衆議院は9月18日、森英介議長が現地時間9月14日から15日までウクライナを親善訪問した結果概要を公表した。2022年にロシアの侵略が始まって以来、日本の国会の議長がウクライナを訪れるのは初めてとなる。日本・ウクライナ友好議員連盟の盛山正仁衆院議員が同行した。
森議長は現地時間15日、首都キーウのウクライナ最高会議を訪問した。最高会議はウクライナの一院制の議会で、日本でいえば国会にあたる。戦争などで殉職した議員・職員に献花したあと、ルスラン・ステファンチューク議長と会談し、本会議場で演説した。
演説で「蛮行」と非難
衆議院が公表した演説の全文によると、森議長は「ウクライナをウクライナでなくするが如きロシアの行いは、人類が幾多の悲劇を乗り越え、長い歳月を経て築き上げてきた国際社会の在り方や価値観を根底から覆す蛮行です」と述べた。そのうえで「力による一方的な現状変更の試みは絶対に許してはなりません」と訴えた。
森議長は欧州とインド太平洋の安全保障は密接に関係していると指摘し、北朝鮮がロシアとの軍事協力を急速に深めていること、東シナ海や南シナ海でも力や威圧による現状変更の試みがあることを挙げて、「ウクライナでの出来事は、日本にとって決して他人事ではないのです」と語った。
会談では、ステファンチューク議長が日本の人道分野などの支援を評価し、他分野での協力にも期待を示した。森議長は、ウクライナ国民が4年半にわたりロシアの攻撃に持ち堪えるだけでなく攻勢に転じている面もあるとして、尊敬と連帯の意思を表明した。会談後には共同記者発表にも臨んだ。
大統領・首相とも会談
同じ15日、森議長はゼレンスキー大統領と会談した。大統領は訪問を歓迎し、日本の支援に謝意を述べた。森議長は、ウクライナの主権と領土一体性を支持し、力による現状変更を許さないとする決議に示された国会の意思は変わらないと伝えた。
コレツキー首相との会談で、首相は「森議長の訪問は共に戦う仲間の存在を示すものである」と述べた。森議長はウクライナの科学技術力を評価し、戦いを続けながらドローンで世界有数の地位を占めるに至ったことに触れた。
このほか森議長は、ウクライナ・日本友好議員連盟のミハイリューク、ジェレズニャク両共同会長らと意見交換し、14日にキーウ工科大学、15日にキーウ国立大学を視察した。
30年続く議員連盟が下地に
演説によると、森議長が衆院議員に初当選したのは1990年で、その5年後の1995年3月、当時のクチマ大統領の来日を機に日本・ウクライナ友好議員連盟が発足した。森議長は設立当初から運営に携わり、2011年には会長に就いた。ゼレンスキー氏とは、大統領就任から間もない2019年10月、天皇陛下の即位の礼で来日した際に朝食会で会っている。
森議長は演説で、2022年にロシアの侵略が始まる2週間ほど前、各党の議員とともに「ウクライナを巡る憂慮すべき状況の改善を求める決議案」を衆院に提出したと説明した。与野党が団結して衆院の意思として決議を行ったとし、その後2回の総選挙を経ても「衆議院の意思は不変です」と述べた。
演説では、日本とウクライナがともにロシアの隣国であること、深刻な原子力災害を経験したこと、国内のエネルギー資源に乏しいことの3点を共通点として挙げた。東日本大震災の発生当日、一時帰国していたクリニチ駐日大使が日本へ戻り東京にとどまったこと、地震発生から6日後にウクライナから毛布約2000枚が届き、その後も放射線測定器1000個や防護マスク1000個が送られたことにも触れて謝意を示した。
首相訪問とは別の「議会外交」
首脳同士の往来と異なり、議長の訪問は立法府を代表する立場で行われる。森議長が会談やゼレンスキー大統領との面会で繰り返し持ち出したのが、選挙をまたいでも変わらない「衆議院の意思」としての決議だった点に、議会外交としての位置づけが表れている。
ロシアによる侵略は2022年2月に始まり、4年半を超えて続いている。森議長は演説の中で、エネルギー、科学技術、農業、文化・芸術など幅広い分野で互いの強みを生かして協力していく決意を示し、日本は復旧・復興の知恵や技術、実績を持っているとして、ウクライナが復興の段階に進んだときに役立てたいとの考えを述べた。
