介護保険で要介護または要支援の認定を受けている人は、令和7年3月末時点で721万人である。厚生労働省の令和6年度介護保険事業状況報告(年報)によると、前年の令和6年3月末の708万人から12万人、1.8%増えた。65歳以上の第1号被保険者に占める認定率は、19.4%から19.7%へ上がっている。2000年4月に始まった制度は24年を超え、利用者は当初の約3.6倍になった。誰が保険料を払い、どう認定され、費用を誰が負担しているのか。制度の骨格を厚労省の資料から順に押さえる。
保険料は40歳から、サービスを原因を問わず使えるのは65歳以上
介護保険の加入者は二つに分かれる。65歳以上が第1号被保険者、40〜64歳の医療保険加入者が第2号被保険者である。厚労省の制度概要資料が示す令和4年度末の数では、第1号被保険者が3585万人(65〜74歳1636万人、75歳以上1949万人)、第2号被保険者が4188万人だった。
二つの違いは人数ではなく、使える条件にある。65歳以上は原因を問わず、寝たきりや認知症などで介護が必要な「要介護状態」、日常生活に支援が必要な「要支援状態」になればサービスを受けられる。一方、40〜64歳は末期がんや関節リウマチといった加齢に起因する病気(特定疾病)が原因の場合に限られる。交通事故による障害では第2号被保険者は対象にならない。
保険料の集め方も違う。第1号被保険者の分は市町村が徴収し、原則として年金から天引きする。第2号被保険者の分は、加入している健康保険組合などの医療保険者が医療保険の保険料と一括して集める。実際の認定者数にも差が表れており、令和4年度末で第1号被保険者は681万人(19.0%)が認定を受けていたのに対し、第2号被保険者は13万人(0.3%)にとどまる。
「要支援」と「要介護」はどう違うか 認定は7区分
認定の区分は、軽い側から要支援1、要支援2、要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5の7段階である。要支援は日常生活に支援が必要な状態、要介護は介護が必要な状態を指し、要支援の人が使うのは「予防給付」、要介護の人が使うのは「介護給付」と、給付の枠組みそのものが分かれている。区分ごとに、保険を使えるサービス量の上限(区分支給限度基準額)も決まっている。
令和6年度の認定者の内訳は、要支援1が14.7%、要支援2が14.3%、要介護1が20.7%、要介護2が16.8%、要介護3が13.0%、要介護4が12.5%、要介護5が8.0%だった。要支援1・2と要介護1・2を合わせた比較的軽い側で全体の3分の2近くを占める。寝たきりに近い要介護5は8.0%で、最も少ない。重度の人だけが使う制度ではない。
認定は一次判定と二次判定の二段階で決まる
認定は市町村への申請から始まる。まず市町村の認定調査員が自宅などを訪ね、心身の状況を調べる。この認定調査は全国共通の基本調査74項目と、項目に収まらない事情を書く特記事項から成る。あわせて主治医が意見書を出す。
次に、基本調査の結果と主治医意見書をもとにコンピュータが「要介護認定基準時間」を算出し、状態の維持・改善の可能性を評価する。これが一次判定である。その結果と主治医意見書を、保健・医療・福祉の学識経験者で構成する介護認定審査会が審査して判定するのが二次判定で、これを受けて市町村が認定する。
二段階にしている理由は、全国一律の基準による客観的な判定と、数値に表れない個別事情の反映を両立させることにある。コンピュータ判定だけでは特記事項や主治医の所見を織り込めず、審査会だけでは市町村ごとに判断がぶれる。
認定率は年齢で大きく変わる 85歳以上は58.2%
全体の認定率19.7%という数字は、年齢層をまとめた平均にすぎない。厚労省の資料が示す令和4年度末の内訳では、65〜74歳の認定者は71万人で同年齢層の4.3%、75歳以上は610万人で31.3%だった。75歳以上に限ると、7倍以上の開きがある。85歳以上では全体の認定率が58.2%に達し、半数を超える。
この年齢差は、75歳以上の人口2153万人、2026年4月時点で総人口の17.5% 65歳以上全体は1万9千人増で頭打ち 要介護認定率は65〜74歳4.3%に対し75歳以上31.0% で示された構図と重なる。65歳以上の人口全体がほぼ横ばいでも、その中で75歳以上や85歳以上が増えれば認定者数は増える。
介護する側の高齢化も進んでいる。老老介護、75歳以上同士が37.1%で2001年以降で最高 2025年国民生活基礎調査 終日介護する人の64.6%は配偶者 のとおり、介護を担うのが高齢の配偶者という世帯が増えている。
総費用14.3兆円 保険料と公費が半分ずつ
令和7年度予算では、介護給付費が13.2兆円、自己負担や地域支援事業を含めた総費用ベースで14.3兆円になる。財源は保険料50%と公費50%で分け合う構造だ。
保険料側の内訳は、65歳以上が払う第1号保険料が23%(3.0兆円)、40〜64歳が払う第2号保険料が27%(3.6兆円)である。第1号と第2号の割合は、3年間の介護保険事業計画期間ごとに人口で按分して決め直す。公費側は、国の定率負担が20%(2.4兆円)、市町村の財政力の差を埋める調整交付金が5%(0.7兆円)、都道府県が12.5%(1.9兆円)、市町村が12.5%(1.7兆円)となる。施設の給付費だけは割合が変わり、国の定率分が15%、都道府県が17.5%になる。
65歳以上が払う保険料の全国平均(月額・加重平均)は上がり続けている。制度が始まった第1期(2000〜2002年度)の2911円から、第9期にあたる現在(2024〜2026年度)は6225円になった。第5期(2012〜2014年度)に4972円、第7期(2018〜2020年度)に5869円と段階的に上がってきた。
利用者がサービスを使うときの自己負担は原則1割である。ただし一定以上の所得がある人は平成27年8月から2割、平成30年8月から3割になった。1か月に10万円分のサービスを使った場合、1割負担なら1万円、2割負担なら2万円、3割負担なら3万円を支払う。サービス全体の費用規模は介護サービスの費用、2025年度は12兆2208億円で4年続けて増加 利用者は685万1600人 1人あたり月額は鳥取23万3600円、埼玉19万6900円 で確認できる。
24年で利用者は3.6倍 報酬の見直し議論が進む
制度の規模はこの24年で大きく変わった。第1号被保険者は2000年4月末の2165万人から2024年4月末の3591万人へ1.7倍になり、認定者数は218万人から710万人へ3.3倍に増えた。サービス利用者数の伸びは約3.6倍で、被保険者の増え方を大きく上回る。加入者が増えた以上に、使う人の割合が上がったということだ。
給付の内容と単価は3年ごとの介護報酬改定で見直す。次は令和9年度の改定で、社会保障審議会介護給付費分科会での議論が進んでいる。夜間対応型訪問介護は2027年3月末で廃止 統合先の定期巡回に24時間対応を評価する新報酬案 グループホームは3ユニットの夜勤2人体制を拡大案 のように、サービスの再編も論点に上がっている。
厚労省の資料は、85歳以上の人口が2015年から2025年までの10年間は75歳以上人口を上回る勢いで増え、2035年頃まで一貫して増え続けると見込んでいる。認定率が58.2%に達する年齢層が膨らむ局面が、あと10年近く続く。
