国民民主党は10月1日、9月6日に実施した代表選挙で投票用紙が届かない事態が相次いだ問題について、党の代表選挙検証委員会がまとめた報告書(公表版)を公式サイトで公表した。報告書の日付は9月30日である。委員長は足立康史参院議員、副委員長は西岡秀子衆院議員と礒﨑哲史参院議員が務め、弁護士2人が顧問として調査方針と運営に関わった。検証委員会は9月11日に設置され、調査は同月25日までの2週間で行われた。
発送4万5155人に対し、返送は3561件
投票用紙の発送対象は特別党員を含む党員・サポーター4万5155人で、9月17日15時現在の返送は3561件だった。返送率は約7.9%で、前回2023年の代表選挙の約3.0%から悪化している。報告書は、作成時点でも投票用紙の返送が続いており未達数が確定していないため、数値は暫定的なものだと注記した。
返送された3561件のうち、電子投票に必要な情報が送られたのは440件にとどまる。投票用紙の未着を理由とする権利回復措置は、9月3日10時現在で計1861件(申請フォーム773件、議員経由1088件)が実施された。
未着の一因は住所データの欠損だった。党が名簿システムの提供元に特別に依頼してデータを一括出力した際、長い住所はセルが分割されて出力され、分割された住所の一部が欠けていた。住所が一部でも欠けていた件数は特別党員217件、党員6186件、サポーター1万1399件の計1万7802件で、発送対象の約39.4%に当たる。党は受け取ったデータを検査することなく郵送委託先に渡しており、委託先から納入されたエラーリストでも欠損は検知されなかった。
有権者名簿そのものに載っていなかった人もいた。支部が党員・サポーターを名簿システムに適切に登録しなかったため、計39支部で4423人が名簿から漏れた(全部未登録が4支部4041件、一部未登録・承認漏れが35支部382件)。この結果、有権者数は8月14日付の公告では党員1万2578人・サポーター3万2115人だったものが、9月3日付の公告では党員1万3857人・サポーター3万5259人に修正された。
このほか、国籍記載欄にチェックがないなどの理由で投票用紙の送付先から除外されたサポーターは2598人にのぼる。報告書は「この除外は、国籍の有無を確認したものではなく、チェック欄の記載の有無によるものである」と明記した。氏名が同一で住所が異なるため別々に発送された件数は841組(同一人物なら重複して送られた投票用紙は923通)だった。
名簿の実務を担っていたのは2人
報告書は、生じた問題を「特定の担当者個人の過失によるものというよりも、名簿の管理を各県連・各支部に委ね、登録状況や出力データを確認する工程を設けず、選挙事務に必要な期間と人員を確保してこなかった党の仕組みと体制の不備が重なって生じたもの」と認定した。
体制面の記述は具体的である。党の事務局18人は全員が代表選挙管理委員会の事務局とされていたが、有権者名簿の突き合わせなどの実務を担っていたのはわずか2人で、1人は名簿システム担当で広報を兼務、もう1人は郵送委託先との連絡担当で日程調整を兼務していた。前回の代表選挙で名簿を担当していた職員は2026年3月末に退職し、後任への引き継ぎは退職の直前に行われていた。報告書は「4万人を超える党員・サポーターの名簿管理をわずか2名で担うことは現実的ではない」と述べ、「党は、代表選挙の円滑な実施に耐えうる体制を確保しておくべきであった」と結論づけた。
名簿の中身にも問題があった。党の組織規則は党員・サポーターの名簿に生年月日などを必ず記載するとしていたが、実際の登録で必須とされていたのは氏名と住所だけで、生年月日の未入力や誤った値も見られた。1人が複数の支部に所属することも可能だった。名寄せは氏名と住所の一致のみを基準とする簡易な方法で行われ、判定の基準や結果の記録も示されていない。
検証委員会が設置されるまでの経緯は、国民民主党、新執行部が発足 玉木代表が続投、代表選で争った橋本氏を幹事長代理に 代表選の検証委員会も設置 で報じている。
「結果は変わらなかった」としつつ、軽く扱うなと明記
