日本国憲法は11月3日、1946年の公布から80年を迎えた。翌47年5月3日に施行されてから、条文は一度も改正されていない。デジタル庁のe-Gov法令検索に載る日本国憲法の改正履歴は、1946年11月3日公布・47年5月3日施行の制定時の1件だけだ。改正には衆参各院の総議員の3分の2以上の賛成による国会の発議と、国民投票での過半数の賛成が要る。衆議院の憲法審査会は今の第222回国会でも10月22日と29日の2回開かれ、議論を続けている。

GHQ草案から帝国議会の可決まで

国立国会図書館の電子展示会「日本国憲法の誕生」の年表と概説によると、憲法は敗戦の翌年、1年足らずのうちに形になった。

1946年2月1日、毎日新聞が政府の「松本委員会試案」を報じた。連合国軍総司令部(GHQ)のマッカーサー最高司令官は2月3日に3原則を示し、民政局に草案の作成を指示した。日本政府は2月8日に「憲法改正要綱」をGHQに出したが、GHQは13日にこれを拒み、自らの草案を日本側に手渡した。政府はGHQとの協議を踏まえて3月6日に改正要綱を発表し、4月17日にはひらがな口語体の「憲法改正草案」を公表した。

草案はその日に枢密院へ諮られた。幣原内閣の総辞職と5月22日の第1次吉田茂内閣の発足で一度撤回され、修正のうえ再び諮られて、6月8日の枢密院本会議で可決された。この間の4月10日には、女性の選挙権を認めた新しい選挙法の下で衆議院総選挙が行われている。

「帝国憲法改正案」は6月20日、明治憲法第73条の規定に従い、勅書で第90回帝国議会に出された。衆議院では芦田均を委員長とする委員会が審議し、小委員会が第9条第2項の冒頭に「前項の目的を達するため」の文言を加える、いわゆる「芦田修正」を含む修正案をまとめた。8月24日の衆議院本会議では賛成421票、反対8票で可決された。

貴族院は、GHQ側の求めに基づく「文民条項」の挿入など4項目を修正し、10月6日に可決した。改正案は衆議院へ回され、翌7日に可決された。10月29日に枢密院が再び可決し、天皇の裁可を経て、11月3日に「日本国憲法」として公布された。

公布の半年後に施行、2つの日付は祝日に

憲法第100条は「この憲法は、公布の日から起算して六箇月を経過した日から、これを施行する」と定める。この規定により、施行日は1947年5月3日になった。国会図書館の概説によると、当日は皇居前広場で記念式典が開かれた。施行に合わせて新しい皇室典範が法律として制定され、国会法、内閣法、裁判所法、地方自治法なども新たにつくられた。刑法や民法は憲法の内容に合わせて改正された。

公布から約1か月後の46年12月1日には、新憲法の精神を広めるための「憲法普及会」ができた。会長には衆議院で審議の中心にいた芦田均が就き、講演会や解説書の刊行などに取り組んだ。

公布と施行の2つの日付は、いまも国民の祝日として残っている。1948年の国民の祝日に関する法律は、11月3日の「文化の日」を「自由と平和を愛し、文化をすすめる」日、5月3日の「憲法記念日」を「日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する」日と定めた。文化の日の説明に憲法の文字は無いが、日付は公布の日と同じだ。

改正には総議員の3分の2と国民投票

憲法第96条は、改正について「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない」と定める。承認には、特別の国民投票か国会が定める選挙の際の投票で「その過半数の賛成を必要とする」とする。

この手続きを具体的に定めたのが、日本国憲法の改正手続に関する法律(国民投票法)だ。衆議院憲法審査会の関係資料集(令和8年版)によると、法律は2007年5月14日に参議院本会議で可決、成立し、18日に公布された。全面施行は10年5月18日だった。

資料集が整理する手続きはこうだ。議員が憲法改正原案を出すには、衆議院で100人以上、参議院で50人以上の賛成が要る。原案は内容が関連する事項ごとに分けて出す。憲法審査会では公聴会を必ず開き、審査会の議決は出席委員の過半数、本会議では総議員の3分の2で決める。国民投票は、国会の発議から60日以後180日以内で国会が決めた日に行い、18歳以上の日本国民が投票できる。

