総務省は9月30日、令和8年度9月期分として森林環境譲与税譲与金317億1899万7000円を都道府県と市町村へ譲与したと発表した。内訳は市町村分が285億4709万4000円、都道府県分が31億7190万3000円である。前年同期の311億8926万7000円を5億2973万円、率にして1.7%上回った。同じ日に航空機燃料譲与税譲与金77億5404万5000円、特別とん譲与税譲与金58億3654万円も譲与している。

原資は1人年1000円の国税 課税は2024年度に始まった

森林環境譲与税は、聞き慣れない名前だが、住民税を納めているほぼすべての人が負担している。原資は森林環境税という国税で、森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律(平成31年法律第3号)第5条が税率を「千円」と定めている。第3条により、日本に住所のある個人に国が均等の額で課す。

徴収は国が直接行うのではない。第7条は、納税者が住所を置く市町村が、個人の市町村民税の均等割の賦課徴収の例により、市町村民税・道府県民税の均等割とあわせて徴収すると定める。住民税の納税通知書に1000円が上乗せされる形で、市町村が集めて国へ払い込む仕組みだ。第4条により、生活保護法の生活扶助を受けている人や、前年の合計所得金額が135万円以下の障害者・未成年者・寡婦・ひとり親などには課されない。

課税が始まったのは令和6(2024)年度である。一方で、自治体へ配る森林環境譲与税のほうは令和元(2019)年度に先行して始まった。附則第1条と第2条が、税を定めた第2章は令和6年度以後の分から、譲与を定めた第3章は令和元年度以後の分から適用すると書き分けている。税収が入る前の5年間は、林野庁の資料によると地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金を充てていた。

譲与額は段階的に増やされてきた。法律の附則が年度ごとに金額を読み替えており、令和元年度は200億円、令和2・3年度は各400億円、令和4・5年度は各500億円、令和6年度は税収相当額に300億円を加算した額だった。令和7年度からは加算がなくなり、森林環境税の収入額に相当する額がそのまま譲与額になっている。令和7年度の譲与実績は663億円、令和8年度の地方財政計画上の額は666億円である。年間666億円を1人1000円で割り戻すと、およそ6660万人分にあたる(本紙の単純計算)。

配る基準は森林面積55%・林業就業者数20%・人口25%

配分の仕組みは法律に書かれている。第28条により、総額の10分の9が市町村へ回り、その内訳は私有林人工林の面積で55%、林業就業者数で20%、人口で25%を按分する。第29条により、残る10分の1が都道府県へ同じ基準で配られる。私有林人工林の面積と林野率は農林業構造統計、林業就業者数と人口は国勢調査の結果を使う。第28条第2項により、面積の分だけは林野率に基づく補正がかかる。

譲与の時期は第30条が9月と3月の年2回と定める。9月期に配るのは、その年の3月から8月までに納められた森林環境税の収入額に相当する額である。今回の317億1899万7000円は、令和8年度の年間見込み666億円のおよそ48%にあたる。

使い道は第34条で縛られている。市町村は森林の整備に関する施策と、人材の育成・確保、森林の公益的機能に関する普及啓発、木材利用の促進といった森林整備の促進に関する施策に充てなければならない。都道府県は市町村への支援が中心となる。第34条第3項は、決算を議会の認定に付したら遅滞なく、インターネットなどで使い道を公表しなければならないとも定めている。

国が集めた金を使い道を限って自治体へ配る仕組みは、ほかにもある。交通違反の反則金を原資に信号機やカーブミラーの費用へ充てる交付金は、信号機やカーブミラーの財源は交通反則金 9月期の交付金は180億1000万円 47都道府県すべてで前年同期を下回るで伝えたとおり、同じ9月期に180億1000万円が交付された。

森林の少ない東京都が長野県を上回る

配分に人口の25%分が入っているため、森林の乏しい都市部にもまとまった額が回る。今回の市町村分を都道府県別に合計すると、東京都は9億2700万3000円で、長野県の9億1537万2000円、宮崎県の9億1386万7000円を上回った。神奈川県は6億1326万4000円、大阪府は5億8884万9000円、埼玉県は5億7965万5000円である。

最も多いのは北海道の22億1402万5000円で、次いで高知県の10億4390万8000円、岐阜県の9億9831万円と続く。最も少ないのは沖縄県の1億466万9000円、次いで香川県の1億504万4000円だった。北海道は沖縄県の約21倍にあたる。

この人口の比重は一度引き下げられている。林野庁の令和6年度税制改正事項の資料によると、同年度の改正で私有林人工林面積の割合を50%から55%へ、人口の割合を30%から25%へ見直した。都市部への配分が多すぎるという指摘を受けた調整で、法律の附則も、改正後の規定は令和6年度以後の分に適用すると定めている。

都市の住民が納めた金が森林のある地域へ回るという点では、寄付を通じて同じ流れを作る制度もある。総務省が対象団体を毎年指定するふるさと納税は、ふるさと納税の対象は1781団体 2026年10月から1年間 今回の指定取消はゼロ 東京都と昨年除外の6市町は申し出ずで伝えたとおり、10月から新しい1年が始まったところである。

譲与629億円に対し、使われたのは520億円

配られた金が使い切られているわけではない。林野庁によると、令和6年度は総額629億円(市町村566億円、都道府県63億円)が譲与されたのに対し、市町村と都道府県を合わせた活用額は520億円だった。差は109億円で、譲与額の17%にあたる(本紙の単純計算)。

もっとも、活用額は年々増えている。令和元年度96億円、2年度210億円、3年度270億円、4年度399億円、5年度464億円、6年度520億円と、譲与開始からの6年間で5倍を超えた。取り組みの実績としては、市町村が実施した間伐などの森林整備が令和6年度に約6万4000ヘクタールに達し、令和元年度の10倍以上になったという。都道府県はすべてが市町村への情報提供や研修などの支援を行い、9割が林業の担い手対策に、7割が木材利用や普及啓発に取り組んだ。

自治体の財政全体でみれば、この譲与税は大きな額ではない。総務省が9月29日に公表した令和7年度の決算速報では、都道府県の経常収支比率、92.2%から93.0%へ悪化 市町村は93.8%から93.3%へ改善 総務省の令和7年度決算速報 財政再生団体は夕張市だけのとおり、都道府県の歳入は60兆7000億円、市町村の歳入は74兆5000億円に上る。それでも、使い道が森林に限られた財源が毎年600億円台で入ってくることの意味は、森林を多く抱える市町村ほど大きい。次の譲与は令和9年3月に行われる。