代表選は、党員・サポーター、地方自治体議員、国会議員の3つの枠に持ち点を割り振って数える方式で行われた。3つの枠はいずれも53点ずつで、全体で159点を配分する。玉木雄一郎候補の得票は党員・サポーター枠42点、地方自治体議員枠43点、国会議員枠42点の合計127点、橋本幹彦候補は同じ順に11点、10点、11点の合計32点だった。両者の差は95点で、代表の選出に必要な過半数は80点である。
報告書は、仮に党員・サポーター枠53点のすべてを橋本候補が得たとしても合計は玉木候補85点、橋本候補74点となり、「選挙の結果は変わらなかったものと推測される」とした。そのうえで「代表選挙は、党員・サポーターが党の代表の選出に直接参加する機会であり、一人ひとりの投票の機会は、選挙の結果を左右するか否かにかかわらず保障されなければならない。結果に影響がなかったことをもって、本代表選挙で生じた問題を軽く扱うことは許されない」と記した。
判断の経緯についても踏み込んでいる。代表選管は8月10日に最初の未登録が判明した時点では新たな名簿登録を認めなかったが、8月31日の説明会で両候補の陣営から権利回復措置を求める意見が出たことなどを受け、9月1日に一転して資格回復を認めた。報告書は、この8月10日と8月29日の判断が「代表選管の委員長が党の幹事長とも協議した上で行ったもの」だったとヒアリングで確認したと記し、有権者の資格に関わる判断は判断者と理由を明らかにして行われるべきだと指摘した。
検証の限界も自ら明記
検証委員会は、調査が尽くせなかった範囲も報告書に書き込んだ。党員名簿と会員名簿は組織規則により非公開とされているため、検証委員会は実際の名簿データの確認や名寄せの作業ができず、報告書の数値は事務局から報告を受けた数字を整理したものだという。返送の原因別の内訳、返送者と権利回復措置の対象者および投票者の突き合わせ、電子投票の案内メールの実際の到達状況については「資料の提出を受けることができず、検証を尽くすことができなかった」と記した。
代表選管の判断の多くについても、判断者と理由を記載した決定文書は示されず、一部は存在しないとの回答だったという。ヒアリングの対象は党本部事務局の職員1人と代表選管委員1人の計2人で、補足的に党の顧問弁護士に事実関係の確認を行った。
一人一IDの名簿管理と、執行部の不関与を提言
再発防止策として、報告書は選挙時に名簿を作り直す運用から、平時から正確な基本情報を一元管理して選挙時に有権者を抽出する運用への転換を求めた。具体的には、一人一IDなどで同一人物を継続的に識別すること、所属先を原則1つに整理すること、氏名・住所だけでなく複数の情報を用いた名寄せと重複・欠損の自動検知を行うこと、国籍などの資格確認に必要な項目を必須化すること、党本部が事業者に依頼せず自らデータを出力して件数や項目の欠落を検査できるようにすること、党員・サポーター本人が自らの登録内容を確認して訂正を求められるようにすることなどを挙げた。
運営体制については、代表選管の判断の独立性を確保するため「代表選管の判断に党執行部の役職者が関与することは原則として避け」、例外的に意見を求める場合は相手方・内容・日時を記録すべきだとした。名簿の補正や投票期限の変更といった重要な判断は、判断者・根拠・理由を記載した決定文書を作成して保存するよう求めている。選挙に関する一斉メールは、送信認証を設定して到達状況を確認できる党の公式ドメインから送るべきだとも指摘した。今回の電子投票の案内メールは、郵送委託先が代表選挙のために新たに取得したドメインから計15回・6795件が送信され、377件が配信エラーとなっていた。
投票の機会を失った党員・サポーターへの対応としては、党が名簿上把握できる人には個別に連絡して登録内容の確認と訂正を求めること、国籍欄が未記載だったために除外されたサポーターなどには実態を調査して資格回復を案内すること、問い合わせに応じる窓口を設けることを挙げた。代表選管が回答を保留している不服申立てについては、代表選規則第23条に基づき速やかに審査して回答すべきだとしている。
