防衛省が公表した令和8年版防衛白書によると、2025年度の日本の国防費は購買力平価で換算して892億ドルで、国内総生産(GDP)に対する比率は1.28%だった。白書が比べた主要9か国のうち、比率が日本より低いのは中国の1.27%だけで、下から2番目となる。国民一人当たりの国防費は725ドルで、円に直すと約7万円だった。

購買力平価でそろえた9か国の比較

白書の図表「主要国の国防費比較(2025年度)」は、日本の防衛関係費と各国が公表する国防費を、経済協力開発機構(OECD)が公表する2025年の購買力平価でドルに換算して並べたものだ。購買力平価とは、各国でどれだけの財やサービスを買えるかを物価水準を考えて評価した換算率を指す。白書が使ったのは2026年4月時点のOECD発表値で、1ドル=95.000342円にあたる。市場の為替相場で換算する方法もあるが、その国の物価に照らした価値を正確に映さないため、白書はこの方式を採っている。

額が最も多いのは米国の8684億ドルで、中国5245億ドル、ロシア4507億ドル、ドイツ1225億ドル、英国893億ドル、日本とフランスが892億ドル、韓国755億ドル、オーストラリア421億ドルと続く。

対GDP比はロシアの6.32%が突出して高く、米国2.82%、韓国2.30%、オーストラリアとフランスが2.01%、英国1.97%、ドイツ1.93%の順。日本の1.28%と中国の1.27%が下位2つになる。比率は各国が発表した自国通貨建ての国防費を、国際通貨基金(IMF)が発表するGDPの値で割って試算している。

1998年からの推移も示された。購買力平価でドル換算した額の1998年から2026年までの伸び率は、中国とロシアがともに17.2倍、オーストラリア5.7倍、韓国4.3倍、米国3.6倍、日本3.1倍。各年ごとの購買力平価で換算しているため、円建てで見た伸び率とは一致しない。

一人当たりは約7万円、米国の3分の1以下

国民一人当たりの国防費は、ロシアが3130ドル(約30万円)で最も多く、米国2501ドル(約24万円)、オーストラリア1559ドル(約15万円)、韓国1460ドル(約14万円)、ドイツ1456ドル(約14万円)、フランス1337ドル(約13万円)、英国1283ドル(約12万円)と続く。日本は725ドル(約7万円)で8番目、中国は370ドル(約4万円)で最も少ない。人口は国連人口基金(UNFPA)の「世界人口白書2025」の数値を使って試算した。円に直した額は、いずれも購買力平価の1ドル=95円で換算した値である。

金額の比較とは別に、白書は人員の確保を「至上命題」と位置づけている。自衛官の充足率88.1% 定員24万7154人に対し現員21万7701人 最前線を担う「士」は57.8%にとどまる 令和8年版防衛白書で示したとおり、予算を積んでも装備を動かす人がそろわない状況が続いている。

「正確な比較は困難」と白書 中国は公表額の外にも支出

白書は、この比較表に複数の留保を付けている。まず、国防費には国際的に統一された定義がなく、公表された国防費の内訳が必ずしも明らかでないうえ、各国で予算制度も異なるため「国防支出の多寡を正確に比較することは困難である」と明記した。

中国については、公表している額は実際に軍事目的へ支出している額の一部に過ぎないとみられ、米国防省の分析によれば実際の国防支出は公表国防予算よりも著しく多いとされる、と注記した。つまり表の1.27%をそのまま日本の1.28%と並べて読むことはできない。

北大西洋条約機構(NATO)の加盟国についても食い違いがある。NATOが公表する国防費には退役軍人への年金などが含まれるため、各国発表の国防費とは範囲が違う。NATOが2026年3月に発表した値による対GDP比は、米国3.19%、ドイツ2.39%、英国2.31%、フランス2.05%で、各国発表を基にした試算よりいずれも高い。

日本の比率も、集計する主体によって変わる。白書が引いたストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の2026年4月公表のファクトシートでは、2025年の世界のGDPに占める世界の国防費の割合は2.5%、日本のGDPに占める防衛関係費の割合は1.4%とされている。白書自身の試算の1.28%とは差がある。

国内の比率は2026年度に1.273%へ低下

白書の資料によると、2026年度の防衛関係費は当初予算の歳出額で8兆8093億円。前年度より3345億円・3.9%多い。SACO関係経費と、米軍再編関係経費のうち地元負担軽減分を加えると9兆353億円になる。一般会計歳出に占める割合は7.20%、政策的経費である一般歳出に占める割合は12.56%だった。

一方、対GDP比は1.273%で、2025年度の1.347%から下がった。政府の当初見通しの名目GDPが629兆3000億円から691兆9000億円へ62兆6000億円増えたためだ。防衛費そのものは増えていても、割る側のGDPがそれ以上に伸びれば比率は下がる。

政府は国家安全保障戦略で、2027年度に防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組をあわせた予算水準を、戦略を作った2022年度のGDPの2%に達するようにするとしていた。白書は、安全保障環境が急速に厳しさを増したとして2025年度中に当初予算と補正予算を合わせて前倒しで措置したと説明し、2025年度の防衛力整備計画対象経費と「補完する取組」にかかる経費の合計は11兆円程度、2022年度のGDPと比べると約2.0%になったとしている。2022年度の防衛関係費は5兆1788億円、対GDP比は0.917%で、4年でおよそ1.7倍に増えた計算になる。

ただし当初予算の歳出額は、その年度に実際に支払う分を指す。装備品は契約から納入・支払いまで年度をまたぐため、支払いは先送りされて積み上がる。防衛費、翌年度以降に払う分が16兆8274億円 今年度予算8兆8093億円の1.9倍 今年度の契約で今年度使う経費は1兆8798億円で見たとおり、2026年度の後年度負担額は歳出額の1.9倍にのぼる。GDP比として表に出る数字は、その年に払う分だけを映したものである。