政府は10月16日付の答弁書で、飲食料品の消費税率を2年間1%に下げる期間が終わった後に食料品以外の消費税率を10%より引き上げる案について、「政府が主催する会議において……提案されたことはなく」と答えた。将来の消費税率についても、いま国会に出している法案以外には「具体的な検討を行っていない」と記した。参議院の奥田ふみよ議員が10月5日に提出した「消費税率の変更に関する質問主意書」への回答で、内閣総理大臣の高市早苗氏の名前で参議院議長の関口昌一氏に送られた。
「提案されたことはない」と答えた政府
答弁書の番号は「内閣参質二二二第三号」。日付は令和8年10月16日で、送付文には「参議院議員奥田ふみよ君提出消費税率の変更に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する」とある。本文はA4で1ページに収まる短いもので、三つの質問を「一及び二について」と「三について」の二つにまとめて答えている。
前半の「一及び二について」は、次のように書かれている。「政府が主催する会議において、お尋ねの『二年間の食料品消費税率引下げ期間が終了した後、食料品以外の消費税率を現行の十%より引き上げる案』が提案されたことはなく、これを前提としたお尋ねについてお答えすることは困難である」。つまり、そうした案が政府の会議に出た事実そのものを否定し、その案をどう評価するかという問いには、前提が成り立たないとして答えていない。
後半の「三について」は、こうだ。「租税及び社会保険料による負担の軽減のための飲食料品に係る消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の支給に関する法律案を今国会に提出しているところ、それ以外に、将来の消費税率の在り方について具体的な検討を行っていない」。
読み落とせないのは、ここに「引き上げない」と約束する文言が入っていないことだ。質問は「約束できるか」と尋ねたが、答えは「具体的な検討を行っていない」という現状の説明にとどまる。検討していないことと、将来引き上げないことは別の話であり、答弁書はその区別を越えていない。
質問は三問 「引き上げないと約束できるか」
質問主意書を出したのは、参議院の奥田ふみよ議員(比例選出)。本文は「高市内閣が推進する、食料品の消費税率を二年間限定で一%に引き下げる案が実現した場合の、その後の対応について」と前置きし、三つを並べている。
一つ目は、2年間の引下げ期間が終わった後に食料品以外の消費税率を現行の10%より引き上げる案が、政府の主催する会議の場で提案されたことはあるか。二つ目は、その案を政府はどのように評価するか。三つ目は、高市内閣はその案を含め、消費税率を現行より引き上げないことを約束できるか——である。
三問はひと続きの流れになっている。「そういう案が出ているのか」「出ているならどう見るのか」「出ていないとしても、上げないと言えるのか」と、逃げ道を順に塞ぐ組み立てだ。これに対して政府は、一つ目で事実を否定し、二つ目は前提が崩れたとして答えず、三つ目は「検討していない」と現状を述べた。三問のうち、将来を約束する形で答えたものは一つもない。
提出から答弁書まで11日 衆院でも同じ論点の質問
質問主意書は、議員が内閣に文書で問い、内閣が文書で答える仕組みだ。質問本文には「右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する」と書かれ、議院の議長が受理して内閣へ転送し、内閣は答弁書を議長宛てに送り返す。口頭のやり取りと違って言い回しが記録として確定するため、政府の立場を一文単位で押さえたいときに使われる。
参議院の情報によると、今回の質問は10月5日に提出され、10月13日に内閣へ転送、答弁書の受領は10月16日だった。提出から数えて11日、内閣への転送から数えれば3日で回答が返っている。
| 件名 | 提出者 | 提出日 | 内閣転送日 | 答弁書受領日 |
|---|---|---|---|---|
| 参院 質問第3号「消費税率の変更に関する質問主意書」 | 奥田ふみよ | 10月5日 | 10月13日 | 10月16日 |
| 衆院 質問第12号「政府提出の『消費税・支援金法案』に関する質問主意書」 | 田村智子君外三名(日本共産党) | 10月15日 | (空欄) | (空欄・経過状況は「質問受理」) |
