環境省は10月30日、企業の森や里地里山、都市の緑地など、民間の取り組みによって生物多様性が守られている区域を国が認める「自然共生サイト」に、新たに122か所を認定したと発表した。2025年4月に施行された地域生物多様性増進法に基づく今年度2回目の認定で、122か所のうち90か所は新規、32か所は法施行前の旧制度で認定を受けていた区域の移行だった。これで自然共生サイトは合計700か所、面積は約12.7万ヘクタールになった。
認定したのは、法律で主務大臣と定められた環境大臣、農林水産大臣、国土交通大臣で、有識者の審査を経ている。122か所という数は、法に基づく初の認定だった2025年度第1回の201か所に次いで2番目に多い。
新規は90か所、32か所は旧制度から移行
内訳は、企業やNPOなどが作成する「増進活動実施計画」が116か所、市町村が取りまとめ役となり地域の団体と連携して行う「連携増進活動実施計画」が6か所。新規と移行の別で見ると、増進活動実施計画は新規85か所・移行31か所、連携増進活動実施計画は新規5か所・移行1か所だった。今回認定した122か所の面積は約5.9万ヘクタールで、このうち約5.1万ヘクタールを移行分が占め、新規分は約0.8万ヘクタールだった。
移行とは、2023年度に始まった法律に基づかない旧制度の自然共生サイトが、新しい法律の認定を受け直すことをいう。移行分は合計の700か所に新たに加わるわけではないため、今回の認定で合計が増えたのは新規の90か所分になる。環境省の資料によると、700か所の内訳は、法に基づく自然共生サイトが545か所(約11.4万ヘクタール)、旧制度のまま残る区域が155か所(約1.2万ヘクタール)。法に基づく545か所のうち、新規が372か所、旧制度からの移行が173か所となっている。
年度末時点の合計は、初認定のあった2023年度が184か所、2024年度が328か所、法が施行された2025年度が569か所だった。2026年度は年3回の認定のうち2回を終え、第1回の56か所と今回の122か所を経て700か所に達した。
自然共生サイトの合計数の推移(か所)
数値で見る(単位: か所)
| 項目 | か所 |
|---|---|
| 2023年度 | 184 |
| 2024年度 | 328 |
| 2025年度 | 569 |
| 2026年度 | 700 |
里山林と人工林が多く、申請の約4割は企業
活動の類型は、すでに生物多様性が豊かな場所を保つ「維持タイプ」が112か所(増進活動106か所、連携増進活動6か所)で、全体の9割を超えた。管理が放棄された土地などで生物多様性を取り戻す「回復タイプ」が7か所、開発跡地などで新たにつくる「創出タイプ」が3か所だった。
生態系の種類別(1か所で複数に当たる場合がある)では、里山林が57か所で最も多く、人工林51か所、二次草原・草地32か所、都市の緑地などの創出緑地31か所、水田と河川・湖沼がそれぞれ23か所と続いた。環境省は、里山林や人工林、二次草原、都市の緑地といった身近な自然環境が多く認定されたとしている。海の区域は少なく、藻場・岩礁3か所、干潟・マングローブ林2か所、サンゴと砂浜が1か所ずつだった。
申請者は企業が約4割を占め、NPOなどの団体、地方公共団体からの申請も多かった。旧制度を含む累計では、申請者の約半数が企業となっている。
発電所の緑地、酒造会社の森、学校の裏山
認定一覧には、事業所や社有林を申請した企業が並ぶ。株式会社JERAは横浜火力発電所の「とんぼ池」、川崎火力発電所の緑地、愛知県碧南市の「JERA forest HEKINAN」の3か所で認定を受けた。サントリーグループの名を冠した区域も、京都府と大阪府の「サントリー天然水の森」3か所と山梨県甲斐市の登美の丘ワイナリーで計4か所ある。トヨタ自動車の東富士研究所(静岡県裾野市)、本田技研工業の北海道鷹栖町の森、霧島酒造の宮崎県日南市の森も新規に認定された。東京建物の大手町タワー(東京都千代田区)は旧制度から移行した。
回復タイプには、北洋銀行の北海道新十津川町の森、川島織物セルコンの京都市の「川島染織の里」、沖縄県久米島町で久米島漁業協同組合などが取り組む藻場の再生などが入った。創出タイプは、ENEOSの仙台製油所の緑地、たねやが滋賀県大津市で設けた「LAGO 大津」、住友電気工業の大阪製作所の「自然共生広場」の3か所。
企業以外では、京都市の城南宮や真宗本廟(東本願寺)の渉成園、鹿児島市の照國神社の樹林といった社寺の緑、鹿児島県奄美市の崎原小中学校の学校林や同県姶良市の重富小学校の「裏山」、埼玉県越谷市の小学校のビオトープも認定を受けた。連携増進活動実施計画では、北九州市の曽根干潟や兵庫県豊岡市の「コウノトリ育む中筋の里地里山」などが入っている。
自然共生サイトとは 2025年4月に法制化
自然共生サイトは、環境省が2023年度に始めた制度で、同年10月に初めての認定が行われた。国立公園のような法律で守る保護地域の外にあって、民間の管理によって生物多様性が保たれている場所を国が認めるものである。2024年4月に地域生物多様性増進法が成立し、2025年4月に施行されたことで、法律に基づく制度になった。
法制化で変わったのは対象の広がりだ。旧制度は、すでに生物多様性が豊かな場所を認める仕組みだった。新しい法律では、その維持に加えて、管理放棄地などでの回復、開発跡地などでの創出も認定の対象とした。回復と創出は、計画を実行した結果、将来その場所が保全の基準を満たすようになることを想定している。法の施行に伴い、認定の事務は独立行政法人環境再生保全機構(ERCA)が担っている。
30by30目標の面積へ 国際データベースに登録
自然共生サイトの背景には、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として保全する国際目標「30by30」がある。2022年12月の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」に盛り込まれ、日本は2023年3月に改定した生物多様性国家戦略に位置づけた。世界目標の進み具合は、今年10月にアルメニアで開かれた第17回締約国会議で初めて点検された(生物多様性条約COP17がアルメニアで開幕 2030年の世界目標、初の進捗点検へ)。
30by30は、国立公園などの保護地域に加え、保護地域以外で生物多様性の保全に役立つ区域(OECM)も含めて達成するとされている。自然共生サイトは、このOECMにあたる区域を国内で増やす仕組みだ。環境省は今回維持タイプで認定した区域について、保護地域と重なる部分を除いてOECMとして国際データベースに登録する予定としている。回復・創出タイプの区域は、活動の結果として生物多様性が豊かになった時点で登録する。
環境省は8月3日、2025年度に認定した自然共生サイト約2.31万ヘクタールのうち、保護地域との重複を除いた約1万ヘクタールを国際データベースに登録したと発表しており、これで日本のOECMの登録面積は約6.46万ヘクタールになった。今回認定された区域が登録されれば、この面積はさらに増える。今年度の認定はあと1回残っている。
