情報通信審議会の電気通信事業政策部会(部会長・岡田羊祐成城大学社会イノベーション学部教授)は2026年10月9日の第94回会合で、「最終保障提供責務の導入等に伴う基礎的電気通信役務制度の在り方」三次答申をまとめた。固定電話やブロードバンドを全国どこでも使えるようにするための赤字を通信業界全体で補う交付金制度について、補填する範囲を広げる方向で見直すよう求めた内容だ。固定電話向けの第一種交付金では、補填の対象を絞ってきた「標準偏差の2倍(2σ)」の補正措置を2026年度中に終える制度整備を行い、2028年度(令和10年度)の交付分から適用するとした。

補填の線引きを緩め、番号単価は月2円から4円程度へ

第一種交付金は、NTT東日本・西日本が加入電話や公衆電話を全国で維持するために生じる赤字を、ほかの通信会社が納める負担金で補う仕組みである。2007年1月に運用が始まった。赤字の全額を補うのではなく、まず長期増分費用(LRIC)方式という、現在の技術で設備を作り直したと仮定した費用の算定方法で基準額(コストベンチマーク)を出し、それを超える赤字のうち、回線1本あたりの費用が高い上位4.9%の「高コスト地域」に限って補填する。

さらに、その上に補正措置が積み重ねられてきた。答申が挙げたのは、国民負担を軽くする観点から「当分の間」として、コストベンチマークに標準偏差の2倍(2σ)を加えた額を超える部分に限って補填するという措置である。統計のばらつきの範囲内にある赤字は補填しない、という線引きで、補填される額を押し下げてきた。

答申は、この措置を終わらせる理由を三つ挙げた。第一に、2027年(令和9年)に施行される最終保障提供責務の導入に伴い、NTT東西に課されてきた電話の「あまねく提供責務」が廃止されるため、赤字の補填割合を引き上げて、NTT東西が自主的に固定電話サービスを維持する誘因を与える必要があること。第二に、現在の番号単価が措置の導入当時の8円を大きく下回る2円程度で推移していること。第三に、措置をやめたとしても番号単価は4円程度にとどまると見込まれることである。そのうえで「令和8年度中に当該措置を終了させるための制度整備を行い、令和10年度交付分から適用する」と明記した。

高コスト地域の上位4.9%に限る措置についても、メタル回線を使って同じ形態で提供する競合サービスの撤退が確実であることを踏まえ、「実際に終了するまでの間に、当該措置の見直しを検討することが適当」とした。答申の注記によると、銅線(ドライカッパ等)を用いた直収電話を提供する事業者は現時点で1社だけで、2029年度(令和11年度)末にサービス終了が予定されている。一方、光回線への移行期に生じるメタル回線の維持費を補う「光IP補正」は、移行が本格化してもメタル回線の維持コストが当面減らないと見て、当面維持する。

1番号あたり2円の内訳 公衆電話が半分を超える

いま適用されている番号単価の中身も、総務省の資料で確認できる。2027年(令和9年)1〜6月分に適用される分の申請概要によれば、NTT東西に交付する補填対象額は63.4億円で、前年の申請時の65.1億円から下がった。内訳は加入電話の加入者回線が26.1億円(NTT東16.3億円、NTT西9.8億円)、第一種公衆電話が33.9億円(同20.0億円、13.8億円)、災害時用公衆電話が3.3億円(同1.7億円、1.6億円)である。公衆電話の分が全体の半分を超える。

第一種交付金の補填対象額の内訳(2027年1〜6月適用分)(億円)

加入電話26.1公衆電話33.9災害時用3.3
出典: 総務省「別紙1 申請概要(第一種交付金の額及び交付方法/第一種負担金の額及び徴収方法)」
数値で見る(単位: 億円)
項目億円
加入電話26.1
公衆電話33.9
災害時用3.3

