政府は10月16日の閣議で、データセンターの建築上の扱いを尋ねた質問主意書への答弁書を決定した。データセンターが建築基準法と都市計画法の用途地域の規定でどの建築物に当たるかは、建物の実態に応じて建築主事や指定確認検査機関が個別に判断するとした。国が「事務所」とみなす解釈を決めたり、自治体に示したりしたことは無いと答えた。学校に隣接する建設については禁止を示さず、騒音規制法などの関係法令を守り「発する熱、音等」に十分配慮して行うことが重要だとした。質問したのは志士の会の緒方林太郎衆院議員で、第222回臨時国会で最初に出された質問主意書(質問第一号)だった。

用途の判断は確認機関に委ねる

緒方氏は10月5日に質問主意書を出し、3点を尋ねた。データセンターは用途地域の規定でどの建築物に当たるか、規定上の「事務所」の定義は何か、学校に隣接して建てることをどう考えるか、である。

用途地域は、都市計画法に基づいて市街地を住宅地・商業地・工業地などに分ける仕組みで、建築基準法がそれぞれの地域に建てられる建物の用途を定めている。データセンターという用途はこの規定に出てこない。

答弁書は、用途地域内の建物は建築基準法で用途に応じて建築が制限されているとしたうえで、個々の建物がどの用途に当たるかは「個々の建築物の実態に応じて」、建築主事等か指定確認検査機関が「適切に判断されるべきもの」と答えた。指定確認検査機関は、自治体の建築主事に代わって建築確認を行う民間の機関である。

そのうえで、6月15日の参議院決算委員会で金子恭之国土交通大臣(当時)が述べた答弁を引いた。データセンターは建築確認で「その利用実態などを勘案し事務所や倉庫と判断されている」という内容である。答弁書は、新たな判断基準は示さず、国会での説明をなぞる形をとった。

質問 答弁書の答え
データセンターは用途地域の規定でどの建築物か 建物の実態に応じて建築主事等・指定確認検査機関が判断。建築確認では事務所や倉庫とされている(6月の国交相答弁)
規定上の「事務所」の定義 法令に定義は無い。一般に人や法人の事業活動の中心となる場所
国は「事務所」とする解釈を決め、自治体に示したか 行っていない
学校に隣接する建設 騒音規制法などを守り、熱・音に十分配慮して行うことが重要
質問主意書の項目と答弁書の答え出典: 衆議院「データセンターに関する質問主意書」「同答弁書」

「事務所」の定義は法令に無い

緒方氏は、自治体の用途地域の事務でデータセンターを「事務所」などに位置付けることが多いとして、その「事務所」の定義を問うた。質問主意書の末尾には、近年「具体的に意味するところが必ずしも明らかでない」という答弁が広く使われているとして、「常識の範囲で意味を確定して答弁ありたい」と書き添えていた。

答弁書は、建築基準法と都市計画法の用途地域の規定で「事務所」を定義した条文は無いと認めた。そのうえで、一般には「人又は法人等の事業活動の中心である一定の場所」をいうと説明した。サーバーや冷却設備が建物の大半を占め、人がほとんど常駐しないデータセンターが、この説明に当てはまるかどうかには触れていない。

国の解釈についての問いには、データセンターを「事務所」と位置付ける解釈を確定したり、自治体に示したりすることは「行っていない」と短く答えた。判断の物差しは国から示されず、建築確認を受け付けた確認機関がそれぞれ決める形が続く。

学校の隣は「十分に配慮」

3点目は、学校に隣接してデータセンターを建てることは、発する熱や音の点から望ましくないのではないかという問いだった。

答弁書は、6月12日の衆議院環境委員会で政府参考人が述べた「データセンターの立地に際しましては、地域との共生を図っていくことが大変重要であ」るという答弁を引いた。そのうえで、学校に隣接する場合を含め、建設は騒音規制法などの関係法令を遵守したうえで「発する熱、音等」に十分配慮して行われることが重要だとした。学校の近くでの建設を制限する考えや、距離の目安は示さなかった。

データセンターは国内で建設が続いている。国内の拠点数はデータセンター、日本は242か所 米国は4165か所で2位以下15か国の合計4061か所を上回る 国内クラウド市場は4兆4930億円で伝えた。国は東京圏・大阪圏の外への分散も後押ししており、補助事業の動きはデータセンターの地方分散、総務省が補助の窓口団体を決定 5年で総額209億円、整備費の半額を助成にまとめた。

6月の国会で出ていた論点

答弁書が引いた二つの国会答弁は、いずれも6月の第221回国会で住宅地や学校の近くでの建設を問われた場面で出たものだ。

6月15日の参議院決算委員会では、山添拓議員が、東京都江東区や千葉県白井市、印西市で住宅地の近くに大規模なデータセンターの計画が進み、印西市では住民が建築確認の取り消しを求めて提訴したと指摘した。建築基準法に定義が無く、各地で倉庫や事務所として扱われていると問うた。金子国交相は、事務所や倉庫と判断されているため「大規模なデータセンターは住居専用地域において建築が制限されています」と答えた。そのうえで、自治体が地区計画を定めれば立地を制限したり条件を付けたりできるとし、業界団体や自治体のガイドラインに沿った取り組みも重要だと述べた。同じ委員会で石原宏高環境大臣は、データセンターは環境影響評価法(アセス法)の対象事業ではなく、現時点で追加する予定も無いと答えた。

6月12日の衆議院環境委員会では、緒方氏自身が排熱を取り上げた。環境省の伯野春彦環境保健部長は、現時点で排熱を規制する仕組みは無いと答えた。保育園や幼稚園、学校の隣接地について問われた白石隆夫総合環境政策統括官は、立地は建築基準法や都市計画法の領域で所管外だとしたうえで、自治体が地区計画で立地を抑えることは現行制度でも可能だと説明した。石原環境相は「関係省庁ともこの点について少し検討させていただければ」と述べていた。

答弁書が示さなかったこと

4か月後の答弁書は、6月の国会答弁を引用する形でまとめられた。国としてデータセンターの用途の扱いを統一する考えや、学校の近くでの建設に関する新たな基準は盛り込まれなかった。環境相が6月に述べた関係省庁での検討の結果にも触れていない。

答弁書から読み取れる現在の仕組みは次の通りだ。データセンターは法令上の独立した用途として扱われず、建築確認の窓口が建物ごとに事務所か倉庫かを判断する。その判断の結果、住居専用地域では大規模なものの建築が制限される。それ以外の地域で立地を絞るには、自治体が地区計画を定める必要がある。排熱を直接規制する法令は無く、騒音は騒音規制法などの既存の法令で扱う。

緒方氏は第222回国会で、ほかにも財政や為替介入などをめぐる質問主意書を相次いで出している。同じ日に決定された答弁書の一つは「過度な緊縮志向」は「バブル崩壊以降」と政府答弁書 債務残高のGDP比は193.4%と示すで伝えた。