首相や国務大臣、副大臣など特別職の国家公務員の給与を改める「特別職の職員の給与に関する法律」(特別職給与法)などの改正案が10月30日、衆議院本会議で可決され、同じ日に参議院へ送られた。内閣が10月9日に提出した閣法第3号で、首相の俸給月額は209万5000円から215万8000円に、国務大臣は152万8000円から157万4000円に上がる。令和8年4月1日にさかのぼって適用する。ただし、国会議員を兼ねる首相や閣僚には、2025年の法改正で行政庁からの給与を払わないことにしており、この扱いは改正後も続く。引き上げた俸給を実際に受け取るのは、国会議員でない閣僚や大使、秘書官などに限られる。

首相は月6万3000円、国務大臣は4万6000円上がる

特別職給与法は、首相や大臣の俸給月額を法律の別表第一に金額で書き込んでいる。改正案の第1条はこの表の金額をすべて書き換える。内閣人事局の法案概要によると、秘書官以外の特別職は、本省の部長・審議官級以上が適用を受ける指定職の職員に準じて「3.0%程度(25,000~63,000円)引上げ」となる。

官職(主なもの) 現行 改正案 引き上げ額
内閣総理大臣 209万5000円 215万8000円 6万3000円
国務大臣、会計検査院長、人事院総裁 152万8000円 157万4000円 4万6000円
内閣官房副長官、副大臣、内閣法制局長官、宮内庁長官など 146万6000円 151万円 4万4000円
大臣政務官、内閣危機管理監、侍従長など 125万円 128万8000円 3万8000円
常勤の首相補佐官、国家公安委員会委員など 122万4000円 126万1000円 3万7000円
特別職給与法の別表第一の俸給月額(主な官職)の現行と改正案出典: 衆議院「特別職の職員の給与に関する法律及び二千二十七年国際園芸博覧会政府委員の設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案」、e-Gov法令検索「特別職の職員の給与に関する法律」

別表第一にはこのほか、個人情報保護委員会や原子力委員会の委員などが並び、107万8000円の欄は111万円に、95万2000円の欄は98万1000円になる。大使や公使の俸給を定める別表第二と、特別な事情があるときの大使・公使の額を定める第3条第3項も改め、大使の152万8000円は157万4000円に、公使の79万4000円は81万9000円になる。

首相や閣僚の秘書官には、別表第三の号俸表が当たる。概要は「一般の職員に準じて、俸給月額を2.8~4.1%程度(10,600~17,600円)引上げ」とする。最も高い号俸は60万9200円から62万6800円に、最も低い号俸は28万7700円から29万8300円になる。

国会議員の首相・閣僚は歳費129万4000円だけ

首相や閣僚の多くは国会議員を兼ねる。この場合の給与は、特別職給与法と「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」(歳費法)の調整規定で決まる。歳費法第7条は、議員が国の公務員を兼ねるときは議員の歳費を受け、公務員の給料は受けないと定めたうえで、ただし書で「公務員の給料額が歳費の額より多いときは、その差額を行政庁から受ける」とする。特別職給与法第14条第2項にも、差額を支給する同じ趣旨の規定がある。

2025年12月24日に公布された改正法は、特別職給与法の附則に第4項を加えた。国会議員が首相、国務大臣、内閣官房副長官、首相補佐官、副大臣、大臣政務官、大臣補佐官を兼ねる場合、当分の間、この2つの差額規定を適用しないという内容だ。国会議員の首相や閣僚は、議員の歳費だけを受け取り、行政庁からの上乗せは無くなった。

今回の法案概要も「引き続き、閣僚等が国会議員の職を兼ねる場合に行政庁から支給される給与は、支給しないこととする」と明記し、この扱いを「令和7年改正において措置」したものとしている。

歳費法第1条が定める議員の歳費月額は129万4000円だ。改正後の俸給月額との差は、首相で86万4000円、国務大臣で28万円、副大臣で21万6000円になる。この差額が払われない。大臣政務官は改正後も128万8000円で歳費を下回るため、差額はもともと生じない。

特別職給与法の附則第3項は、首相や閣僚が支給された給与の一部を国庫に返納する場合、公職選挙法第199条の2が禁じる寄附に当たらないとする規定も置いている。閣僚らが給与の一部を返す場合の扱いを、法律で定めたものだ。

ボーナスは年3.55か月分、秘書官に転居手当

改正案は特別給(ボーナス)も改める。概要によると、特別職の特別給は指定職の職員に準じ、年間3.50か月分から3.55か月分に上がる。令和8年12月期から改定する。

特別職給与法第7条の2は、首相らの期末手当を一般職の例によるとしつつ、支給の割合を読み替えている。改正案はこの割合を、6月期は100分の175のまま、12月期を100分の180とする。令和9年4月1日に施行する第2条で、6月期と12月期をともに100分の177.5にそろえる。年間の合計は3.55か月分で変わらず、概要は「特別給の6月期と12月期の支給月数の平準化」と説明している。

第2条はこのほか、秘書官に転居手当を支給できるようにする。一般職で、転居を伴う転勤をした職員を広く対象とする転居手当を新設するのに合わせた。一般職から秘書官になった人の俸給月額の上限を定める附則第2項は、93万5000円から96万3000円に上がる。

園芸博の政府委員も対象、衆院は起立多数で可決

改正案の第3条は「二千二十七年国際園芸博覧会政府委員の設置に関する臨時措置法」を改める。この法律は、令和9年に開かれる国際園芸博覧会について、国際博覧会条約に基づいて日本政府を代表する政府委員1人を外務省に置くと定めている。政府委員の俸給月額は122万4000円から126万1000円に上がる。

改正案は公布の日に施行し、第1条と第3条による改正後の規定は令和8年4月1日にさかのぼって適用する。4月以降に改正前の規定で支給した給与は、改正後の規定による給与の「内払とみなす」とし、差額を払う。

参議院の議案情報によると、改正案は衆議院の内閣委員会に10月22日に付託され、10月28日に可決された。10月30日の衆議院本会議では起立による採決で、多数で可決された。参議院は同じ日に受け取った。衆議院の議案一覧では、審議状況は「参議院で審議中」となっている。

一般職の給与改定に連動、国会で毎年改める

改正案の提出理由は「一般職の国家公務員の給与改定に伴い、特別職の職員の給与の額の改定を行う等の必要がある」としている。政府は一般職の給与を改める給与法改正案(閣法第2号)を同じ10月9日に国会に出した(公務員の給与改定を10月9日に閣議決定 国家公務員は人事院勧告どおり官民較差1万5056円・ボーナス年4.70月へ 総務副大臣が同日、地方へ通知)。

内閣人事局の一般職の法案概要によると、一般の職員は民間給与との較差1万5056円(3.51%)を解消するよう俸給表を引き上げる。指定職の職員は、行政職俸給表(一)10級の平均改定率と同程度の3.0%引き上げ、特別給は年間3.50か月分から3.55か月分にする。特別職の改正案は、この指定職の改定率と特別給の月数にそろえた形になっている。

首相や閣僚の俸給は政令ではなく法律の別表に金額で書かれているため、人事院勧告を受けて一般職の給与を改めるたびに、国会が特別職給与法も改正する。国会議員の公設秘書の給料を改める秘書給与法の改正案も、同じ10月30日に衆議院を通過した(議員秘書の給料、最低の号給で月30万円に 改正案が衆院を通過、4月にさかのぼり適用)。参議院で可決されれば、いずれも成立する。