立憲民主党は10月28日、国会内で政調全体会議を緊急に開いた。企業への不正アクセスによる個人情報の漏えいが相次いでいることを受けたもので、関係省庁から対応状況を聞き取るとともに、サイバーセキュリティの強化に向けた政府への緊急提言案を議員の間で協議し、審査した。党が同日、公式サイトに掲載した記事で明らかにした。提言案の具体的な項目と、政府に申し入れる時期は、この記事には書かれていない。政府は来週中をめどに「緊急対策パッケージ」をまとめる方針で、野党第1党が政府に何を求めるかが焦点になる。
徳永政調会長「個人の人生にも関わる」
党の発表によると、会議の冒頭で徳永エリ政務調査会長があいさつした。AIを悪用した個人情報の漏えいなどの問題について、党として提言をまとめ、政府に緊急に要請すべきだという声が党内から上がり、それを受けて提言案を速やかに取りまとめたと経緯を説明した。
徳永氏は、GMOに関連する事案など、不正アクセスや情報漏えいが相次いでいることに触れ、「個人の人生にも関わるような大きな問題」だと述べた。10月1日に施行されたサイバー対処能力強化法にも言及し、政府のサイバーセキュリティ対策の実効性が問われているとの認識を示した。そのうえで、被害の現状、政府の受け止め、今後の対応について、関係省庁から説明を聞く必要があると述べた。
今回の党の発表は、ヒアリングに出席した省庁の名前や、各省庁の説明の内容には触れていない。
前日の参院財政金融委でも政府の対策をただす
党はこの前日の27日、参院財政金融委員会の質疑でもサイバー対策を取り上げた。党の発表によると、「立憲民主・無所属」の森ゆうこ、勝部賢志の両議員が質問に立った。
森氏は、急速に進化するAIが金融システムに及ぼす脅威について「あらゆるインフラが攻撃される可能性も否定できない」と述べ、サイバー攻撃で決済システムの信頼が失われるおそれを指摘した。勝部氏は、プログラミング言語「PHP」で作られた古いシステムを使い続けることの危険や、政府機関への攻撃と被害の状況を確かめたうえで、「対策を講じ脆弱性が明らかになっているシステムを放置せず、政府全体で早急に対応すべきではないか」と求めた。
党の発表によると、片山財務相は、金融機関への対策の要請、業界横断のサイバー演習、情報共有の強化など進めている取り組みを説明した。首相から指示のあった緊急対策パッケージを来週中に取りまとめるとも答えた。森氏はこれに対し、国民が最も心配するのは自分の財産が守られるかどうかだとして、誰が責任を持って保証するのかを検討すべきだと提起した。「デジタルだけでなくアナログの部分をできるだけ温存しておくことが必要ではないか」とも述べた。答弁の内容は党の発表による。本紙は参院の会議録をまだ確認できていない。
政府は来週中に「緊急対策パッケージ」
政府側では、高市首相が10月26日、首相官邸で第1回「サイバーセキュリティに関する関係閣僚会議」を開いた(サイバー対策の関係閣僚会議が初会合 首相、来週中に「緊急対策パッケージ」)。官邸の発表によると、首相は「我が国の企業などに対する相次ぐサイバー攻撃によって、大規模な『情報漏えい被害』などが多数、生じています」と述べ、漏えいした情報を悪用した二次被害への不安が高まっているとして、対策を急ぐ考えを示した。
首相が閣僚に出した指示は、大きく分けて4つある。
| 分野 | 主な指示 |
|---|---|
| 被害企業の支援 | IPA(情報処理推進機構)と警察の相談対応の充実、中小企業向け「サイバーセキュリティお助け隊」の拡充 |
| 情報の集約と発信 | 基幹・重要インフラ以外も含め、所管業界の被害情報を国家サイバー統括室へ集約 |
| 攻撃への対処 | 「アクセス・無害化措置」を含む対処の選択肢の実行、同盟国・同志国との攻撃主体の特定 |
| 脆弱性の点検 | 高性能AIを使った模擬攻撃テストと、政府システムの脆弱性チェックの前倒し |
首相は「来週中を目途に、政府としての『緊急対策パッケージ』を取りまとめます」と述べ、各閣僚に財政措置を含めて早急に検討するよう求めた。
与党では、自民党の国家サイバーセキュリティ戦略本部が23日、首相官邸で首相に提言を申し入れている(サイバー対策で自民が首相に提言 マイナカード取得の義務付け検討、官邸に「対処本部」)。政府のパッケージは来週中にまとまる見通しで、立憲の提言は与党の提言より後に出ることになる。政府が野党の提言をパッケージに反映させるかどうかは、現時点では分からない。
GMOの事案、脅迫と情報の公開に発展
GMOインターネットグループでは、同社のサービス「お名前.com デスクトップクラウド」が不正アクセスを受けた。徳永氏がどの事案を指したのかは、党の発表には書かれていない。同社が28日に公表した第13報の経緯によると、10月21日午前4時にサービスを止めて第1報を出し、同時に約80億円を要求する脅迫メールを受け取った。22日に警察に相談し、24日には利用者への見舞金の支払いや損失の補償を決めるとともに、政府関係機関に能動的サイバー防御の適用を要請した。
27日には、犯人による情報の公開について利用者に知らせた。同社によると、利用者の情報とされるものを載せていた犯人側のサイトは、関係事業者と連携して対応した結果、28日午前4時ごろにドメインが止まった。同社は28日正午、犯人の特定と検挙につながる情報を募る「GMOサイバー犯罪撲滅・懸賞金」のサイトを開いた。報奨金の上限は総額100万米ドル(同社の参考換算で約1億5000万円)で、開設から6時間で113件の情報が寄せられたという。
サイバー対処能力強化法は、重要な電子計算機への攻撃による被害を防ぐための法律で、2025年5月16日に成立し、同23日に公布された。内閣官房によると、同法とあわせて関係法律の整備法(令和7年法律第43号)も成立した。首相が26日の会議で、「アクセス・無害化措置」を含む対処の選択肢を「戦略的に選択し、実行」すると述べたことで、施行後の運用が実際に問われる局面に入った。
立憲が政府に申し入れる提言の中身は、党がまだ公表していない。政府のパッケージがまとまる来週までに、党がどの項目を求め、政府がどう応じるかが次の焦点になる。
