総務省は10月30日、テレビ放送に字幕や音声解説、手話を付けた番組の2025年度(令和7年度)の実績を公表した。国の指針が字幕を付ける対象と定める番組のうち、字幕が付いた番組の割合は、NHK総合と在京キー5局、在阪準キー4局、在名広域4局がいずれも100%だった。系列の県域局101局の平均は90.4%で、2027年度までに80%以上とする目標を全局が上回った。一方、系列に属さない独立県域13局の平均は43.1%で、前年度の46.3%から下がった。
字幕は大手局で100%、独立局は平均43.1%
字幕放送は、番組のせりふや音声を文字で画面に出す放送で、耳の不自由な人や高齢者が主な利用者になる。総務省は2018年2月に「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」を定め、放送局ごとに字幕・解説・手話の普及目標を示している。
実績は、指針が対象とする番組に占める字幕番組の割合と、総放送時間に占める字幕放送の時間の割合の2つで示される。対象番組は、午前6時から翌午前1時(25時)までのうち連続した18時間に放送される番組から、複数の人が同時に話す生放送、外国語の番組、大部分が器楽演奏の音楽番組、権利処理上の理由で字幕を付けられない番組を除いたものだ。調査は2025年5月26日〜6月1日と12月1日〜7日の2週間をサンプルにしている。
対象番組での字幕の割合は、NHK教育が98.3%、在京キー5局・在阪準キー4局・在名広域4局が100.0%だった。系列県域101局の平均は90.4%(前年度89.1%)で、最も低い新潟総合テレビ(NST)でも81.4%と目標の80%を超えた。
独立県域13局は、とちぎテレビ、群馬テレビ、テレビ埼玉、千葉テレビ放送、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)、テレビ神奈川、岐阜放送、三重テレビ放送、びわ湖放送、京都放送、サンテレビジョン、奈良テレビ放送、テレビ和歌山の各局を指す。指針は独立局(独立U局)に数値目標を置かず、「できる限り多くの番組に字幕付与」と求めるにとどめている。平均43.1%のうち、最も低いのは京都放送の21.6%、次いでとちぎテレビの22.4%で、最も高い東京メトロポリタンテレビジョンも62.9%だった。
指針の対象番組に占める字幕番組の割合(2025年度)(%)
数値で見る(単位: %)
| 項目 | % |
|---|---|
| NHK総合 | 100.0 |
| NHK教育 | 98.3 |
| 在京キー | 100.0 |
| 在阪準キー | 100.0 |
| 系列県域 | 90.4 |
| 独立県域 | 43.1 |
総放送時間で見ると、字幕放送の割合はNHK総合が91.8%、在京キー5局の平均が71.7%、系列県域局が60.7%、独立県域局が18.5%だった。深夜・早朝や生放送の多い時間帯まで含めると、字幕の付かない時間が局によって大きく残る。在京キー5局を局別に見ると、テレビ朝日が80.4%、TBSテレビが77.2%、フジテレビジョンが72.2%、日本テレビ放送網が65.6%、テレビ東京が63.1%だった。
解説放送、県域局の15局が10%に届かず
解説放送は、登場人物の動きや場面の様子をナレーションで補う放送で、目の不自由な人が副音声で聞く。指針は、午前7時から深夜0時までの番組のうち、権利処理上の理由で解説を付けられない番組や2か国語放送、5.1チャンネルのサラウンド放送などを除いたものを対象とする。
2027年度までの目標は、NHK総合と県域局以外の民放が対象番組の15%以上、NHK教育が20%以上、系列の県域局は10%以上に「努める」とされている。2025年度の実績は、NHK総合が17.5%、NHK教育が23.3%で、ともに目標を上回った。在京キー5局の平均は21.4%、在阪準キー4局は21.7%、在名広域4局は24.3%だった。
在京キー5局の内訳は、フジテレビジョン26.2%、テレビ朝日25.2%、TBSテレビ24.9%、テレビ東京16.7%、日本テレビ放送網15.4%。日本テレビは目標の15%をわずかに上回る水準だった。
系列県域101局の平均は15.3%で、前年度の14.3%から上がった。ただ局別では15局が10%を下回った。最も低い琉球朝日放送が6.1%で、アイビーシー岩手放送7.8%、テレビ山口7.9%、テレビ大分8.2%と続く。独立県域13局の平均は1.6%で、三重テレビ放送、千葉テレビ放送、サンテレビジョンの3局は0.0%だった。
手話はNHK総合が週1時間21分、民放は2局が目標未満
手話放送は、手話通訳者の映像を画面に入れる放送だ。実績は、1年間の手話放送の総時間を365日で割り、7を掛けた「1週間当たりの時間」で示される。
指針の目標は2027年度までに、NHK総合が週30分以上、NHK教育が週5時間以上、県域局を除く地上民放が週15分以上となっている。2025年度は、NHK総合が週1時間21分で前年度より9分増え、目標を大きく上回った。NHK教育は週4時間44分(前年度比2分増)で、目標の5時間を16分下回った。
| 局 | 字幕(総放送時間比) | 解説(対象番組比) | 手話(週当たり) |
|---|---|---|---|
| 日本テレビ放送網 | 65.6% | 15.4% | 15分 |
| TBSテレビ | 77.2% | 24.9% | 40分 |
| フジテレビジョン | 72.2% | 26.2% | 29分 |
| テレビ朝日 | 80.4% | 25.2% | 22分 |
| テレビ東京 | 63.1% | 16.7% | 25分 |
出典: 総務省「令和7年度の字幕放送等の実績」別表1〜3
民放の平均は在京キー5局が週26分(前年度比5分減)、在阪準キー4局が23分、在名広域4局が24分だった。局別に見ると、目標の対象となる13局のうち、名古屋テレビ放送が週11分、読売テレビ放送が週14分で15分を下回った。日本テレビ放送網と中京テレビ放送はちょうど15分だった。
数値目標の無い県域局では、独立県域13局の平均が週1時間24分と、キー局の平均の3倍を超えた。系列県域101局の平均は22分で、テレビ宮崎とテレビ愛媛は0分だった。
2027年度の目標期限、指針は「より高い目標」も求める
現行の指針は2018年2月7日に策定され、2023年10月17日に改定された。目標は2027年度までの数値で、改定時の意見募集には13件の意見が寄せられた。地方局にも字幕の数値目標を設けるべきだという意見や、解説放送の目標を25%以上に引き上げるよう求める意見に対し、総務省は2023年8月の研究会報告書を踏まえ、対象と目標値は現行のものを維持する考えを示した。
指針は、すでに目標を達成した放送局に対し「より高い目標値を自主的に設定」し、情報アクセシビリティの向上に取り組むことが望ましいとしている。生成AIの発展にも触れ、字幕や解説への活用について「ポテンシャルとリスクの両面がある」と認識しつつ、利用者を含めた意見を踏まえて動向を注視するとした。総務省は毎年度の実績を取りまとめて公表し、取り組みの経過を確認している。
2025年度の実績では、大手局の字幕は対象番組のすべてに行き渡った。一方、独立県域局の字幕と解説は低い水準にとどまり、系列県域局の一部の解説と民放2局の手話は、2027年度までの目標をまだ下回っている。