国民投票法はこれまでに何度か改正された。資料集によると、2014年の改正は制定時の附則に残された「3つの宿題」に対応したもので、6月20日に公布され、即日施行された。21年の改正は、公職選挙法で先に改めた投票環境の仕組みをそろえる内容で、9月18日に施行された。前の第221回国会でも、開票立会人の選び方やFM放送による広報を加える改正案が成立した(改正国民投票法が施行、開票立会人や在外投票の手続きを選挙にそろえる 政令案に意見1万7737件)。

憲法調査会から憲法審査会へ

国会で憲法を議論する場は、四半世紀前に生まれた。資料集の年表によると、1999年に国会法が改正され、2000年1月20日に衆参両院に憲法調査会が置かれた。衆議院の調査会は05年4月15日に報告書を議長に出し、憲法改正の手続き法を「早急に整備すべきであるとする意見が多く述べられた」と報告した。参議院の調査会も同月20日に報告書を出した。

国民投票法の成立を受け、07年8月7日に衆参両院に憲法審査会が置かれた。衆議院の審査会は、憲法と憲法に密接に関連する基本法制を幅広く調べ、憲法改正原案や国民投票に関する法律案などを審査する機関だ。ただ、審査会の規程は衆議院で09年6月、参議院で11年5月に議決され、委員が選ばれたのは11年10月20日だった。設置から実際に動き出すまで4年余りかかった。

衆議院憲法審査会の会議日誌によると、第221回国会(2026年2月18日〜7月25日)では14回開かれた。テーマは憲法審査会の今後の議論の進め方、緊急事態条項、国民投票、9条、参議院の合区と地方公共団体などで、5月14日と21日には衆議院法制局の「『緊急事態条項』のイメージ(案)」を基に議論した。6月には国民投票法の改正案を審査した。

今の第222回国会(10月5日召集)では、10月22日の第1回でスイス、ハンガリー、イタリアの憲法と国民投票制度を調べた議員団の調査の概要を聞いた。29日の第2回では、国民投票広報協議会の関係諸規程を取り上げた。審査会のトップページは11月3日時点で「開会予定の審査会はありません」としている。会期は12月12日までだ。

意見窓口に4万3658件、多いのは「戦争放棄」

衆議院憲法審査会は、意見窓口「憲法のひろば」で国民の意見を受け付けている。11月2日に更新された受付概況によると、2026年10月31日までの累計は、憲法調査会のころからの総数で4万3658件、憲法審査会になってからで3万9020件だった。10月の1か月では515件が届いた。

審査会になってからの意見を分野別に見ると、「その他」の3万2548件を除けば、戦争放棄に関するものが8489件で最も多い。最高法規に関するものが7728件、国民投票法制に関する意見が6010件と続いた。1つの意見が複数の分野にわたることがあるため、内訳の合計は総数と一致しない。

「憲法のひろば」に寄せられた意見の分野別件数(件)

戦争放棄8,489最高法規7,728国民投票6,010権利義務1,220改正規定539天皇434
憲法審査会になってからの累計。「その他」(3万2548件)を除く上位6分野。1つの意見が複数の分野にまたがる出典: 衆議院憲法審査会「『憲法のひろば』意見受付概況」(2026年10月31日までの累計)
数値で見る(単位: 件)
項目件
戦争放棄8,489
最高法規7,728
国民投票6,010
権利義務1,220
改正規定539
天皇434

衆議院の会派別所属議員数(9月28日現在)では、自由民主党・無所属の会が315人で、総議員465人の3分の2にあたる310人を上回る。ただ、発議には参議院でも総議員の3分の2以上の賛成が要る。審査会が今国会の残りの会期で、緊急事態条項や国民投票の運用といったこれまでの論点をどこまで詰めるかが、公布80年の後の議論の行方を左右する。