こども家庭庁は10月23日、旧優生保護法のもとで不妊手術などを受けた人やその家族への補償金と一時金について、支給の可否を審査する「補償金・優生手術等一時金認定審査部会」の第20回(10月22日開催)の結果を公表した。審査した49件のうち23件を認定し、18件を否認、8件を保留とした。手術を受けた本人への補償金は8件を認定し、5件を否認した。

本人の補償金は8件認定、遺族の請求は否認が上回る

公表資料によると、審査の対象は補償金(本人、特定配偶者、本人の遺族、特定配偶者の遺族)と優生手術等一時金の5種類で、種類ごとの件数を合計すると49件になる。

種類 認定 否認 保留
補償金(本人) 8 5 2
補償金(特定配偶者) 3 3 1
補償金(本人の遺族) 2 5 2
補償金(特定配偶者の遺族) 1 0 0
優生手術等一時金 9 5 3
第20回認定審査部会の審査結果(件数)

出典: こども家庭庁「第20回補償金・優生手術等一時金認定審査部会の審査結果について」

本人の補償金を認定した8件を、手術を受けた本人の性別でみると男性2人、女性6人だった。年齢は60歳代が1人、70歳代が4人、80歳代が2人、90歳代が1人で、40〜50歳代と100歳以上はいなかった。都道府県別では、北海道、岩手、宮城、秋田、兵庫、山口、福岡、熊本の8道県が1件ずつだった。

特定配偶者の補償金3件は山口県が2件、熊本県が1件で、本人の遺族の補償金2件は山口県と福岡県が1件ずつだった。優生手術等一時金の認定9件は、本人の補償金と同じ8道県に鹿児島県を加えた9道県が1件ずつである。

本人の遺族からの請求は、認定2件に対して否認が5件と、否認が認定を上回った。資料は否認の理由を示していない。

直近5回で249件を審査、認定は126件

部会はおおむね月1回開かれている。こども家庭庁が公表した第16回(6月18日)以降の5回分の結果を並べると、審査件数は35〜60件の間で推移し、5回の合計は249件だった。このうち認定は126件、否認は88件、保留は35件である。

回(開催日) 審査件数 認定 否認 保留
第16回(6月18日) 59 41 12 6
第17回(7月16日) 46 23 16 7
第18回(8月20日) 35 13 13 9
第19回(9月15日) 60 26 29 5
第20回(10月22日) 49 23 18 8
補償金・優生手術等一時金認定審査部会の審査結果(第16〜20回、件数は5種類の合計)

出典: こども家庭庁「補償金・優生手術等一時金認定審査部会の審査結果について」(各回)

第16回は59件のうち41件を認定したが、第19回は60件のうち認定26件に対し否認が29件で、否認が認定を上回った。第20回は認定23件、否認18件だった。

本人の補償金に限ってみると、認定は第16回が15件、第17回と第18回が4件ずつ、第19回と第20回が8件ずつだった。否認は第16回から第18回まで各4件、第19回が11件、第20回が5件である。

記録の残らない請求を審査する部会

認定審査部会は、こども家庭庁に置かれた「旧優生保護法補償金等認定審査会」の部会である。審査会の運営規程は、会長が内閣総理大臣から審査を求められたときは部会に付議するとし、部会の議決は会長の同意を得て審査会の議決とすることができると定めている。

部会が2025年3月に定めた審査方針は、請求者の手術の記録が残っていない場合が多いことや、旧優生保護法に基づかない形で生殖を不能にする手術を受けた人も補償の対象になることを踏まえ、「請求者等の陳述内容を十分に汲み取り」、収集した資料も含めて総合的に判断するとしている。判断の基準は、陳述の内容が当時の社会状況や資料から考えて「明らかに不合理ではなく、一応確からしいこと」である。

審査を経ずに認定できる請求もある。こども家庭庁の集計では、制度の施行から9月末までの認定2061件のうち、審査会の審査が不要だったものが1358件、審査会の審査結果に基づいて認定したものが703件だった。

部会の審査時間は、第18回まで3時間だったが、第19回から4時間に延ばした。第20回も午後3時から7時までの4時間だった。認定の遅れをめぐる被害者団体の要請と国の対応は旧優生保護法の補償、受付から6か月超の未決定が103件 被害者団体が認定審査会の増設を要請 国は審査時間を3時間から4時間に延長で伝えている。

9月末の累計、請求2847件・認定2061件

こども家庭庁が10月20日に掲載した9月末時点の集計によると、制度の施行(2025年1月17日)から9月末までの請求は2847件、相談は8820件だった。請求の内訳は、本人が1164件、特定配偶者が320件、本人の遺族が528件、特定配偶者の遺族が239件、優生手術等一時金が372件、人工妊娠中絶一時金が224件である。

9月の1か月間の請求は42件、相談は161件だった。認定は33件で、このうち審査会の審査結果に基づくものが29件、審査が不要だったものが4件である。月ごとの認定は6月が103件、7月が35件、8月が28件だった。

本人の補償金の認定は累計933件で、手術を受けた本人の性別は男性239人、女性694人だった。このほかに、補償金等支給法より前の一時金支給法による一時金の認定が1198件ある。

月ごとの請求件数の推移は、旧優生保護法の補償金、請求2804件・認定2028件 推定2万5千件に対し1割台 月ごとの請求は500件から35件へ減るで詳しく伝えている。

補償額は本人1500万円、請求は施行から5年まで

補償金と一時金は、2024年に成立した旧優生保護法補償金等支給法(令和6年法律第70号)に基づく。同法は、最高裁大法廷が2024年7月3日の判決で国の責任を認めた原告と同様の苦痛を受けている人の損害を、迅速に賠償するための補償金を定めている。あわせて、旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた人の苦痛を慰謝する優生手術等一時金と、同法に基づく人工妊娠中絶等を受けた人の苦痛を慰謝する人工妊娠中絶一時金も定めている。

法の前文で国会と政府は、特定の疾病や障害を理由に生殖を不能にする手術を強制してきたことについて「悔悟と反省の念を込めて深刻にその責任を認めるとともに、心から深く謝罪する」とした。人工妊娠中絶を強いられたことについても「心から深く謝罪する」と述べている。

支給額は、手術を受けた本人への補償金が1500万円、特定配偶者への補償金が500万円である。このほか優生手術等一時金が320万円、人工妊娠中絶一時金が200万円と定められている。

請求の期限について同法は、施行日から起算して5年を経過したときは請求できないと定めている。施行日は2025年1月17日で、請求の受け付けはこの日から始まった。こども家庭庁は特設ページで、都道府県の窓口を通じて弁護士が無料で請求手続きを支援する事業を案内している。