インターネットでサブスクリプション(定額を払って一定期間サービスを使い続ける契約)を結んだ人のうち、17.9%が解約に関するトラブルに遭っていた。消費者庁が2026年6月12日に閣議決定・公表した令和8年版消費者白書が、こうした調査結果をまとめた。トラブルとして最も多く挙がったのは「解約手続のページが見つからなかった、ウェブサイトの深い階層にあった」で46.0%。解約を正面から断られたというより、解約の入り口にたどり着けない画面の作りが壁になっている。

ネット通販の利用者の71.6%がサブスクを契約

白書の特集「デジタル化とAI技術の進展で変化する、私たちの消費取引」が、消費者庁の「消費者意識基本調査」(2025年度)を使って分析した。

過去1年間にインターネットで商品・サービスを購入・申し込みしたことがある3,569人のうち、サブスクリプション契約の経験がある人は71.6%だった。年齢層別では20歳代が88.9%で最も高く、30歳代84.2%、40歳代77.6%と続く。60歳代は58.3%、70歳以上は55.2%で、いずれの年齢層でも5割を超えた。定額課金は、動画・音楽の配信から食品の定期購入まで広がり、年齢を問わず日常の買い物に入り込んでいる。

このうち解約トラブルの経験がある人は17.9%。ネット通販の利用者全体でみると、トラブルに遭って解決のために行動した人が8.4%、遭ったけれども特に行動しなかった人が4.4%で、困った人のうち相当数がそのまま泣き寝入りしている計算になる。

契約が多いのは若い世代、困っているのは上の世代

解約トラブルの経験率を年齢層別にみると、60歳代が23.3%で最も高く、70歳以上が21.5%で続いた。50歳代18.3%、40歳代18.2%と下がり、30歳代14.9%、20歳代13.2%、10歳代後半11.1%と若いほど低い。契約している割合は若い世代ほど高いのに、解約で困る割合は上の世代ほど高く、二つの数字が逆を向いている。

トラブルの中身を複数回答で聞いた結果(457人)は、「解約手続ページが見つからなかった、ウェブサイトの深い階層にあった」46.0%、「手続が複雑だった、必要以上に多かった(入力や確認事項が多段階にわたるなど)」45.7%、「オンラインでの解約手続きができなかった(電話・対面のみなど)」30.6%の順だった。以下、「解約手続で過剰な引き留めを受けた」19.7%、「解約窓口の時間が限定されていた」18.8%、「解約可能な期間が短すぎた」18.6%、「事業者と連絡が取れなかった」17.1%と並ぶ。「高額な解約金・違約金の請求を受けた」は7.2%にとどまった。

金銭を直接求められる類型は少なく、上位を占めたのは画面の設計そのものである。白書は、解約トラブルの多くが「消費者の解約を妨げる可能性のあるウェブサイトの表示やデザインによるもの」だと分析している。申し込みはボタン一つで終わるのに、解約だけは階層の奥に置き、電話でしか受け付けない――といった作りが、数字の背後にある。

解約させない手口、規制の議論も進む

申し込みは簡単なのに解約は難しくする画面の作りは「ダークパターン」と呼ばれ、制度の側でも見直しが進んでいる。消費者庁の「デジタル取引・特定商取引法等検討会」が9月10日に公表した中間取りまとめは、SNSのメッセージ勧誘に8日間のクーリング・オフ 消費者庁検討会が中間取りまとめ 解約させない手口も規制対象にと報じたとおり、解約手続きを不当に遅らせる行為や、申し込みに比べて合理的な理由なく複雑な解約手続きを課す行為を、違法行為として規制対象にすべきだとした。解約の入り口を隠す設計が、事業者の自由な工夫ではなく規制の対象になりうる、という整理である。

契約の出口をめぐる見直しは解約手続きだけにとどまらない。消費者契約法の側でも、「キャンセル料が高すぎる」の証明、消費者から事業者へ 消費者契約法の見直し案 解約料の相談は10年続けて年3万件超という形で、解約料が妥当かどうかを事業者に説明させる方向の見直し案が示されている。入り口の勧誘規制が中心だったルールが、出口の側へ広がりつつある。

サブスクリプションをめぐるトラブルは以前から続いており、「お試しのつもりが定期購入」トラブル後絶たず 相談は年8万件超 国民生活センターが注意という相談も高止まりしている。白書の数字は、入り口で意図しない定期購入に誘導される問題と、出口で解約させない問題が地続きであることを示している。

調査の方法

消費者意識基本調査は、消費者の意識や行動、消費者事故・トラブルの経験を把握し、消費者政策の立案に生かすために消費者庁が毎年実施している。2025年度は全国の満15歳以上の日本国籍を持つ人1万人を対象に、400地点(370市区町村)で層化2段無作為抽出法により選び、2025年11月10日から26日まで郵送で配布・回収した(ウェブ回答も併用)。有効回収数は5,473人で、回収率は54.7%だった。白書で使われた3,569人という数字は、この回答者のうち過去1年間にインターネットで買い物をした人にあたる。