農林水産省は10月20日、2027年3月19日に開幕する国際園芸博覧会「GREEN×EXPO 2027」の開幕日に予定されている航空自衛隊ブルーインパルスの展示飛行で、国産のSAF(持続可能な航空燃料)を使うと発表した。燃料の原料には家庭から出る廃食用油を充て、12月9日から2027年2月28日まで回収キャンペーンを行う。経済産業省、国土交通省、防衛省と、廃食用油の回収を進める民間プロジェクト「Fry to Fly Project」が連携する。
開幕日の展示飛行に国産SAF 使用量は示されていない
発表によると、農水省は2027年3月19日の開幕日に予定されている展示飛行で国産SAFを使うべく、関係省庁などと連携して取り組んでいる。集めた廃食用油を国内のSAF製造工場で国産SAFに加工し、展示飛行で使うところまでをつなげる。農水省は狙いを、航空分野の脱炭素化と国内での資源循環の促進と説明している。
展示飛行で使うSAFの量、どの製造工場で加工するのか、飛行の経路や時間帯は、今回の発表資料には記載がない。発表の時点では「使用するべく……取り組んでいます」という書き方で、燃料の調達や規格適合の作業がこれから進む段階にあることを示している。問い合わせ先は農水省大臣官房環境バイオマス政策課のバイオ燃料班である。
連携先の「Fry to Fly Project」は、国内の資源循環による脱炭素社会の実現に向けて、SAFの原料となる廃食用油の回収活動などを通じて機運を高めることを目的としたプロジェクトだ。農水省の資料では333の企業・自治体・団体などが参加し、日揮ホールディングス株式会社が事務局を務めている。
ブルーインパルスは航空自衛隊の飛行展示を担う部隊で、オリンピックや国民体育大会などの式典に合わせた展示飛行で知られる。式典の演出に使う燃料そのものを政策の対象に据えた点が、今回の発表の新しさである。
回収は12月9日から2月28日まで 持ち込み場所は未公表
回収キャンペーンの対象は、家庭から出される使用済みの食用油である。回収期間は2026年12月9日(水)から2027年2月28日(日)までの約2か月半で、展示飛行の約3週間前に締め切る日程となっている。
一方で、どこに持ち込めるのかは今回の発表では決まっていない。農水省は、回収場所などの詳細を回収開始の12月9日までに同省のホームページとFry to Fly Projectのホームページで知らせるとしている。油を出そうと考える家庭にとっては、12月の初めまで待つことになる。
| 日付 | 予定 |
|---|---|
| 2026年10月20日 | 農水省が国産SAFの使用と回収キャンペーンを発表 |
| 2026年12月9日まで | 回収場所などの詳細を農水省・プロジェクトのHPで公表 |
| 2026年12月9日〜2027年2月28日 | 家庭系廃食用油の回収期間 |
| 2027年3月19日 | GREEN×EXPO 2027開幕日。ブルーインパルスの展示飛行 |
| 2027年9月26日 | GREEN×EXPO 2027閉幕 |
家庭の廃食用油は年約10万トン 9割以上が回収されていない
キャンペーンが家庭の油に的を絞っているのは、そこが集められていないからだ。農水省が2025年2月の官民協議会に出した説明資料によると、SAFやBDF(バイオディーゼル燃料)の原料となる廃食用油は、飲食店や食品製造業から年約40万トン、一般家庭から年約10万トンが発生していると推計されている。全国油脂事業協同組合連合会の調査に基づく数値である。
廃食用油の発生量(推計)(万トン)
数値で見る(単位: 万トン)
| 項目 | 万トン |
|---|---|
| 事業系 | 40 |
| 家庭系 | 10 |
同資料は、事業系の廃食用油は9割以上が回収され、家畜の配合飼料などに再利用されており、近年は海外への輸出も増加傾向にあるとしている。これに対し、一般家庭の廃食用油は9割以上が未回収である。発生量では事業系の4分の1にあたる家庭系が、原料としてはほとんど使われずに捨てられている。
回収の受け皿も限られている。同じ協議会に環境省が出した資料では、家庭用の廃食用油を分別収集している市区町村は549自治体で、全体の約3割にとどまる。環境省は2025年度から、市区町村が生ごみや剪定枝、廃食用油を分別収集する経費に特別交付税の措置を講じることとしており、廃食用油については分別収集に要する費用のみを対象に予定している。
