特許庁がまとめた特許行政年次報告書2026年版によると、2025年に国内の出願人から出された特許出願のうち、中小企業によるものは3万8429件で全体の13.4%だった。前年の16.0%から下がり、報告書が示している2021年以降では最も低い。中小企業は国内の企業約338万社の99.7%を占めるが、特許の出願件数ではおよそ8件に1件にとどまる。

件数は横ばい、比率を押し下げたのは全体の急増

中小企業の特許出願件数は、2021年が3万7875件、2022年が3万9648件、2023年が4万221件、2024年が3万8037件、2025年が3万8429件と推移している。前年からは392件増えており、件数そのものは減っていない。

比率が16.0%から13.4%に下がったのは、分母にあたる出願全体がふくらんだためだ。日本国特許庁への特許出願件数は、2020年以降は28万〜30万件で横ばいが続いていたが、2025年は35万8317件となり、前年の30万6855件から16.8%増えた。報告書はこの増加の理由には触れていない。増えた分の大半は国内からの出願で、外国の出願人が占める割合は前年の22.7%から19.7%へ下がっている。

権利の種類によって中小企業の存在感は大きく違う。2025年の比率は、実用新案登録出願が53.9%(1424件)、商標登録出願が58.9%(7万463件)、意匠登録出願が42.6%(8372件)で、いずれも特許を大きく上回る。審査を経ずに登録される実用新案や、費用が比較的軽い商標には手が届きやすいという差が表れている。

出願する中小企業は1000社に3社

出願した企業の数で数えると、様相が変わる。2025年に特許を出願した中小企業は1万509者で、出願人全体の64.5%を占めた。出願している企業の3社に2社は中小企業という計算になる。一方で出願件数は3万8429件だから、1者あたりの出願は約3.7件にとどまる。少数の企業が少しずつ出している、という姿だ。

報告書は都道府県ごとに、中小企業の数に対して特許を出願した中小企業がどれだけいるかも示している。全国平均は約0.31%で、1000社のうち3社ほどにすぎない。同じ指標を商標で見ると全国平均は約1.02%、意匠は約0.08%、実用新案は約0.03%だった。知的財産の制度を実際に使っている中小企業は、商標でも100社に1社程度という水準になる。

中小企業庁が7月に公表した中小企業の「稼ぐ力」強化戦略は、人手が減る中で付加価値を高める方向へ政策の軸を移した。その付加価値の裏づけになるはずの特許が、数のうえでは大企業側に偏っている形だ。

海外への出願も大企業の半分

海外に出す割合にも差がある。国内に出した特許出願のうち外国にも出願した件数の比率(海外出願率)は、2024年で大企業が34.8%、中小企業が18.2%だった。大企業は3社に1社以上が海外にも権利を求めるのに対し、中小企業は5社に1社に満たない。中小企業の海外出願率は2021年の19.0%から4年連続でわずかに下がっている。

中小企業が海外へ出した特許出願は2024年で、特許協力条約(PCT)に基づく国際出願が5966件、パリ条約による優先権を使った出願が1146件だった。特許庁を受理官庁とするPCT国際出願全体に占める中小企業の比率は、2025年で10.2%にとどまる。

特許行政年次報告書は、特許庁が毎年公表している年次報告書で、国内外の出願動向や審査の状況をまとめている。2025年の特許審査では、出願から権利が確定するまでの期間が平均13.2か月、最初の審査結果を通知するまでが9.4か月だった。取引条件をめぐっては今年1月に下請法が「取適法」へ改称・改正され、中小企業の交渉力を制度面から支える動きが続いているが、知的財産の面では大企業との差が開いた形になった。