番号単価は、この補填対象額に支援機関の支援業務費0.4億円を加え、前年度の繰り越し分(マイナス3.9億円)を調整した額を、対象となる電話番号の総数で割って算出する。申請概要の計算式では2.297…円となり、整数未満を四捨五入して2円となった。NTT東日本分が1.20338749円、NTT西日本分が0.79661251円で、合わせて2円である。負担するのは前年度の電気通信事業収益が10億円を超え、かつ加入電話との相互接続通話を提供する事業者だ。番号単価の推移や算定の前提は電話のユニバーサルサービス、2027年1〜6月の「番号単価」は1番号あたり月2円に据え置き 補填対象額は63.4億円で前年申請の65.1億円から減少で詳しく扱っている。

答申は、この負担金が携帯電話や固定電話の料金に「ユニバーサルサービス料」として上乗せされ、利用者に転嫁されている実態に触れ、「交付金額の規模や『ユニバーサルサービス料』への影響についても配慮しつつ取組を進めることが適当である」とした。総務省に対しても、実際のユニバーサルサービス料の推移を注視しながら、過度な負担の水準にならないよう制度の検討・整備を進めるべきだと求めている。

ブロードバンドの交付金は1.5億円 重点配分に切り替え

ブロードバンド向けの第二種交付金も見直す。2022年の電気通信事業法改正で創設された制度で、不採算地域での安定的な提供の確保、有線ブロードバンド未整備地域の解消の促進、公設公営・公設民営から民設民営への転換の促進を目的としている。背景にあるのは、政府が2022年6月に閣議決定した「デジタル田園都市国家構想基本方針」が掲げる、全国の光ファイバの世帯カバー率を2027年度(令和9年度)末までに99.9%にするという目標だ。

ただし現行制度は「内部相互補助」の考え方が基本になっている。ある区域の収支が赤字でも、その事業者のブロードバンド事業全体が前年度に黒字であれば、その区域の赤字は補填しないという考え方である。この設計で運用した結果、2026年度(令和8年度)の第二種交付金の規模は総額約1.5億円にとどまり、1回線あたりに換算すると年額2円だった。

事業者 2026年度の第二種交付金
NTT東日本 約1.44億円
NTT西日本 約0.05億円
ZTV 0円
合計 約1.5億円

表: 2026年度の第二種交付金の事業者別の額 出典: 情報通信審議会電気通信事業政策部会「最終保障提供責務の導入等に伴う基礎的電気通信役務制度の在り方 三次答申」

答申は、政策的に整備を進めるべき区域に交付金を重点的に配ると明記した。具体的には、モデル上の赤字額が1回線あたり月額1万1790円以上になる「大幅赤字区域」について、事業者の全国収支が黒字であっても交付金を出せるようにする。モデル上の赤字が見込まれることを条件としてきた「公設区域」と「未整備区域」については、その条件を外し、該当すれば特別支援区域に指定できるようにする。公設光ファイバの譲り受けに対する補填も、これまで2023年6月16日時点で存在していた設備に限っていたが、それ以降に設置された設備にも広げる。

これらは2027年度(令和9年度)にブロードバンド環境の整備・維持に要した費用の赤字を2029年度(令和11年度)から交付できるよう、速やかに制度整備に着手するとした。一方で、全国収支が赤字のときだけ補填される「一般支援区域」は、事業者が制度施行後に指定解除を申請する意向を示していることから、当面は指定しない運用にするとしている。

最終保障提供責務の交付金は「収入費用方式」

今回の見直しの前提にあるのが、2025年(令和7年)の改正電気通信事業法で導入が決まった最終保障提供責務である。ほかに提供する事業者がいない場合、指定された事業者が最後の受け皿として電話やブロードバンドを提供する義務を負う仕組みで、2027年(令和9年)に施行される。この責務を果たして生じた赤字を補う新たな交付金の算定方法について、答申は具体化を進めた。

