国債」を発行し、必要な資金を前倒しで調達する。
高市首相は会議のまとめで「複数年度で十分な財源を確保することで、複数年度にわたる大規模かつ計画的な公的支援にコミットし、投資の予見可能性を高めるため、別枠管理される特別会計を設置します」と述べ、「来年度予算から政策を実行するため、関係大臣は、必要な法的措置等の検討を加速してください」と指示した。
つなぎ国債は復興債・GX債に続く型
「つなぎ国債」は、将来入ってくる償還財源のあてが決まっている場合に、それを裏付けとして先に発行する国債を指す。会議に出された資料3は、先例として3つを挙げた。東日本大震災からの復興財源が確保されるまでのつなぎとして措置された「復興債」、GX推進に向けた成長志向型カーボンプライシングの枠組みで発行される「脱炭素成長型経済構造移行債」、そして「AI・半導体産業基盤強化フレーム」における「先端半導体・人工知能関連技術債」である。
根拠は同じ7月21日に閣議決定した骨太方針2026で、「追加的な税外収入を中心として複数年度の財源を確保した場合には、償還財源の裏付けのある『つなぎ国債』を発行可能とすることにより、必要な資金を前倒しで調達可能とする」と書かれていた。今回はこの仕組みを投資枠に当てはめ、特別会計という器を使って一般会計と切り離して管理する。資料3は、つなぎ国債の発行、特別会計の設置、支援措置の実施に必要な法的措置を「関係省庁が連携して検討する」としている。
対象は「経済安全保障上、特に重要な分野など」
資料3は特別会計の対象を、国内民間設備投資や潜在成長率を大きく引き上げる観点から政府が支援すべき事業で、経済安全保障上重要な分野に関わるものと定めた。基本条件として、一定期間の支援により支援対象の技術・分野の収益化につながること、民間投資の呼び水となること、自律性・不可欠性の確保につながることなど、政策的推進の根拠が明確になっていることを求めている。
投資枠そのものは令和9年度予算で新しく作られた枠で、令和9年度の概算要求143.1兆円 新設の「強く豊かな日本」投資枠に12.2兆円のとおり、一般会計での要求額は約12.2兆円、GXとAI・半導体に関するエネルギー対策特別会計の分を加えると約14.2兆円に上る。財務省が9月4日に公表した査定方針は、このうち経済安全保障上重要な投資について「特別会計で別枠で管理することとなるが、一般会計計上分と同様に、的確に精査する」と記している。
実行計画は年末 17分野・62製品から重点を絞る
会議ではもう一つ、「日本成長戦略実行計画」を年末までに策定する方針も示された。2030年頃までの今後5か年を集中投資期間と位置づけ、17の戦略分野と62の製品などのうち「足元の収益源」「今後の稼ぎ頭」「経済安全保障の強化」の観点から重点分野を選び、その投資額を示す「投資事業計画」と、投資枠を使う複数年度の予算事業を盛り込む。政府予算案の決定に合わせて固める。
資料1は背景として、春季労使交渉で3年連続の5%台の賃上げが実現し、2025年度の民間企業設備投資が年128兆円と過去最高水準に達したことを挙げ、日本経済は「この変化の兆しを一時的なものに終わらせるのか、持続的な好循環へと発展させ、『成長型経済』への移行を確実なものとできるかの分岐点にある」とした。補正予算に頼らず当初予算で措置する方針は、前日の経済財政諮問会議、令和9年度予算を「責任ある積極財政元年」にでも民間議員が求めていた。
建設の人手不足と電力・AIが当面の課題
あわせて示された「当面の検討課題(案)」は、投資環境整備として4点を挙げた。建設供給力不足への対応、成長投資や企業の事業再構築を支える資金供給力への対応、AI戦略とAI社会実装への対応、そしてデータセンターや半導体工場の拡大に伴う電力需要の増加を踏まえた電力インフラの確保である。
首相は建設分野の人手不足について、尾﨑副長官の下に国土交通省と経済産業省を中心とする「政府横断の検討の場」を創設し、年末までに具体的な政策パッケージをまとめるよう求めた。古川大臣には、赤澤大臣・中司大臣とともに、信頼できるAIで社会全体を駆動する「AX」の具体像、AXに対応した規制・制度改革を進めるための原則、社会実装を加速するアクションプランの3点を年末までにまとめるよう指示した。
