農林水産省は9月28日、有機農業の推進に関する基本的な方針を変更し、官報で公表した。国内で売られる有機食品のうち国産が占める割合は2017年の約60%から2024年には約53%に下がっており、方針はこれを2030年に84%まで引き上げることを施策目標に掲げた。市場が広がる一方で国内の生産が追いつかず、伸びた分を輸入が埋めている構図を、国が公式に認めた形になる。

基本方針は有機農業推進法(平成18年法律第112号)6条1項に基づき農林水産大臣が定めるもので、今回は簗和生農相の名で公表された。変更は2020年以来となる。同法6条4項は、方針を定めたり変更したりしたときは遅滞なく公表しなければならないと定めている。

市場は8年で倍近くに、国産シェアは逆に低下

国内の有機食品市場の推計額は、2017年の1850億円から2025年には3595億円に拡大した。食料の消費者物価指数で物価上昇分を補正すると2766億円で、それでも8年で1.5倍になった計算だ。方針が2030年の需要見通しとして置いた3280億円に、名目額ではすでに届いている。

ところが国産が占める割合は、同じ期間に約60%から約53%へ下がった。方針は「国産有機農産物の格付数量は増加傾向にあるが、生産拡大を上回るペースで国内の有機食品市場が拡大していると推測される」と説明している。作る量自体は増えているのに、需要の伸びのほうが速いため、割合では負けているということだ。目標の84%は、2024年の約53%を6年で1.6倍に引き上げる水準にあたる。

輸出は事情が異なる。有機同等性の仕組みなどを使った輸出の推計額は2017年の175億円から2025年に265億円へ伸び、方針が2030年の見通しとして置いた210億円をすでに上回っている。方針は茶の輸出拡大を理由に挙げた。

耕地の0.9%、2050年目標は25%

生産側の目標も示された。有機農業の取組面積は2017年の約2万3500ヘクタールから2024年には約3万9800ヘクタールに増えた。方針は2030年に6万3000ヘクタールとする施策目標を設定した。

ただ、これを耕地面積全体と比べると2024年時点で0.9%にすぎない。2021年の「みどりの食料システム戦略」が掲げた「2050年までに耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%(100万ヘクタール)」という目標に対し、方針自身が「目標達成に向けて飛躍的な面積の拡大が必要である」と記した。

担い手も細い。有機農業者数は2009年の1万1800人から2024年に約1万2700人と、15年でわずかな増加にとどまる。方針は2030年に3万6000人とする取組目標を置いた。一人当たりの平均取組面積は増えており、方針は経営規模の拡大が進んでいると推測している。

消費者の利用は物価高で後退

需要側の指標は、いったん伸びてから戻っている。有機食品を週1回以上利用する消費者の割合は2017年の17.5%から2022年には32.6%まで上がったが、2025年には17.4%と8年前の水準に戻った。方針は、新型コロナウイルス感染症の影響で利用が広がったものの、近年の物価上昇などで減ったとみている。2030年の取組目標は25%だ。

食料安全保障の観点も前面に出た。方針は、輸入依存度の高い化学肥料を使わない有機農業は「国際情勢に左右されにくい農業生産体制の確立に資する」として、食料の安定確保の面からも重要だと位置づけた。国内で作って国内でまかなう度合いを上げるという発想は、大手事業者に米の常時保有を義務づけた米の民間備蓄、大手事業者に常時保有を義務化 基準保有量は前年の出荷量の10%が上限 全社の合計は国の備蓄目標のおおむね25%までと同じ流れにある。

品目ごとに異なる壁

方針は主な品目別に課題を整理した。水稲は栽培技術が一定程度開発されている一方、除草に手間がかかり、温暖化や異常気象で防除の難しい病害虫が広がっている。麦・大豆は加工食品の原料として需要が高いが輸入の割合が大きく、有機JAS制度に対応した加工処理施設の確保が課題という。野菜は病害虫や雑草を防ぐ技術体系が確立していない品目が多く供給が安定しない。果樹はかんきつ類が中心で、慣行栽培より収量や見た目の品質を保ちにくい。茶だけは海外需要の高まりで生産・輸出とも堅調に伸びている。

産地づくりでは、市町村が地域ぐるみで取り組む「オーガニックビレッジ」を軸に据える。2022年の開始以降、2025年12月までに154市区町村が取り組んだ。方針は新たに、都道府県ごとに案件をまとめる拠点として「農林水産地方創生センター」を設けることや、産地間・産地と消費地を結ぶ「オーガニックブリッジ」による広域流通の促進を挙げた。

目標年度は2030年で、達成状況は随時確認する。方針は5年後をめどに施策の効果の検証を含む最終評価を行い、見直しを検討するとしている。都道府県には有機農業推進法7条1項に基づく推進計画の改定を働きかける。