対象となる費用は光ファイバなどの整備費(減価償却費)と維持費を基本とする。算定は「収入費用方式」とし、責務の履行に実際に要した費用から実際に得られた収入を差し引いた額を補う。ただし実際に要した費用の中に非効率と認められるコストがあるときは、その分を控除できる仕組みにする。最終保障を担う事業者が近隣の事業者に協力を求めた場合に支払う対価も、交付金の算定対象に含める方向だが、交付金の肥大化を避けるため合理的な水準であることを求め、対価に対応した個別の算定方法は定めないとした。

提供できる事業者がいるかどうかを判別する「役務提供確認データベース」も制度に組み込む。構築・運用の業務は、基礎的電気通信役務支援機関である一般社団法人電気通信事業者協会が担う交付金の交付に附帯する業務として位置づける。提供可能と判定する基準となるエリアの目安は、運用開始時点では世帯カバー率10%超を引き続き用い、運用開始後の状況を踏まえて改めて議論する。判定の単位は「町字」のままとする。

なお、メタル加入電話の代替手段としてNTT東西が2028年度(令和10年度)から提供を予定しているモバイル網固定電話については、交付金の算定上の扱いを今後改めて検討し、最短で2030年度(令和12年度)の交付分から適用するとした。モバイル網固定電話をユニバーサルサービスに位置づける方針そのものは、携帯の電波を使う「固定電話」、ユニバーサルサービスへ格上げ 総務省審議会が答申案 メタル回線1043万件の受け皿にで扱っている。

意見は16件・65項目 答申案の修正は1か所もなし

答申案への意見募集は2026年7月22日から8月25日まで実施され、16件の意見が寄せられた。内訳は法人・団体が9件、個人が2件、匿名が5件である。法人・団体では日本先進通信、日本ケーブルテレビ連盟、NTTドコモ、ソフトバンク、楽天モバイル、NTT東日本、オプテージ、NTT西日本、KDDIが名を連ねた。公表された意見は65項目に分かれるが、各項目に付された「案の修正」の欄はいずれも「無」で、答申案は1か所も直されずに確定した。

意見の多くは答申案への賛同か、運用面の要望である。NTT東西は、モバイル網固定電話について緊急通報の仕様の利用者周知と見直し時期を明記するよう求めた。KDDIは、役務提供確認データベースの運用にかかる費用の扱いを制度整備で明確にしてほしいと要望した。オプテージは、世帯カバー率10%超という基準では、データベース上は提供可能とされても実際には提供が困難な例が相当程度生じる可能性があると指摘し、最終保障を担う事業者が利用者の求めを一元的に受け付ける仕組みにすべきだとした。部会は、総務省が事業者間会合の検討状況や運用開始後の状況を踏まえて継続的に検討することが適当だと答えている。

個人からは、ブロードバンド環境がない地域の利用者が申し込む際の不利益を防ぐため、電話(フリーダイヤル等)と紙面(郵送)による受付窓口の設置をガイドラインで必須と明記し、自治体が住民の意向を取りまとめて申し込む際の標準的な様式や連絡の流れを定めるよう求める意見が出た。手続きがウェブ中心に設計されると、当事者である未整備地域の住民が自ら申請できない情報格差が生じるという理由である。部会は、答申案が「ブロードバンド環境にない利用者からなされることも想定して、利用者と事業者が円滑に連絡できる手段を念頭に置いて検討を進める」としている点を示し、総務省における手続きの具体化や運用の参考にするとした。

交付金制度の基本的な考え方をめぐっては、負担金が利用者に転嫁されている実態を踏まえて利用者が納得できる仕組みと説明が重要だという意見や、過去のユニバーサルサービス料の推移からすれば月額10円程度が上限ではないか、何らかの目安や見通し額を提示できるとよいという意見も寄せられた。答申は第5章で、交付金は利用者が支払うユニバーサルサービス料を実質的な原資とするものだとして、「充てるべきところにしっかり充てる」との考えで見直しの方向性をまとめたと説明し、人口減少が進む現状ではユニバーサルサービス料への影響を常に意識すべきだと記している。