制度上の位置づけもある。2024年8月に閣議決定された第五次循環型社会形成推進基本計画では、廃食用油を配合飼料原料や工業原料、バイオディーゼル燃料原料、SAFなどの原料として有効活用することとされた。農水省は2024年7月から省内に回収ボックスを置いて職員の家庭から出る油を集め、2025年度予算には廃食用油などの地域未利用資源の回収・再利用を促すモデル的な取り組みを支援する事業を計上している。
資源循環という言葉そのものの浸透はまだ進んでいない。内閣府が10月に公表した世論調査では、「循環経済」の意味を知る人13.4%、6割は聞いたこともなし 再生材製品が高いなら「買わない」39.2%という結果だった。家庭の廃食用油をどこに出すかという具体的な行動は、こうした認知の手前にある。食品に関わる資源の扱いでは、10月は「食品ロス削減月間」 ファミリーマートの「涙目シール」は年約2500トン削減 全国の食品ロス461万トンのうち事業系は前年度から6万トン増えたのように、事業系の取り組みが先に進む構図が共通している。
SAFとは何か 2030年に燃料の10%という国の目標
SAFは「Sustainable Aviation Fuel」の略で、持続可能な航空燃料を指す。廃食用油など化石燃料以外の原料から製造され、航空分野の二酸化炭素排出削減に貢献する燃料として導入の拡大が期待されている、と農水省は説明している。
国の目標は、航空法第131条の2の7に基づいて国土交通省が定めた航空脱炭素化推進基本方針に書かれている。同方針は、取り組みのマイルストーンとして、2030年時点のSAFの使用量について本邦航空運送事業者による燃料使用量の10%をSAFに置き換えることとしている。あわせて国内航空では2030年度までに単位輸送量当たりの二酸化炭素排出量を2013年度比で16%削減し、各空港の温室効果ガス排出量を2030年度までに2013年度比で46%以上削減する目標も掲げている。
供給側の仕組みづくりも進んでいる。国交省航空局が2026年3月の検討会に出した参考資料では、エネルギー供給高度化法により、燃料輸入事業者を含む燃料供給事業者にSAFの供給を義務付けることを検討していると記している。経済産業省は国際競争力のあるSAFを国内で製造するため、大規模な製造設備への投資を支援しており、補助率はHEFA(水素化処理した油脂)が3分の1、ATJ(アルコールから製造する方式)が2分の1である。生産・販売量に応じて税額を控除する戦略分野国内生産促進税制も用意されている。
同じ資料は海外の供給義務の例も挙げている。英国は2025年に2%、2030年に10%、EUは域内の空港を出発する便に提供される燃料への混合義務を2030年に6%、2035年に20%、2040年に34%、2050年に70%と定めている。国内の家庭から油を集める取り組みは、この供給量を国産でどこまで賄えるかという課題の入り口にある。
GREEN×EXPO 2027とは 旧上瀬谷通信施設で半年間
展示飛行の舞台となるGREEN×EXPO 2027は、通称を「横浜グリーンエクスポ」とする国際園芸博覧会である。協会の公表する開催概要によると、会期は2027年3月19日(金)から9月26日(日)までの約6か月、開場時間は9時30分から21時30分まで。会場は神奈川県横浜市の旧上瀬谷通信施設で、博覧会区域は約100ヘクタール、うち会場区域は80ヘクタールである。
会場となる旧上瀬谷通信施設は横浜市旭区・瀬谷区に位置し、2015年に米軍から返還された約242ヘクタールの土地の一部を使う。長年にわたって土地利用が制限されてきたため、農地や緩やかな起伏の草地、相沢川・和泉川の源流部や谷戸地形といった自然環境が残っているとされる。
博覧会は国際園芸家協会(AIPH)の承認と博覧会国際事務局(BIE)の認定を受けたA1(最上位)クラスで、有料来場者数は1000万人以上を見込む。農水省は発表資料で、気候変動などの世界的な環境変化を踏まえ、自然環境が持つ多様な機能を暮らしにいかす知恵や文化の価値を再評価し、持続可能な社会の形成に活用することを博覧会の目的として挙げている。
半年の会期の初日に飛ぶ数分間の展示飛行に、家庭の台所から集めた油が使われる。実際にどれだけの量の油が集まり、そのうちどれだけが燃料になるのかは、回収期間が終わるまで分からない。回収場所の公表は12月9日までとされている。
