農林水産省は10月9日、今夏の梅雨前線豪雨から台風第25号までの一連の気象現象による災害(仮称)について、被災した農林水産業施設の復旧に必要な「災害査定」の手続きを簡素にする「大規模災害時の災害査定の効率化」の適用対象を追加すると発表した。これまでの農地、農業用施設、林道に加え、農林水産業共同利用施設、海岸、林地荒廃防止施設、地すべり防止施設、漁港を対象に加えた。いずれかの施設で対象となった区域は、北海道から沖縄県まで42都道府県に及ぶ。

漁港や海岸など6種類が新たに対象

災害査定は、被災した施設の災害復旧事業について国が行う査定で、原則として現地調査で行う。農水省は今回、激甚災害(本激)の指定の事前公表が追加で行われたことを受けて、適用対象を広げたと説明している。農水省の資料によると、この一連の災害については8月27日、9月4日、9月25日に激甚災害の指定見込みが公表されている。

対象となる施設は二つの法律で分かれる。「農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律」(暫定法)が定める農地、農業用施設、林道、農林水産業共同利用施設と、「公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法」(負担法)が定める海岸、林地荒廃防止施設、地すべり防止施設、漁港だ。9月14日の第2回の発表では、対象は暫定法の農地、農業用施設、林道の3種類だけだった。

今回加わった施設ごとの対象区域は、農林水産業共同利用施設のうち農業関係が千葉、岐阜、三重、広島、宮崎、鹿児島、沖縄の7県、水産関係が茨城、千葉、神奈川の3県。海岸(農業関係)は三重、香川、高知の3県、林地荒廃防止施設は千葉、神奈川、長野、三重、滋賀、広島、長崎、熊本、宮崎、沖縄の10県、地すべり防止施設(農業関係)は新潟、石川、徳島、佐賀の4県、漁港は千葉、東京、和歌山、香川、沖縄の5都県となった。

農地は35道府県、林道は30道府県に

従来の3種類でも区域が増えた。農地は9月14日時点の29道府県から35道府県になり、茨城、神奈川、岐阜、兵庫、和歌山、鳥取の6県が加わった。農業用施設は27府県から33府県となり、青森、茨城、神奈川、岐阜、島根、岡山の6県が加わった。林道は24道府県から30道府県となり、青森、福島、茨城、岐阜、兵庫、島根の6県が加わった。

対象区域は、この一連の災害で農水省に報告された被災箇所数が、過去5年の平均の被災箇所数(本激を除く)を超えた区域とされている。今回は10月8日時点の被害報告で算定した。農水省は、その後の調査結果によっては、ここに挙げた施設や区域以外も必要に応じて対象にするとしている。

全施設を合わせた対象区域は、9月14日時点の35道府県から42都道府県に広がった。新たに入ったのは東京、茨城、神奈川、岐阜、島根、鳥取、沖縄の7都県だ。施設の種類別にみると、千葉県が9種類のうち海岸と地すべり防止施設を除く7種類で対象となり、最も多い。次いで三重県が6種類、香川県と広島県が5種類だった。台風第25号の被災自治体に対する国の財政面の対応は、別の記事で伝えている(徳之島町に2億9400万円、横須賀市に14億5500万円 総務省が10月6日に普通交付税の繰上げ交付を決定 台風25号の交付総額は31市12町1村の160億2300万円)。

書類だけの「机上査定」の上限を引き上げ

効率化の中身は三つある。一つ目は「机上査定」の上限額の引き上げだ。災害査定は原則として現地調査で行うが、机上査定は会議室などで書類だけで済ませる。通常、机上査定にできるのは暫定法の施設で500万円未満、負担法の施設で1000万円未満の案件に限られる。これを、査定を見込む件数のおおむね7割(農地と農業用施設は9割)が収まる額まで引き上げる。

二つ目は「採択保留」の金額の引き上げだ。採択保留とは、事業費の決定見込み額が一定額以上となる場合に、事業の採択を現地で行わず本省で行う仕組み。通常は暫定法の施設で2億円以上、負担法の施設で4億円以上が対象になる。これを、2億円(負担法の施設は4億円)を超えて採択保留となった件数のおおむね6割までの額へ引き上げ、現地で採択を決められる範囲を広げる。

三つ目は、査定設計書に添付する図面などの簡素化だ。設計図書を作る際に、航空写真や代表的な断面の図面などを使えるようにする。

農水省は効果として、机上査定の拡大で現地調査の件数が減り査定期間が短くなること、採択保留の件数が減り工事に早く着手できること、図面や写真の簡素化で査定資料の準備期間が短くなることを挙げている。この効率化は大規模災害時に被災自治体などの査定にかかる期間を大幅に縮めるルールとして、2017年1月13日から設けられている。