総務省統計局の家計調査年報(家計収支編)2025年(令和7年)によると、65歳以上の夫婦のみで世帯主が無職の世帯は、1か月当たりの実収入が25万4395円、消費支出が26万3979円だった。実収入から税や社会保険料を差し引いた可処分所得は22万1544円で、消費支出との差は4万2434円の赤字である。65歳以上の単身で無職の世帯は、可処分所得11万8465円に対し消費支出14万8445円で、2万9980円足りない。世帯主の平均年齢は夫婦世帯が77.6歳、単身世帯が77.8歳である。

家計調査は、統計法に基づく基幹統計「家計統計」を作るための調査で、二人以上の世帯については全国で約5000世帯を標本として毎月調べている。調査市町村を選ぶ単位は168で、層化3段抽出法を用いる。年報は1年分を平均した結果をまとめたものだ。ここでいう「無職世帯」は世帯主が無職の世帯を指し、年金、恩給、仕送り金、保険金、財産収入などで家計を営んでいる世帯が対象になる。

収入の約9割が年金など社会保障給付

夫婦のみの無職世帯の実収入25万4395円のうち、年金など社会保障給付は22万8614円で、89.9%を占めた。残りは世帯主の配偶者の勤め先収入7004円、事業・内職収入6203円、仕送り金662円などである。有業人員は0.09人で、働いて賃金を得ている人がいる世帯はごく一部にとどまる。

単身の無職世帯では社会保障給付が12万212円で、実収入13万1456円の91.4%とさらに高い。勤め先収入はなく、事業・内職収入が1434円、仕送り金が651円だった。

集計の対象は世帯主が無職の世帯なので、働いている高齢者の世帯はここに入らない。65歳以上で働く人自体は増え続けている(65歳以上の就業者943万人で22年連続増 働く人の7人に1人 雇われて働く高齢者の76.1%が非正規)ため、高齢世帯全体の平均ではないことに注意が必要だ。

食料が支出の3割、交際費は月2万3257円

夫婦のみの無職世帯の消費支出26万3979円の内訳は、食料が7万8964円で29.9%と最も多い。次に交通・通信3万1325円(11.9%)、教養娯楽2万6538円(10.1%)、光熱・水道2万3540円(8.9%)と続く。保健医療は1万7941円で6.8%だった。「その他の消費支出」5万1341円のうち交際費は2万3257円あり、冠婚葬祭や贈答など世帯の外へ出ていく支出が月2万円を超えている。教育費は0円である。

住居は1万7739円にとどまる。二人以上の世帯のうち65歳以上の無職世帯の持家率は95.5%で、住宅ローンを払い終えた持ち家が前提になっているためだ。賃貸で暮らす高齢世帯では家賃がこの額に収まらず、同じ収入でも赤字はこれより大きくなる。

無職であっても税と社会保険料の負担は残る。非消費支出は3万2850円で、内訳は直接税1万2547円、社会保険料2万296円だった。公的医療保険や介護保険の保険料、住民税などがここに含まれる。

単身世帯は手取りの4分の1が足りない

単身の無職世帯の平均消費性向は125.3%だった。平均消費性向は可処分所得に対する消費支出の割合で、100%を超えると収入だけでは支出を賄えていないことを示す。125.3%は、手取りが10万円なら12万5300円を使っている状態にあたる。夫婦のみの無職世帯は119.2%だった。

費目別では、光熱・水道が1万5565円で消費支出の10.5%、交際費が1万6956円で11.4%を占め、いずれも夫婦世帯(8.9%、8.8%)より割合が高い。2人で分け合える費目が1人分で割れないため、1人当たりの負担は重くなる。一人暮らしの世帯は国勢調査でも増え続けている(一人暮らしの世帯が2368万9024で全体の41.4% 5年で253万7982増 1世帯当たりは2.10人に 核家族は2010年以降で初の減少)。

世帯主が65歳以上の世帯(総世帯)に占める割合は、夫婦のみの無職世帯が25.3%、単身の無職世帯が32.6%で、合わせて6割近くになる。

足りない分は手元の資産から出ている。黒字の内訳のひとつである金融資産純増は、夫婦のみの無職世帯がマイナス3860円、単身の無職世帯がマイナス6171円で、預貯金や保険などが増えるのではなく減る方向で動いた。

年齢が上がるほど赤字は縮む

二人以上の世帯のうち世帯主が65歳以上の無職世帯を年齢層で分けると、実収入は65〜69歳が29万110円、70〜74歳が28万7725円、75歳以上が25万2798円だった。消費支出は65〜69歳が29万6997円、70〜74歳が28万5844円、75歳以上が24万8460円で、年齢が上がるにつれて少なくなる。

可処分所得と消費支出の差は、65〜69歳がマイナス5万1287円、70〜74歳がマイナス3万7245円、75歳以上がマイナス2万7225円で、年齢が高い層ほど赤字は小さい。収入の減り方より支出の減り方が大きいためだ。65歳以上の無職世帯全体では実収入26万6377円、可処分所得23万1198円、消費支出26万4149円で、差はマイナス3万2951円。世帯主の平均年齢は76.8歳、世帯人員は2.32人である。

無職世帯に限らない二人以上の世帯全体では、消費支出は1か月平均31万4001円だった。世帯主の年齢層別では50〜59歳が36万7643円で最も多く、40〜49歳34万8607円、60〜69歳32万7405円、70歳以上26万4332円と続く。65歳以上は27万5635円で、支出の規模が最も大きい50代の4分の3程度になる。