公正取引委員会は10月9日、給湯器などを製造販売するパーパス(静岡県富士市、資本金9800万円)に対し、改正前の下請代金支払遅延等防止法(下請法)と、改正後の中小受託取引適正化法(取適法)に基づく勧告を行ったと発表した。部品の製造などを委託した中小事業者11者への代金計2282万3013円について手形を交付し、支払期日までに支払わなかったと認定した。代金からの振込手数料の差し引きや、金型の無償保管も違反とした。

手形払いを「支払遅延」と認定

公取委の発表によると、パーパスは自社が販売したり製造を請け負ったりする給湯器などの部品の製造を、中小の事業者に委託していた。公取委の勧告一覧は、委託の中身として部品の製造のほか、給湯器などの修理と、LPガス総合管理システムなどのプログラムの作成も挙げている。

認定された行為は五つある。一つ目は、2026年2月から3月までの間、中小受託事業者11者に対し、製造委託等代金計2282万3013円の支払いに手形を交付し、支払期日を過ぎても代金を支払わなかったことだ。勧告一覧はこれを「支払期日までに金銭又はこれと同等の経済的効果が生じる支払手段による支払を行わなかった」と書いている。適用したのは取適法第5条第1項第2号(代金の支払遅延の禁止)。

パーパスはこの2282万3013円をすでに支払った。それでも公取委は、期日から遅れた分について、取適法第6条第1項に基づく遅延利息などを公取委の確認を受けたうえで速やかに支払うよう求めた。公取委のリーフレットによると、遅延利息の率は年14.6%と定められている。

公取委が2026年度に出した取適法・下請法の勧告は、勧告一覧によると10月9日時点で16件あり、パーパスはその16件目にあたる。支払遅延の禁止を違反法条に挙げたのは、9月29日の不二製作所に続いて2件目となる。不二製作所の件では、手形のほか、満額の現金に換えるのが難しい電子記録債権での支払いも違反とされた。詳しくは「代金7497万円の支払いが遅れ、公取委が不二製作所に勧告 手形と電子記録債権での支払いを取適法違反と認定 1月施行の新ルールを適用」で報じている。

振込手数料の差し引き、合意があっても違反に

二つ目と三つ目は、代金を振り込む際の手数料をめぐる行為だ。

二つ目は、2025年5月から2026年3月までの間、下請事業者71者に支払う代金から計15万7100円を差し引いた行為。勧告一覧によると、パーパスは振込手数料を下請事業者の負担とすることを書面で合意していたが、実際に金融機関に支払う手数料を超える額を差し引いていた。改正前の下請法第4条第1項第3号(代金の減額の禁止)に当たるとされた。

三つ目は、2026年2月から3月までの間、中小受託事業者85者に支払う代金から、振込手数料に相当する計3万3730円を差し引いた行為で、こちらは取適法第5条第1項第3号(代金の減額の禁止)を適用した。

同じ振込手数料でも、違反の理由が違う。改正前の下請法の時期は「実際の手数料を超えた分」が問われた。一方、取適法の時期は、手数料相当額を差し引いたこと自体が違反とされた。公取委は取適法の「よくある質問」で、振込手数料を中小受託事業者が負担する旨の合意の有無にかかわらず、手数料を負担させて代金から差し引くことは「本法違反として、問題となる」と答えている。

差し引かれた額は二つを合わせて19万830円。公取委は、差し引いた全額を速やかに支払うよう求めた。三つ目については、取適法第6条第2項に基づく遅延利息を合わせて払うことも求めている。

金型196個を無償で保管させる

四つ目と五つ目は、金型の保管をめぐる行為だ。パーパスは遅くとも2025年3月以降、下請事業者10者に計132個、遅くとも2026年1月以降、中小受託事業者12者に計64個の金型などを、保管費用を負担しないまま保管させていた。勧告一覧によると、対象は金型、樹脂型、治具で、合計196個。パーパスがこれらの型を使う部品の発注を長期間していなかったにもかかわらず、保管させ続けていたと認定した。

前者は改正前の下請法第4条第2項第3号、後者は取適法第5条第2項第2号で、いずれも「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」に当たる。公取委は、保管費用に相当する額を公取委の確認を受けたうえで速やかに支払うよう求めた。

公取委は「よくある質問」で、発注を長期間行わないなどの事情があるのに、保管費用を払わずに中小受託事業者に型を保管させれば、この禁止に当たるおそれがあると説明している。保管費用には、自社倉庫の使用料相当額や外部倉庫の使用料、倉庫までの運送費、メンテナンス費用が含まれるとしている。

勧告一覧によると、今年度の16件のうち10件が、金型などの保管費用を負担しなかったことを違反に挙げている。この中には、7月8日の同じ給湯器メーカーのノーリツへの勧告も含まれ、下請事業者41者に計5242型の金型を保管させていたと認定された。施行後の勧告の傾向は「下請法は今年1月に「取適法」へ 施行後の勧告14件のうち9件は「金型の保管費用」 トリドールには1億4741万円の返還指示」にまとめている。

1件の勧告に二つの法律を当てはめる

今回の勧告は、一つの会社の違反に、改正前の下請法と改正後の取適法の両方を当てはめた点に特徴がある。

下請法は1956年に制定され、発注側の会社による代金の支払い遅れや減額などを禁じてきた。2025年の改正で、法律の名前は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(取適法)に変わり、2026年1月1日に施行された。「親事業者」は「委託事業者」、「下請事業者」は「中小受託事業者」と呼び名も改められた。

公取委の発表は、2025年12月までに行われた委託には改正前の下請法を、2026年1月以降の委託には取適法を当てはめると注記している。パーパスの行為は施行日をまたいで続いていたため、振込手数料と金型の保管については、施行前の分と施行後の分が別々の違反として数えられた。勧告の根拠も、改正前の下請法第7条第2項・第3項と取適法第10条第1項が並んでいる。

公取委のリーフレットによると、改正の柱の一つが手形払いの禁止だ。手形払いのほか、電子記録債権など支払期日までに代金の満額を受け取るのが難しい支払い方法も禁止された。リーフレットは禁止行為の「支払遅延」を「支払期日までに代金を支払わないこと(支払手段として手形払等を用いること)」と説明しており、手形を使うこと自体が支払遅延に当たる。

取適法が対象とするのは、資本金や従業員の数で一定の規模の差がある会社どうしの取引だ。今回の改正では、従来の資本金の基準に加えて従業員の基準(300人、100人)が設けられ、守られる側の事業者の範囲が広がった。

支払いのルールは、取適法の対象外の取引にも広がる。公取委の支払遅延に関するリーフレットによると、2027年4月1日からは、取適法の対象とならない製造委託などの取引でも、給付を受け取った日から60日以内のできる限り早い日を支払期日と定め、その日までに代金を払う必要がある。

公取委は詳細を別添の勧告書で示したとしている。記事の作成時点で、パーパス自身が勧告への対応を公表しているかどうかは確認できていない。