衆議院が公表した「第222回国会 質問の一覧」によると、10月10日時点で臨時国会に提出された質問主意書は9本で、そのうち8本を志士の会の緒方林太郎議員が1人で出していた。残る1本は統一会派「中道」の西村智奈美議員によるものだった。志士の会は衆議院で最も小さい2人の会派で、所属議員数が465人の院内で、内閣に文書で問いを立てるこの制度を、いま事実上1人の議員が使っている状態になっている。

8本は召集日の10月5日に提出

一覧の表には、番号・質問件名・提出者氏名・経過状況が並んでいる。緒方議員が提出した8本の件名は、番号順に「データセンターに関する質問主意書」「三為取引に関する質問主意書」「国際海峡の慣習国際法化に関する質問主意書」「為替介入の国庫への負担に関する質問主意書」「政府債務残高に関する質問主意書」「いわゆる百三万円の壁への対応の効果に関する質問主意書」「長年続いてきた過度な緊縮志向に関する質問主意書」「特定海域内における軍艦の停泊に関する質問主意書」である。

それぞれの質問答弁経過情報を開くと、8本すべてが「質問主意書提出年月日」を令和8年10月5日としており、会派名はいずれも「志士の会」と記録されている。10月5日は臨時国会の召集日そのもので、国会が開いた初日にまとめて8本を出した形になる。召集の経緯は臨時国会は10月5日召集 9月29日の持ち回り閣議で決定し召集詔書を公布 衆院の選挙制度改革と比例定数削減が焦点のとおりで、衆議院の国会会期一覧でも第222回(臨時会)の召集日は令和8年10月5日、会期は69日と記されている。

内容の幅は広い。データセンターや三為取引といった国内の産業・不動産取引の話から、為替介入の国庫負担・政府債務残高・いわゆる百三万円の壁・緊縮志向という財政と税の話、さらに国際海峡の慣習国際法化・特定海域内における軍艦の停泊という安全保障と国際法の話まで、1人の議員が同じ日に並べて提出している。

9本目の西村議員の「ギャンブルの日常化の防止等に関する質問主意書」は提出年月日が10月7日で、会派名は「中道」。この会派の成り立ちは衆院に統一会派「中道」結成、47人で自民に次ぐ第2会派に 公明出身27人と民主改革18人ら 公明党は28人の復党を承認し衆参49人で扱った。衆議院が公表した会派名及び会派別所属議員数(令和8年9月28日現在)では、自由民主党・無所属の会が315人、中道が47人、日本維新の会が36人、国民民主党・無所属クラブが28人、参政党が15人、チームみらいが11人、日本共産党が4人、志士の会が2人、無所属が6人で、欠員1を含めて計465人となっている。

質問主意書とは何か 答弁は「受け取った日から7日以内」

質問主意書は、本会議や委員会での口頭のやりとりとは別に、議員が内閣に文書で質問し、文書で答弁を得る仕組みである。根拠は国会法の第八章「質問」にある。第74条は「各議院の議員が、内閣に質問しようとするときは、議長の承認を要する」と定め、質問は「簡明な主意書を作り、これを議長に提出しなければならない」としている。議長が承認しなかった質問について議員が異議を申し立てたときは、議長は討論を用いないで議院に諮らなければならない。

第75条は手続の後半を定める。議長または議院が承認した質問は、議長が主意書を内閣に転送する。そして「内閣は、質問主意書を受け取つた日から七日以内に答弁をしなければならない」とし、その期間内に答弁できないときは理由と答弁できる期限を明示するよう求めている。緊急を要するときは議院の議決により口頭で質問できる、という例外が第76条に置かれている。

重要なのは、7日という期限の起算点が「内閣が受け取った日」であって、議員が提出した日ではない点だ。今回の9本は経過状況がすべて「質問受理」で、経過情報の「内閣転送年月日」の欄はいずれも空欄のままである。つまり議長への提出は受理されたが、内閣への転送がまだ記録されておらず、答弁の7日間は動き出していない。「答弁延期通知受領年月日」「答弁書受領年月日」も当然すべて空欄だった。

質問本文はまだ読めない

一覧の表には「質問情報(HTML)」「質問情報(PDF)」「答弁情報(HTML)」「答弁情報(PDF)」の列もあるが、9本すべてでこれらの欄が空になっている。ページには「下記の表で内容がない箇所は、情報登録作業中のものです」という注記があり、各質問の経過情報にも「現時点で情報が未定のもの、もしくは情報がないことが確定したもの」との断りが付く。したがって現時点で公に確認できるのは件名・提出者・会派・提出日・経過状況までで、それぞれの質問が政府に何をどう問うているかという本文は、まだ読めない。

前の国会は42本を15人で分けていた

1人への集中がどの程度珍しいのかは、直前の国会と並べると見えてくる。衆議院の「第221回国会 質問の一覧」を数えると、特別会だったこの国会に提出された質問主意書は42本で、提出者は15人に分かれていた。最も多かったのは長妻昭議員の9本、次が山本ジョージ議員の6本、緒方議員と早稲田ゆき議員が5本ずつ、有田芳生議員が4本と続き、残りは1〜3本ずつだった。緒方議員は前の国会でも上位の常連ではあるが、全体の1割強を占めるにとどまっていた。

ただし会期の長さが違う。国会会期一覧によると第221回(特別会)は令和8年2月18日に召集され7月25日まで、会期は158日あった。これに対し第222回(臨時会)は10月5日召集で会期69日、まだ始まって数日という段階である。42本という数字は5カ月余りの積み上がりで、9本は初週の集計にすぎない。会期が進めば他の議員からの提出も増える余地が大きく、1人8本という偏りが会期末まで続くとは限らない。第221回国会の法案処理の結果は特別国会、内閣提出の64法案はすべて成立 議員立法は59件のうち14件 21件は閉会中審査で次の国会へにまとめている。

それでも、召集初日に1人が8本を投じたという事実は、質問主意書という制度の性格をよく示している。本会議の代表質問や委員会の質疑は、会派の議席数に応じて時間が割り振られる。2人の会派に回ってくる時間は長くない。一方で質問主意書は議長の承認を前提とするものの、議席数に比例して本数が決まる仕組みではなく、内閣には7日以内の文書答弁が義務づけられる。小さな会派の議員が政府に問いを立て、記録に残す経路として、この制度が使われている。