光回線などのブロードバンドを全国で維持するための赤字を通信業界全体で補う「第二種交付金」について、交付金の業務を担う一般社団法人電気通信事業者協会(TCA、会長・宮川潤一氏)は、交付金の額を12億3018万2918円とする認可を総務相に申請した。NTT東日本に6億5159万8121円、NTT西日本に5億7672万408円、ケーブルテレビ会社のZTVに186万4389円を配る内容だ。財源は通信会社が納める第二種負担金で、回線1本あたり6円とする。総務相は2026年10月29日、情報通信行政・郵政行政審議会(会長・相田仁東京大学特命教授)に諮問し、審議会は10月30日から11月30日まで意見を募っている。
2022年の法改正で生まれ、初めての額が示される
ユニバーサルサービス制度は、全国どこでも使えるべき通信サービスを決め、その提供で生じる赤字を通信業界全体で分担する仕組みだ。固定電話向けには「第一種」の交付金と負担金がある。ブロードバンド向けの「第二種」は、2022年の電気通信事業法改正(令和4年法律第70号)で創設された。
対象となるのは、総務相が指定する「第二種適格電気通信事業者」が、担当する「支援区域」で提供する光回線などのサービスである。総務相は2026年3月31日、NTT東日本、NTT西日本、ZTVの3社を初めて第二種適格電気通信事業者に指定し、それぞれの担当支援区域を定めた。今回の申請は、この3社に配る交付金の額と、その原資として集める負担金の額を、初めて具体的に示したものになる。
申請日は10月20日。TCAは、電気通信事業法に基づいて総務相が指定した「基礎的電気通信役務支援機関」で、交付金の算定と負担金の徴収を担う。固定電話向けの第一種でも同じ役割を務めており、9月18日には第一種負担金の番号単価の認可を申請していた(電話のユニバーサルサービス、2027年1〜6月の「番号単価」は1番号あたり月2円に据え置き 補填対象額は63.4億円で前年申請の65.1億円から減少)。
NTT東西はいずれも黒字、補填は「未整備」と「公設」の区域だけ
申請概要によると、3社の2025年度の光回線(FTTH)事業は、いずれも黒字だった。営業収益と営業費用は、NTT東日本が5278億4900万円と3605億8500万円で営業利益は1672億6400万円、NTT西日本が3924億2800万円と3073億8800万円で850億4000万円、ZTVが52億8400万円と40億6300万円で12億2100万円となっている。
現行の制度は、事業者が全国で黒字なら、ある区域の赤字はその黒字で埋めるべきだという「内部相互補助」の考え方を基本にしている。このため3社とも、一般の支援区域と、算定規則で「大幅赤字区域等」とされる区域への交付額は0円になった。交付の対象として残ったのは、政策的に整備を進める区域として別枠で扱われる二つだけである。光ファイバの整備率が50%以下の「未整備区域」と、自治体が敷設した公設の光ファイバが残る「公設区域」だ。
| 区域 | NTT東日本 | NTT西日本 | ZTV | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 一般支援区域 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 大幅赤字区域等 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 特別支援区域(未整備区域) | 13.1 | 205.1 | 1.2 | 219.4 |
| 特別支援区域(公設区域) | 638.5 | 371.6 | 0.6 | 1,010.8 |
| 合計 | 651.6 | 576.7 | 1.9 | 1,230.2 |
申請額のうち、公設区域分が10億1080万円で全体の8割強を占める。公設区域は自治体が敷設した公設の光ファイバが存在する区域で、交付金はその設備を民間事業者が譲り受けて提供する場合に補填する。制度は公設から民営への移行を促すことを目的の一つに掲げている。
交付金の額は、担当する支援区域全体で見込まれる赤字を下回らなければならない。申請概要が示した見込みの赤字は、NTT東日本が63億1500万円(費用154億3700万円、収益91億2200万円)、NTT西日本が38億9000万円(同90億2800万円、同51億3800万円)、ZTVが2600万円(同3億3500万円、同3億900万円)で、いずれも申請額を上回っている。
負担金は91社から年1回、回線1本あたり6円
負担金を納めるのは、光回線などの高速データ通信を提供する事業者のうち、前年度の電気通信事業の収益が10億円を超える者で、2026年10月時点で91社にのぼる。負担金の額は、2026年度の申請単価である1回線あたり6円に、2027年3月末時点の算定対象回線数を掛けて決める。
TCAは回線数の通知を受けてから2週間以内に各社へ負担金の額を知らせ、各社は通知の翌日から1か月を過ぎた後の最初の営業日までに銀行振込で納める。遅れた場合は、1日につき1万分の4の割合で延滞金がかかる。交付金は、同じく回線数の通知を受けてから2週間以内に額を通知し、そこから40日を過ぎた後の最初の営業日までに3社へ振り込む。
徴収の回数は、算定規則が定める方法と異なる。規則どおりに計算すると、単価は1回線あたり月1円で、毎月1回・年12回集めると合計約25億7500万円になる。これは交付金に支援業務の経費の見込み額を加えた額の約2倍にあたり、翌年度は新たな負担金を集めなくても、前年度の負担金を元手に交付を続けられる計算になる。TCAは、受益に応じた負担を数年分まとめて特定の年度の事業者だけから集めるのは適当ではないとして、年1回に限って集める方法を総務相に申請した。総務相は10月27日付でこれを許可しており、今回の6円という単価はこの許可に基づいている。
審議会の答申は「約1.5億円」、申請額はその8倍強
交付金の規模をめぐっては、情報通信審議会が10月9日にまとめた三次答申が、2026年度の第二種交付金の規模を総額約1.5億円(NTT東日本約1.44億円、NTT西日本約0.05億円、ZTV0円)、回線1本あたり年2円と記していた。今回の申請額12億3018万円余りはその8倍強、負担金の単価6円は3倍にあたる。申請概要は、答申の数字との違いには触れていない。
答申は、約1.5億円という規模を「とどまっている」と表現し、見直しが必要だとした。政府は光ファイバの世帯カバー率を2027年度末までに99.9%にする目標を掲げている。答申は、事業者自身の経営判断で提供するサービスの赤字を補うという現行制度の設計では、政策的に整備を進めるべき地域への支援が限定的にしか認められてこなかったと指摘した。そのうえで、2027年度の整備・維持にかかった赤字について、可能な限り2029年度から交付できるよう、速やかに制度整備に着手すべきだとしている(電話のユニバーサルサービス、赤字補填の範囲を拡大へ 1番号あたり月2円の負担金は4円程度に)。
2027年度には、支援区域で事業者にブロードバンドの提供を義務づける「最終保障提供責務」の制度が始まる。答申は、担当する支援区域が「手挙げ制」に変わる中で内部相互補助の考え方を徹底すれば、赤字が見込まれる区域を自ら引き受ける動機が失われるおそれが高いとも述べた。今回の申請は現行の算定規則に基づくもので、答申が示した見直しは反映されていない。
意見は11月30日まで、審議を経て答申へ
意見募集の対象は、交付金の額と交付方法の認可申請書、負担金の額と徴収方法の認可申請書の二つである。意見は11月30日必着で受け付け、郵送は当日の消印まで有効とする。資料はe-Govの「パブリック・コメント」欄に掲載するとしている。
審議会は寄せられた意見を踏まえて調査審議を行い、総務相に答申する予定だ。認可されれば、2027年3月末の回線数が確定した後に負担金の額が各社へ通知され、3社への交付が実行される。