衆議院には、日本共産党の田村智子氏ほか3人が10月15日に出した「政府提出の『消費税・支援金法案』に関する質問主意書」がある。衆議院の経過情報では、10月21日時点の表示で内閣転送年月日も答弁書受領年月日も空欄のままで、経過状況は「質問受理」となっている。同じ法案を対象にしながら、参議院側の回答が先に出た形だ。
衆議院の経過情報の表には「答弁延期通知受領年月日」「答弁延期期限年月日」という欄も設けられている。期限内に答えられない場合は、その理由と答えられる期限を示す手続きがあることを示す欄で、今回の参院分では延期なしで答弁書が届いた。第222回国会の質問主意書の提出状況は第222回臨時国会の質問主意書は9本、うち8本が緒方林太郎議員 所属は2人会派の志士の会 召集日に一括提出にまとめている。
答弁が指す法案 1%は2年間、支援金の額は政令に
答弁書が名前を挙げた法案は、内閣官房と財務省が10月にまとめた概要によると、二本立てだ。一つは飲食料品に係る消費税率の臨時的な引下げで、令和9年4月1日から令和11年3月31日までの間、飲食料品に係る消費税率を0.78%(地方消費税と合わせて1%)とする。地方消費税の減収額は地方特例交付金で補塡する。実施のための措置として、本則課税事業者への移行に係る届出の特例、簡易課税制度の特例、中間申告制度の特例、総額表示義務の特例、定期供給契約による予約販売や通信販売の税率の経過的取扱いが設けられる。
もう一つが就業者負担軽減支援金で、要件に当てはまる人に毎年1回支給する。要件は、勤労所得の額が政令で定める額を超えること、合計所得金額が政令で定める額以下であること、税と社会保険料の負担額から公的年金等収入額を控除した額が政令で定める額を超えること、配偶者の合計所得金額が政令で定める額以下であること(令和9・10年度の支給を除く)の四つ。支援額も、前年の所得額や19歳未満の居住扶養親族数に応じて政令で定めるとされている。つまり、誰がいくら受け取るかの線引きは、法律ではなく政令に委ねられている。
概要にはこのほか、財源は特例公債に頼ることなく歳出・歳入全般の見直しにより確保すること、内閣府に「租税・社会保険料負担に関する総合調整本部」を設置することも盛り込まれている。施行日は令和9年4月1日。この法案は10月20日に衆議院本会議で審議入りし、財務金融委員会に付託された。経緯は食料品1%減税・支援金法案が衆院で審議入り 財務金融委へ付託、国民民主は対案を同日提出で詳しく伝えている。
今回の答弁書は、この法案の中身そのものを説明したのではなく、「この法案のほかに将来の税率の検討はしていない」という外側の線を引いたものだ。引下げ期間が終われば飲食料品の税率は元に戻る設計で、その先をどうするかは法案に書かれていない。答弁書は、その空白について現時点で検討がないと述べたことになる。
消費税は国税収入の3割弱 税率の重みが答弁の意味を決める
なぜ「その後」が繰り返し問われるのか。消費税が国の税収で占める位置の大きさがある。財務省の資料によると、令和8年度予算の国税収入計は89兆9942億円で、このうち消費課税計が31兆9211億円、構成比は35.5%。消費税だけで26兆6880億円、構成比29.7%を占める。
令和8年度予算の消費課税(国税)の主な内訳(億円)
数値で見る(単位: 億円)
| 項目 | 億円 |
|---|---|
| 消費税 | 266,880 |
| 揮発油 | 11,560 |
| 酒税 | 11,478 |
| たばこ | 10,937 |
| 重量税 | 7,399 |
同じ消費課税でも、酒税は1兆1478億円、揮発油税等は1兆1560億円、たばこ税等は1兆937億円、自動車重量税は7399億円で、消費税は桁が一つ違う。税率を1%動かせば国の歳入に数兆円単位の影響が及ぶため、「2年間だけ下げる」という設計は、終わった後の扱いをあらかじめ決めておかないと、期限が近づくたびに財源論が蒸し返されることになる。
答弁書が示したのは、その先の設計図がまだ政府部内で具体化していないという事実である。質問者が求めた「引き上げない」という約束は得られず、一方で「上げる案が会議に出ている」という事実も否定された。法案は衆議院の財務金融委員会で審議が続いており、2年後の姿をどこまで法案審議の中で詰めるかが、引き続き国会の論点になる。
